本日は、また「グリフィンと欠落の姉妹編」ですー。
ついに、イナの許に到着したグリフィン・トワイライト。彼の前に現れたのは、グリフィン自身とそっくりな謎の男でした。みずからの半身のような男を、グリフィンは【敵】と断じます。それは闘いと呼ぶには腐臭漂う、一瞬の対峙。【敵】はグリフィンに向け、魔力の刃を放ちます……!
それでは、本日もまいりましょう!
*
白いカゲのような男はみずからの魔力を切り分け、質量無き刃を形作ると、グリフィンの胸の真ん中めがけて解き放ちました。
イナ「ダメ!!!」
イナは今度こそ悲鳴を上げ、グリフィンの前にとびだしました。
自分が身を投げうったことに、彼女は気づいてもいませんでした。
グリフィン「…………!!」
イナの行動に総毛立つほどの恐怖を覚えたのは、グリフィンのほうでした。彼はなんとか彼女を突き飛ばして、迫りくる刃の先から、小さな彼女を遠ざけようとした。それが間に合わないなら、足を掛けて転がしてでもいい、彼女の心臓を敵の矛先から逸らしたかった。
しかし、
フードの女「足癖の悪い男ですね。いけませんよ、いい子にしていなくては」
グリフィン(…………!!誰だ、この女には気配がない!)
女とは思えぬ腕力で押さえつけられ、グリフィンは身動きできませんでした。巨岩に押しつぶされるような、異様な重み。致命傷を負った訳でもないのに、雷に打たれたような痺れが脳を貫く。
グリフィンが放出した魔力の網と、カゲのような男が発射した刃は中空で衝突し、火花が憎しみのように飛び散りました。動けないグリフィンの意識の揺らぎが、彼の魔力を一瞬弱める。「敵」の凶悪な短刀が、グリフィンの堅牢な網を突き抜ける。
グリフィンの目の前で、イナはその身に刃を受け……!
イナに切っ先がぶつかった瞬間、その刃は真珠めいた半透明の色に変わり、イナの身体を蜃気楼のように素通りしました。
【リィン……!】
この世界ではないどこかで何かが振られ、何かが鳴る。
覚悟を決めているイナの視界が、真っ白に染まります。彼女の世界の中心に、いつか見た少年が立ち現れました。
いつかのグリフィン「それでも」
いつかのグリフィン「それでもなぜ、おれがこの運命だったのだろう」
イナ「…………!!」
*
すべては、四半秒の出来事でした。
結論を言えば、刃はイナにキズひとつ与えなかった。刃は本当に、ただイナの身をするりと通り抜けただけだった。
結論を言えば、刃はイナのまうしろに立つグリフィンだけに悪意を向け、グリフィンの肩口に正確に突き立った。
イナ「…………!グリフィン!!」
事態に気づいたイナが、かすれた叫び声を上げました。
イナ「誰か!誰か来て!助けて!!」
謎の男「無様だな、黄昏の男(トワイライト)。おまえが自分の役目を忘れたから、こういう目に遭うんだ」
身体の損傷と激しい痛みとで、グリフィンは反論も問い返すことも出来ません。
グリフィンに似たカゲのような男は、事態を愉しむかのように間(ま)をとりました。彼は勿体ぶって首をめぐらせ、そこにいる女を見ました。
謎の男「……なるほど。おまえが、この幼子の姿をした女をそそのかし、おれを喚(よ)ぶ手助けをしたという訳か」
フードの女「その通りです。厳然たる秩序よ」
謎の男「顔を隠した娘よ、名は何という」
フードの女「ありません、というのがわたくしの答えです。あなたはわたくしに、正確な返答をお望みになるでしょうから」
丁重な言葉に反して、女の声色には気分を害したような響きがありました。
謎の男「名を与えられなかったことが不服か?」
からかうような口調。
フードの女「…………」
とつぜん、グリフィンが獣のように動きました。
あるいは、山が鳴動するかのように。
彼は呻き声ひとつ上げず、みずからの肩口から刃を力任せに引き抜いた。
謎の男「何!?」
グリフィンは力を込めて虚無の刃を圧縮し、みずからの両手のうちに握りつぶしました。骨の曲がるようなミシミシという音が、この場にいるすべての者の鼓膜に届きました。
グリフィン「還れ!」
瓜ふたつの男を見定めて、グリフィンが凛々しく叫びました。
荒れ地に響き渡る、黒い鐘のような響き。
彼の声に乗って、彼自身の巨大な魔力が……今夜最後の魔力が広がってゆきました。
つづきます!
*
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