本日は、また【グリフィンと欠落の姉妹編】ですー。
グリフィンは再び目醒め、そして人間離れした恢復を見せました。医師のお墨付きを得て医務室から解放された彼は、今度は上役・マルボロによってモニター室に連行され、或る映像を見せられます。そこに映っていたのは、グリフィンの弟・ロイヤルの姿でした……。
それでは、本日もまいりましょう!
*
画面が切り替わり、スクリーンいっぱいに映し出されたのは……昨夜半、グリフィン自身が基地内に置き去りにした人物。グリフィンの弟の姿でした。
グリフィン「…………」
相手が……つまり、マルボロ少尉がどんな話を始めるのか。
それを見極めるため、グリフィンはあえて表情を変えず、何の反応も示しませんでした。
マルボロ「五時間前、この少年が第七区画のゲート前で発見された。彼は我が軍の関係者ではなく、当然のことながらIDを所持していなかった」
マルボロ「彼はロイヤルと名乗り、自分がグリフィン・スノウフイールの弟であると主張した。彼はまた、兄から協力を求められ、転移(テレポート)の魔法を発動……この第七区画に不時着したと話している。だが、彼は身分証の類を持っていなかった」
グリフィン「彼の言う通りです」
グリフィンとしてはなんら包み隠すつもりはないので、事実を言います。
グリフィン「おれの家族構成については、あなたのチームで職を得た時に一覧を提出しました。照合すれば、彼がおれの弟だと確認できるはずです」
グリフィンとしては批判したつもりはなく、ただ「述べた」だけだった。しかし、彼の言葉はその意図とは関係なく、響きが鋭すぎるところがありました。
マルボロ「そう、それで事足りるはずだった。……昨夜までは」
グリフィン「…………?」
グリフィンは、マルボロ少尉が言おうとしていることを待ちました。しかし、少尉はグリフィンから視線を外し、スクリーンをじっくりと眺めました。
グリフィンも、それを見ました。
無音の画面のなかで、グリフィンの弟が
監視カメラに向けて、熱心に踊っていました。
マルボロ「…………」
グリフィン「…………」
マルボロ「この映像は、ライブ……現在のものである」
少尉はわざわざそう宣言して、
マルボロ「彼は何をしている」
グリフィン「飽きてる。何もない白い部屋で、ただ待ってることに」
グリフィンは、眉ひとつ動かさずに断定しました。
ロイヤルがいる空疎な場所は、軍が拘束したならず者たちを留置する【檻】の部屋です。入れられた者が脱走を企てたり、あるいは自分をキズつけたりすることがないように、部屋にはモノが置かれていない。
ロイヤルはそこに放り込まれたのです。
そしてロイヤルの処遇は今、グリフィンの振舞いひとつで左右されようとしているのです。
マルボロ「……どこまで話したのだったかな」
グリフィン「おれの家族構成を記載した一覧が、アテにならないという話です」
マルボロ「そうだったな。なぜ、きみの証言が信頼を得られなくなったかというと……きみが予想以上に強力な魔法使いであるという事実が、昨夜明るみになったことが理由だ」
グリフィン「…………」
マルボロ「つまり」
少尉は、彼のクセで(おそらくは無意識のうちに)火のついていないタバコをくわえました。
マルボロ「きみは昨夜のみごとな活躍により、きみがこの世界の法則を覆しかねないほどの人物……それほどの力を持つ存在であることを証明した」
マルボロ「そして我々は……昨夜の【魔力による外部からの攻撃】に対抗できなかったことにより、いささか自信をなくしている」
マルボロ「上層部はあきらかに、グリフィン・スノウフイール、きみを恐れている。きみが魔力を操るように言葉を弄して、軍を幻惑するのではないかと考えているのだ。きみの弟のことも腫れものに触れるように扱って、あのような密室に放り込んだのだ」
グリフィン「…………」
グリフィンには、訂正したいことがありました。
魔法使いとは、世界の法則・秩序のゆらぎを正す者のことであり、マルボロの言うような【世界の法則を覆す者】ではありません。
しかし、ここでマルボロを論破しても仕方がない。それに【魔法使いとは、何者であるか】を講義するには、六時間ほど掛かりそうでした。
グリフィン「昨夜の騒ぎについては、詳細を証言する用意があります。おれもすべてをわかってる訳ではないが、あなたがたが必要な分はすべて話す。それであなたがたの信頼に到達しないのなら、弟の証言もとってから彼を解放してください」
グリフィン「彼がおれの弟だというおれの言葉も信用できないというのなら、髪の一本でも切り取って、遺伝子情報を調べればいい。それだけです」
グリフィン「あなたがたの戸惑いを理解はする。その怯えを解くためにおれに出来るのは、あなたがたと話し続けることだと思う。おれを拘束しようと、おれの全身を調べ尽くして魔力を抽出しようと、あなたがたの疑念は消えない。言葉しかない。とにかく証言します。それを聴いて、おれが信ずるに値する人間か判断してほしい」
不信の目にさらされても、グリフィンは怒りに駆られなかったし、投げやりな態度も取らなかった。彼はただ辛抱強く、自分というものを投げうつようにして開示していました。
同時にグリフィンには、差し出した手を振り払われるかもしれないという危機感がありました。一度信頼が崩れ去った時、それを再びつなぎ合わせて傷痕を消し去るのは、なぜこうも難しいのでしょう?
つづきます!
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Thanks to all MOD/CC creators!
And I love Sims!
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