お話の新シリーズがはじまるや否や、しーーーんと静まり返っておりました。
あいかわらず更新準備のポーズ作りに追われてとっ散らかってすっ転んでいる、星空シムズでございます(平伏)
いえ、あの……
とくになにか事件(!)が起きてこんなに時間があいてしまったとか、そういうワケでは全然ないのですが、どうして結果的にひと月以上も沈黙することになってしまったのか、時の流れの速さに目がまわりそうです。年のせいだろうか。違うか。いや、それよりも。
はじまったばっかなのに既にこの鈍足で、大丈夫なのかアンタ(=私)。
と思わないでもないですが、幸いやる気だけはみなぎっております!
ので、早速本編に入りたいと思います。
星空シムズ年代記より「きみは、あしたもここにいる(幕間)」
それでは、本日もまいりましょう!
第一の話(その2)
かあさまが話したこと
ハンナ・ミナキはたしかに、日の暮れる時刻を待って、母を訪ねるつもりでした。
母・フリーダからかかってきた、あの不器用そうな無言電話。携帯電話の扱いに慣れない母が、あの無音の内側でなにを言おうとしていたのか。
フリーダに会って、聞いておきたいと思っていました。でもそれは、おひさまが沈んで一日のしごとが終わってから。フリーダだって、火急の用というわけではないのでしょうから。
もし本物の急用なら、フリーダは苦手な機械に頼らずその手でカヌーを漕いで、ハンナたち姉妹の灯台荘に乗りこんでくるでしょうからね。そうでなければ、得意の平泳ぎを駆使して海を横切り、灯台荘のデッキへ這いあがってくるかもしれません。
若い娘だった頃、フリーダは遠泳の選手に選ばれたことがありました。
ハンナ「潮騒荘の黒電話はとうとう壊れちゃったから、おうちのほうに電話することもできないしねぇ。でも産業革命前の時代だと思えば、どうってことないよ」
洗濯ものを干しながら、ハンナはのんきに言いました。
潮騒荘、というのが、ハンナの両親が住んでいる小屋の名前です。
ソニア「ハンナちゃん……」
ソニアが悲しそうに眉を下げ、遊んでもらえない小犬みたいな風情で現れました。
ソニア「もしよかったら、わたしがいま、ハンナちゃんのかわりに潮騒荘まで行ってこようか?おかあさまが困りごとに見舞われてないか、見てこようか?」
ハンナ「うえっ!?ねえさま、そんなにあのナゾの電話が心配なんだね!?」
ソニア「うん。もしおかあさまがぎっくり腰になってたりして、電話できずにうんうん言ってたりしたら大変でしょ……?」
ハンナ「いやはや。そりゃあそうだけど、ぎっくり腰や四十肩や五十肩だったなら、とうさまやカハナヌイさんが診療所に担ぎこんでるよ。……オーライ、お昼ごはんを食べたら、あたしもねえさまと一緒に潮騒荘に行く。もうすぐ、エインズワースさんが舟を出す時間だし」
妹のコハクが村の小学校から帰ってくるのは、午後三時。
それまでに行って帰ってくれば、問題ありません。
本来なら、午後はハンナとソニアでろうそくを手作りする予定だったのですが、なに、ろうそくのストックが多少心許ないからといって、タブレットを抱いた死神が訪ねてくるというわけではありません。
かつて灯台荘に住みこみ、ハンナたち四姉妹の監督者を務めていた紳士、ブルーノ・エインズワース。彼はいまも、スラニ諸島の北東地域……ムア・ベラムの山のほうに住んでいます。
ブルーノは三百六十五日やすむことなく、お昼の一時に舟を出します。
お年寄りの住むコテージや病弱な人魚の隠れ家、魔女の岩屋まで自慢の舟でくまなく見まわり、頼まれていた買いものや街から届いた本、リア・ハウアタが編集長を務める「月刊スラニ新聞」なんかを各家庭に配るのが、彼の日課なのです。
ブルーノの舟は足が速いので、同乗の許可を得ることができれば、あっというまに潮騒荘まで送り届けてもらえるでしょう。
結果として。
ハンナとソニアは望んだとおりの時刻に、潮騒荘のまえに立つことができました。
ハンナ「ありがとうございます、エインズワースさん」
ブルーノ「お気をつけて。西のほうをご覧なさい。人魚岩のうえの雲の色。ひと雨きますぞ」
あそこに見えるのが、ミナキ四姉妹の母親。
一族の【筆頭】フリーダ・ミナキです。
