物語となった時代のこと【幕間きみここ】

2025年2月6日木曜日

★幕間きみはここに

t f B! P L

こんにちはー。

今回の記事は「きみは、あしたもここにいる(幕間)」です。
忘れた頃に脈絡もなく更新される「お話」のシリーズでございます。


まずは、定型のご挨拶を。

このお話は、プレイ記録をお話仕立てにしたものではありません。こちらは、おもにシムたちのポーズ画像を挿絵にして、うちの世界独自の設定なども盛り込んでストーリーが展開していく「シムズ小説」とでも呼べそうなシロモノです。ぺこり……。


そんなこんなで、星空シムズ年代記より「きみは、あしたもここにいる(幕間)」
今回は「第一の話、その11節」です。
それでは、本日もまいりましょう!

第一の話(その11)




エヴァーブルー「この人の名は、ヘクター・プラチナム。ソニアねえさん、ハンナねえさん、ふたりをサンマイシューノに呼んだのは、どうしても彼に会わせたかったから。今夜はどうか、ヘクターと話をしてほしい」

エヴァーブルーが熱をこめていいました。

ハンナ「プラチナム?高原の古城のプラチナム家?」




ハンナがおうむ返しにいったのも、無理からぬことでした。

いまから四百五十年もむかしのこと。貧しく飢えていた人間たちを、ヴァンパイアの王たちが統治していた時代の物語です。

自由と権利に目覚めた人間たちはゲリラとなる決意を固め、太陽がもっとも高いところに達する頃、ヴァンパイアたちの地下の館を襲撃しました。その凄惨な現場をいいあらわす言葉はありません。ヴァンパイア王のひとり、厚顔のブベルトはその週のうちに、三十六の集落を焼きました。どれも人間たちの集落です。塔は倒れ、森は炭くずとなり、河は人間とヴァンパイアの血で染まりました。

ヴァンパイアの画家であるフロストが、同胞である王たちを厳しく糾弾した話は有名です。フロストは、この狂気の時代をキャンバスに刻印しなければならないと感じ、連作「未明の叫び」を描きあげました。




人間たちのなかからノド・ミナキという若者があらわれ、指導者としてのあきらかな才覚を示しました。ノドを中心に結束を強めた人間たちは、機知と速力を武器にヴァンパイアの砦をつぎつぎに落としていきます。この場面で青鹿毛の駿馬にまたがり、ノドのまえに立ちふさがるのが、大胆不敵なエドワルダ・プラチナム将軍。当時、東方高原にお城を持っていたプラチナム公爵家のお姫さまです。




エドワルダはまたたく間に三つの砦を奪還し、ノド・ミナキのこめかみにピストルをつきつけます。ノドは短剣のつばを使ってピストルをはじきとばし、落下傘をひろげて脱出します。いくさは更にむごたらしいものになっていき、人間たちはすべてのヴァンパイアの王を滅ぼしてしまいます。

エドワルダはわずかに生き残った手下を連れ、峡谷の里に隠れます。ノドは敵の意表をつき、強力な転移魔法(テレポート)に乗ってエドワルダ姫の眼前に降り立ちます。破滅の魔力を身につけていたノドは、姫の三つ編みを縄のようにつかみあげ、爆発的な魔力の奔流を呼び起こします。峡谷はまるごと崩壊し、碧鶏山と斧蹄山は地上から姿を消しました。かわりに対岸が見えないほど広い円形の湖が生まれ、そこは現在、夕景湖と呼ばれています。このようにして、ヴァンパイアの時代は終わりを迎えます。

ハンナ「戦場に赴く半年ほどまえ、エドワルダ・プラチナムは離宮にヘクターという少年を迎えいれた。そういう物語を読んだことがあります」

ヘクター「…………」

ハンナ「小さなヘクターはエドワルダの遠縁だが、親きょうだいはすでになかった。エドワルダ姫はヘクターにとって、姉以上に姉だった。【暗黒時代伝承集】十六巻の五十八ページ、【二頭の仔馬】。エドワルダとヘクターが遠乗りに出かける場面がラストシーンとなる、さびしいけれど清らかな童話」




ハンナの話し方には、奇妙な正確さがありました。

その顔は体温を失ったように青白く、その瞳は夢を見ている人のように、ほんとうはなにも見ていませんでした。ソニア、エヴァーブルー、グウェンドレン、そしてヘクターの眼差しが自分にそそがれていることに気づき、溶けたバターみたいにはにかみました。

