本日は、また【グリフィンと欠落の姉妹編】ですー。
前回は、負傷したグリフィンの噂話をする同僚たちの様子を中心にお送りしました。今回はまた、グリフィン自身に視点を戻します。尋常ならざる恢復力を見せ、みずからのキズを癒やすグリフィン・トワイライト。彼は未だ医務室にいます。その後、事態はどう動いていくのでしょうか?
……それでは、本日もまいりましょう!
*
ベッドから身を起こし、鏡を睨みつけていたグリフィンの様子は……監視カメラによって記録されていました。
五分後、ドアがノックされ、鍵の開く音が聞こえました。
グリフィン(施錠されていた。おれの逃走を恐れたのか)
グリフィン・スノウフイールことグリフィン・トワイライトは、昨夜の騒動に詳しい【ほぼ唯一の】人物です。大事な情報源を逃すまい……上層部がそう考えるのもムリはないだろう。グリフィンの持ち前の冷静さが、彼自身にそう判断させました。
グリフィン「どうぞ」
入室したのは、白衣を着た……それにしては華やかな女性でした。
白衣の女性「どうも。医師のバーサ・メイフラワーです。先月の健診でお会いして以来ね。あなたは幸運で、おなかを壊すことも、すっ転んで医務室に担ぎ込まれることもなかったし。結構!健康は、王家のティアラにも勝る宝です。でもね、健康を損ねて初めて分かることもある。そうでしょ?」
グリフィン「……こんにちは」
立て板に水と喋りまくる相手を前にして、グリフィンはそう答えます。無愛想に見えたことでしょう。彼はただ、話題のどこに対して相槌を打つべきかわからなかったのです。
メイフラワー医師は、グリフィンの体温と血圧をチェックしました。異常なし。目に光を当てて、瞳孔の具合をチェックしました。異常なし。それからグルグル巻きの包帯をはずして、すっかりキズの消えた腕やら肩やらを、順番に触っていきました。
メイフラワー医師「ここ、押すと痛い?」
グリフィン「いいえ」
メイフラワー医師「手をまっすぐ上にあげて。……こっちは?押すと痛い?」
グリフィン「いいえ」
メイフラワー医師「結構!非常な恢復です。……見てたのよ、あなたのキズが消えていくところを、そこの監視カメラの映像で。何かしらね。まるで神話のように治癒している。知ってるでしょ?片腕を失った精霊ヘレネの肩から、新たな四枚の羽が生えてくるエピソードを」
グリフィン「…………。はい」
この【はい】は、ヘレネの神話を読んだことがある、という意味の【はい】です。しかし、医師はそんなことはどうでもいい様子でした。
メイフラワー医師「という訳で、あなたには点滴もベッドも必要ありません。ハイ、おしまい!棚に着替えが入ってるから、それを着て外へ。あぁ、あなたが元々着てた服は、血を落とすために洗濯室行きになりました。……そう、その棚の二段目。サイズが合わなかったら、壁のボタンを押して看護師にそう伝えて。じゃ、お大事に」
*
あてがわれたシャツを着て病室を出ると、グリフィンの【上役】マルボロ少尉が立っていました。
マルボロ「来たか!調子は」
グリフィン「問題ありません。……お待たせしました」
マルボロ「構わん。そして、気を遣う必要もない。きみはわたしがここで待ち構えていることさえ知らなかったろう。……来たまえ」
有無を言わせぬ事務口調で告げると、少尉は先に立って歩きだしました。
いつか【あの研究所】で見たのと同じ造りの階段をくだり、グリフィンが連れてこられたのは……
旧館地下のモニター室でした。
マルボロ「きみに確認してもらいたいことがある。うしろのモニターに出そう」
画面が切り替わり、スクリーンいっぱいに映し出されたのは……
昨夜半、グリフィンが基地内で置き去りにした人物。
忠実で純粋な、グリフィンの弟の姿でした。
つづきます!
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SS3枚目「メイフラワー医師が持っているバインダー」は、
よりお借りしております。いつもありがとうございます。
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