夜は明けて、顔のない女がやってくる

2022年2月20日日曜日

★グリフィンと欠落の姉妹編 マジカル後継者世帯

t f B! P L
こんにちはー。

本日は、また【グリフィンと欠落の姉妹編】ですー。

イナを追ってたどり着いた庭で、自分と瓜ふたつの「謎の敵」と闘うグリフィン。グリフィンは「敵」の刃を受けますが、獣のように起き上がって反撃に転じます。そして……

それでは、本日もまいりましょう!



グリフィン「還れ!

グリフィンはカゲのような男を見定めて、凛々しく叫びました。

荒れ地に響く、黒い鐘のような響き。

彼の声に乗って、彼自身の巨大な魔力……今夜最後の魔力が広がってゆきました。


謎の男「…………!!やめろ!目醒めたおれを握りつぶせば、おまえ自身が自壊するぞ!」

カゲの男は、怯えの色をあらわにして喚きました。

【それがどうした】

グリフィンの瞳は揺るぎませんでした。


彼が術を編纂していくその手順・構成の独創性・必要な魔力のエレメントを並べ替えて「ストーリー」にしていく手際は、驚異的でした。

彼は【魔力ある言葉】(スペル)を口にして、術の構造をいっそう強固なものにしようとしました。気迫の駄目押し。彼の実力を持ってすれば、スペル無しでも術を発生させられたはずなのに。


グリフィン「夜明けは黄昏に/黄昏は夜明けに/環状の世のうちにこそ綴じられる

グリフィンの魔力の回転が速すぎて、言葉が【術の成立する速度】に追いつかない。彼は急遽、スペルの変更を迫られました。


グリフィン「二行省略。焼き尽くすものと濡らすもの/グリフィン・トワイライトが乞い願う/完全の門にかんぬきを/光と闇は岸辺で分かたれ/しばしの時を眠りたまえ!


グリフィンが力ある言葉を口にしている間じゅう、カゲの男はやめろ、やめろと悲鳴じみた声を洩らしていました。しかし、いよいよ嵐のように風が吹き荒れます。男はその風にかつぎ上げられるようにして、楚々とした扉に吸い込まれ始めました。


謎の男「黄昏の男(トワイライト)!」

血の混じったしわぶきのように、カゲは最後の怨嗟を口にしました。


謎の男「おまえが生きている限り、おれもまた消えない!おれは成長し、いつかおまえと入れ替わるぞ!おまえは災いの源、最後に勝つのは、おれだ!

謎の男「…………!!…………!…………。…………」

ふつり。

世界が消えたような無音がやってきて、


扉は閉ざされます。

その扉も、乙女のほほえみのような穏やかさを見せたあと……


みずからの存在を消し去りました。


グリフィン「…………」


…………。


イナ「…………!」


イナ「グリフィン!!


グリフィン「……平気だ。逆流がきつかっただけだ」

イナ「血が出てる。動いちゃダメだよ」

グリフィン「まだだ」

グリフィンは野生の獣のような横顔をしていて、日が昇りつつある中空を透かし見ました。


フードの女「…………。くっ!」

顔の見えない女……すべてを見ていた女は身を翻し、どこかへ飛び去ろうとします。

しかし、


グリフィンは無造作に魔力を放出して、その波動でもって、女を地面に叩き落しました。うるさい夏の虫をはたき落とすような感じでした。


余談として付け加えるならば、彼の今回の魔法は【扉】を閉ざした際とは異なり、洗練されていなかった。キズつき疲弊した身体を引きずって、彼はもう細かいことはどうでもよかった。丁寧な魔法を編纂する気分ではなかったのです。

フードの女「……うっ!」

地面に打ちつけられ、悲鳴を上げた女を見て、イナのほうが痛そうな顔をしました。グリフィンは構わず、女に向けて手をひと振りします。

グリフィン「顔を見せろ。誰だ」

魔力を帯びた風が吹き、女のマントを引き剥がします。

フードが脱げた女「…………!」


グリフィン「…………」

その女の顔立ちには、確かに見覚えがありました。

一見するとわからないが、間違いなく、とてもよく知っている人物でした。


グリフィン「…………。ハンナ……?」

グリフィンは訝しげな声で、その名前を呼びました。

女は憎しみのこもった目で、彼を見返しました……。


つづきます!


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