ハンナ「ごめんなさい。ただ、そういう本があったな、って思い出してしまっただけなんです」

ヘクター「お気になさらず。【二頭の仔馬】なら、わたしも読んだことがある。好きでした」

目のうえに前髪が覆いかぶさったまま、若者はひっそりとほほえみました。




ヘクター「もしわたしが、物語に出てきたヘクター・プラチナムであったなら、いまこのときが劇的な場面になるのだろうと思います。四百五十年まえの少年が、おとなのヴァンパイアになり、サンマイシューノのバーで話しているなんて!残念ながら、わたしは小さなヘクターその人ではありません。ご存じのとおり、プラチナム公爵家の名は暗黒時代が終わるのと同時に消滅しました。生き残りはいたが、百年もたたぬうちに一族の血は絶えたらしい」

ハンナはうなずきました。

歴史のかなたに消えたエドワルダ姫の名前は、映画やミュージカルの題材として取りあげられています。現代においてプラチナム家とは、悲しくロマンチックな伝説そのもの。ハンナの祖母であるガートルード・ミナキの時代、その人気は最高潮に達したといいます。

「プラチナム家の生き残りがいまなお、人間の世界にまぎれて暮らしている」

そんな噂がまことしやかにささやかれ、当時の富豪であったオズワルド氏は、かの大貴族の生き残りを見つけたものに賞金を支払うと約束しました。




オズワルド氏がもたらした大騒動については端折ることにして、さいごの場面だけお話ししましょう。

結局のところ、プラチナム家の生き残りは現れなかった。何人かが神秘的なまなざしで「わたしこそが、プラチナム家の末裔だ」と名乗りでて、何人かは「彼女こそが、エドワルダ姫その人だ」と、世にも見目麗しい女の子を連れてきました。しかし、そのものたちはお金か人びとの関心がほしいだけでした。エドワルダを名乗った少女のなかには、ヴァンパイアの血を引いていないものさえあったのです。

ヘクター「目を凝らして読むと【二頭の仔馬】は、帝国歴一二七年のエピソードとされていることがわかりますね。あの物語はフィクションだが、ほんとうのヘクター・プラチナムもおはなしとおなじように、大戦末期の混乱に飲みこまれていきました。彼がどのように生き延びたのかはわからない。だが戦争は終わり、ヘクターはおとなになった。戦姫ヘレネ歴七六年、ヘクター・プラチナムは南の尖塔都市に移り、小さな家を借りました。彼は近所を散歩するのが好きで、ある日蚤の市で掘りだしものを見つけた」




ヘクター「彼の関心を引いたのは、壊れた自働人形でした。そもそもは戦争中、命を持たない兵士として、前線に投げ落とされていた人形兵器です。男性型はみな、身長一七八センチ、女性型は一七〇センチ。人間のように走り、話し、考えるが、脳みそはない。血がかよっていない。ヘクターが市で見つけた人形は、片腕がとれていて偽装心臓機関(シリンダー)もからっぽだった。現代では気味の悪い話に聞こえるかもしれないが、動かなくなった人形兵器は郷愁を掻きたてるインテリアとして人気が出はじめていた。しばしば古戦場から掘り出されて、店にならべられていたのです」

ヘクター「ヘクター・プラチナムは人形を見て、郷愁とは別の思いにとらわれた。おそらく、彼の心には戦争がよみがえった。腕がもげたまま寒空のしたに投げだされているかつての兵士を、見棄てておけなかったのだと思います。彼はシムオリオンを支払い、人形をかついで家に帰った。そして、はんだごてやこまごまとした部品を取りだし、半年かけて人形を修復した。どうしてわたしが、まるで見てきたように話すのかというと」




ヘクター「わたし自身が、その人形兵器。蚤の市で腕がもげていた、その人形だからです」

ヘクター・プラチナムの名を持つ若者は、空洞のような瞳でいいました。


つづきます!

Thanks to all MOD/CC creators!
And I love Sims!

あとがき(?)


お気づきの方もいらっしゃると思いますが、今回の話はミュージカル「アナスタシア」をはじめ、私が好きないくつかの作品へのオマージュです。意図的に、いくつかの名作を連想するように書いております。楽しかったー!

お読みいただき、ありがとうございました!!


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