朝の讃歌

2022年12月16日金曜日

★グリフィンと欠落の姉妹編

t f B! P L
こんにちはー。

いやはやいやはや。
忘れた頃にやってくる【欠落の姉妹編】でございます。
今回は、約五十日ぶりの更新でございます(平伏)

この五十日、プレイヤーがちょっと体調を崩したりして考えがまとまらず、こんなに遅くなってしまいました。そんな個人的事情はとりあえず置いておくとして、今日も始めたいと思います……(再び平伏)


グリフィンは旧友イナを解放するために闘い続け、その闘いは終わりました。彼の選択により、世界はまた少しずつ色を変えてゆきます。そして……

それでは、本日もまいりましょう!



???「イナ・ポートランド。刻限である

その朝、だしぬけにスピーカーがそう告げたので、イナは目を醒ましました。

イナ「……まだ七時半だよ。今日はあたしに何を証言させる気?」

壁に埋めこまれたデジタル時計を見て、イナは憎まれ口をたたきました。二十二年前にこの世に送り出されてから今日までずっと、イナは十一時までは寝ていたいタイプでした。

???「これより、マルボロ少尉がきみの房(ぼう)にむかう。あとは彼に従って行動したまえ

イナ「…………?」


スピーカーから流れる声がだれのものなのか、イナはよく知っていました。

イナが囚われているこの施設で、いちばん権力を持っている女。彼女の「はすに見るような」光る目が、イナは好きではなかった。

あの女の自信に満ちた顔を見ていると【あたしは彼女に似ているのではないか】という気にさせられた。なんでも自分の思いどおりになると信じて疑わない、傲慢な女。


実際、イナはかつてそんな娘だった。

部屋の扉が消毒の蒸気を噴きながら開き、イナの物思いは中断されました。


先刻の放送のとおりマルボロ少尉が入ってきて、開口一番こう言いました。

マルボロ「イナ・ポートランド。これよりきみは、当施設をあとにする。五分あたえる。準備を

イナ「えっ……」


もしかすると。

もしかするとこのような日が来るかもしれないと、イナは心のどこかで予感していました。逃亡騒ぎを起こした身である以上【もっと警備の厳しいカンゴク】に、身柄を移される日が来るかもしれないと。

それはそれで、甘んじて受けるしかないとも思っていました。

どちらにしろ、イナ自身に選択の余地はない。

ただ、何があっても、陽のあたる世界に帰る未来をあきらめはしない。

あたしはもう一度踊りを始めるし、いつかトリーを見つけるだろう。


イナ「…………」

ひとつだけ、打ち消すことのできない心残りは、イナのためにすべてを投げうってくれた心やさしい友だちに、別れの挨拶ができないことでした。

イナ(グリフィン。あたしあきらめないけど、もしかすると、これが最後の……


イナ・ポートランドはひそかに車に乗せられて、軍の施設から運び出されました。

移送に使われたのは一見、なんの変哲もない乗用車でしたが、窓の内側には布が張られ、イナのチャイルドシートが据えられた後部座席と運転席の間にも、厚い布が下ろされていました。イナは、自分がどこにむかっているのかわかりませんでした。


いっさいの刺激から遮断されて、イナは眠り、眠り、眠り続けました。

運転手「到着だ。降りなさい

イナ「…………?」


中年の運転手は穏やかな顔で、イナをチャイルドシートから抱き上げました。

運転手「おめでとう。イナ・ポートランド

ほほえんでいる彼の肩のむこうに、イナがよく知る赤土の大地と、灼熱の日差しが見えています。乾燥した風の匂いは、イナ自身の子ども時代を思いださせました。


イナ「……そんな……ここ…………」

車から降ろされた姿勢のまま、イナは言葉もなく立ちつくしました。


イナがいるのは、故郷の街角。実家のそば。

ストレンジャービルのお屋敷町の一角でした。

この道の先に、イナが生まれ育った邸宅が建っている。なつかしくも疎ましい、あの格式ばったポートランドの家が。

運転手「あとは、きみの友人に任せてある。きみは自由だ

運転手はかがんで目の高さをイナに合わせ、短く敬礼してみせました。そうして、あっというまに車にもどり、エンジン音と共に走り去りました。


イナの前にはいま、二度と会うことはないと覚悟していた友だちが立っています。

道には、ふたりしかいなかった。

イナ「…………」

グリフィン「帽子をかぶってくるべきだったと思った。あなたのように

グリフィンがまじめな顔をして、まったくあさってなことを言いました。

グリフィン「あなたを待ってる間、頭皮をやけどするかもしれないと思ってた。今日は日差しが強すぎる」

イナ「そうだよ。いつから立っていたの」

自分でもなんだかわからない涙がせりあがってくるのを感じて、それをこらえようとして、イナの言葉はむやみに強くなりました。

グリフィン「知らない。時計を見ていなかった」

やはりまじめな顔で彼は言い、


グリフィン「行こう。あなたは、家に帰る。彼らはそれで納得した

ほんの一瞬、イナは目をさまよわせました。

十七歳でこの町をとびだして、サンマイシューノの修業時代、初舞台、結婚。トリーが生まれて、やがて離婚。謎の病で身体は縮み、いまこうしてここにいる。

ここに立つことになるまでに、あまりにも多くの曲がり角がありました。

ストレンジャービルをとびだした日の、希望に燃えるイナはもういませんでした。


イナ「なにを言えばいいの。いまさら妹たちの許にもどったところで、彼女たちになにを」

グリフィン「そのままの心を言えばいい。五年の時がすぎても、どれだけ泥をかぶったとしても、あなたは自分で思ってるより変わってない。そこに立った時に、思ったことを言えば、それで」


イナは友だちの青い瞳を見上げながら考え、自分に尋ね、自分の本心に問いかけました。

イナ「……うん。やってみるよ

グリフィンとイナは邸宅へのゆるやかな坂道を、つかず離れず歩きだしました……。



欠落の姉妹編、最終場面目前です。
つづきます!


Thanks to all MOD/CC creators!

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