本日は、また【グリフィンと欠落の姉妹編】ですー。
イナを追ってたどり着いた庭で、自分と瓜ふたつの「謎の敵」と闘うグリフィン。グリフィンは「敵」の刃を受けますが、獣のように起き上がって反撃に転じます。そして……
それでは、本日もまいりましょう!
*
グリフィン「還れ!」
グリフィンはカゲのような男を見定めて、凛々しく叫びました。
荒れ地に響く、黒い鐘のような響き。
彼の声に乗って、彼自身の巨大な魔力……今夜最後の魔力が広がってゆきました。
謎の男「…………!!やめろ!目醒めたおれを握りつぶせば、おまえ自身が自壊するぞ!」
カゲの男は、怯えの色をあらわにして喚きました。
【それがどうした】
グリフィンの瞳は揺るぎませんでした。
彼が術を編纂していくその手順・構成の独創性・必要な魔力のエレメントを並べ替えて「ストーリー」にしていく手際は、驚異的でした。
彼は【魔力ある言葉】(スペル)を口にして、術の構造をいっそう強固なものにしようとしました。気迫の駄目押し。彼の実力を持ってすれば、スペル無しでも術を発生させられたはずなのに。
グリフィン「夜明けは黄昏に/黄昏は夜明けに/環状の世のうちにこそ綴じられる」
グリフィンの魔力の回転が速すぎて、言葉が【術の成立する速度】に追いつかない。彼は急遽、スペルの変更を迫られました。
グリフィン「二行省略。焼き尽くすものと濡らすもの/グリフィン・トワイライトが乞い願う/完全の門にかんぬきを/光と闇は岸辺で分かたれ/しばしの時を眠りたまえ!」
グリフィンが力ある言葉を口にしている間じゅう、カゲの男はやめろ、やめろと悲鳴じみた声を洩らしていました。しかし、いよいよ嵐のように風が吹き荒れます。男はその風にかつぎ上げられるようにして、楚々とした扉に吸い込まれ始めました。
謎の男「黄昏の男(トワイライト)!」
血の混じったしわぶきのように、カゲは最後の怨嗟を口にしました。
謎の男「おまえが生きている限り、おれもまた消えない!おれは成長し、いつかおまえと入れ替わるぞ!おまえは災いの源、最後に勝つのは、おれだ!」
謎の男「…………!!…………!…………。…………」
ふつり。
世界が消えたような無音がやってきて、
扉は閉ざされます。
その扉も、乙女のほほえみのような穏やかさを見せたあと……
みずからの存在を消し去りました。
グリフィン「…………」
…………。
イナ「…………!」
イナ「グリフィン!!」
グリフィン「……平気だ。逆流がきつかっただけだ」
イナ「血が出てる。動いちゃダメだよ」
グリフィン「まだだ」
グリフィンは野生の獣のような横顔をしていて、日が昇りつつある中空を透かし見ました。
フードの女「…………。くっ!」
顔の見えない女……すべてを見ていた女は身を翻し、どこかへ飛び去ろうとします。
しかし、
グリフィンは無造作に魔力を放出して、その波動でもって、女を地面に叩き落しました。うるさい夏の虫をはたき落とすような感じでした。
余談として付け加えるならば、彼の今回の魔法は【扉】を閉ざした際とは異なり、洗練されていなかった。キズつき疲弊した身体を引きずって、彼はもう細かいことはどうでもよかった。丁寧な魔法を編纂する気分ではなかったのです。
フードの女「……うっ!」
地面に打ちつけられ、悲鳴を上げた女を見て、イナのほうが痛そうな顔をしました。グリフィンは構わず、女に向けて手をひと振りします。
グリフィン「顔を見せろ。誰だ」
魔力を帯びた風が吹き、女のマントを引き剥がします。
フードが脱げた女「…………!」
グリフィン「…………」
その女の顔立ちには、確かに見覚えがありました。
一見するとわからないが、間違いなく、とてもよく知っている人物でした。
グリフィン「…………。ハンナ……?」
グリフィンは訝しげな声で、その名前を呼びました。
女は憎しみのこもった目で、彼を見返しました……。
つづきます!
*
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