ハンナとソニアが砂を踏んで近づいていっても、フリーダは気にせず魚とりの仕掛けを覗きこんでいます。
フリーダ「残念ねぇ。小エビ一匹かかってないわよ。今夜はおイモを蒸しましょうか」
そこでようやく、母は振り返りました。
フリーダ「あら、あなたたちだったの。とうさんが忘れものを取りにもどってきたのかと思った」
ソニア「こんにちは、おかあさま」
ハンナ「とうさまは出かけてるの?」
母はどうやら、困りごとに見舞われているわけではなさそうだ。
娘たちはそう思いながら、それぞれ言いました。
フリーダ「とうさんは出かけたというより、いつもどおりよ。ひと稼ぎしてくると言って、広場のほうに行ったわ」
ハンナ「あ、そう」
ソニア「フリーダおかあさま、今朝ハンナちゃんに電話をかけましたか?」
ソニアがキツネにつままれたような面持ちで言いました。
フリーダ「え?あぁ、そういえばかけたわね」
ハンナ「あたしちゃんと電話に出たのに、かあさまったらなんにも言わなかった」
ハンナが子どもっぽさをかくそうともせずに主張しました。
フリーダ「そうなのよ。なんだかね、電話をさかさまに持ってたみたい」
ハンナ「え?」
ソニア「え?」
フリーダ「携帯電話を、上下さかさまに。受話口のところに口をあてて、送話口のところを耳にあててたって言えばいいのかしらね。そのことに気がついたのよ、あとで。なにか変だとは思っていたの。ハンナの声は聴こえていたんですよ、わたしの口のところからね」
ハンナ「それで、どうして電話が切れちゃったの」
フリーダ「どうしてかしら、切れちゃったのよ。なにかボタン?をさわっちゃったんじゃないかしらね」
ハンナ「さわっちゃったのかぁ」
ハンナはおおいに合点がいったらしく、もったいぶってうなずきました。ソニアはふきだしそうになるのをこらえて、淑女らしくほほえんでいます。
ハンナ「およ?ちょっと待った。かあさまはあたしに電話したあとで、灯台荘の電話にもかけた?あたしの携帯電話にかあさまからかかってきた直後に、おうちの電話も鳴ったんだ」
フリーダ「かけちゃいませんよ」
ハンナ「あれま。そうなの」
ハンナとソニアは顔を見合わせました。
それでは、あのときかけてきたのはだれだったんだろう。
ハンナ「じゃ……ナゾは解けたし、帰ろっか」
ソニア「うん、そうしようか……ううん、ちがうちがう!」
ソニアはとつぜん目が醒めたみたいにとびあがって、
ソニア「おかあさま。それで、おかあさまは今朝のお電話でハンナちゃんになにをお伝えになろうとしたんです?わたし、それがとっても気になってしまったんです。もしお手伝いできることがあるなら、わたしは働きたいです。ええと……たぶんハンナちゃんも」
ハンナはきょろりと目をまわして、いたずら小僧のように両腕をぶらぶらさせました。
フリーダ「あ、そうそう。たいしたことじゃないのよ。心配させてしまったのね、ごめんなさいね」
フリーダは魚とりの仕掛けに海草が引っかかったことに気がつき、それをつまんでびろーんと広げました。
フリーダ「とうさんとわたしはあしたから四日間、ヘンフォードに行くことになったのよ。ヘンフォードの家も、しばらく手入れしていませんからね。ひさしぶりに傷みをみてこようという話になって」
ミナキ家は、いくつかの都市に別宅を構えています。
ヘンフォードの家は、ハンナが幼少期をすごした思い出の場所でした。
しかし、この七年間はだれも住んでいません。
ハンナ「へー、いいなぁ」
あたしも行きたい、という素直な憧れが、ハンナの口調ににじみました。
フリーダ「今回の補修が終わったら、みんなでヘンフォードの家に泊まるのもいいわね。ソニアはヘンフォードの家に行ったことがないでしょう。いいところよ。……さあ、わたしはもう大丈夫だから、あなたたちは灯台荘におかえりなさい。あ、ちょっと待って。せっかくだからジャムを持っていくといいわ」
娘たちが瓶詰めの入った袋を持ち、いよいよ帰っていくという段になって、フリーダはもう一度ふたりを呼びました。
ハンナ「ん、なあに」
フリーダ「エヴァーブルーのことなんだけど」
母親と娘たちの間に、かすかな緊張が走りました。
フリーダ「あの子が……エヴァーブルーが最後に連絡をよこしてから、ずいぶんたつでしょう?ブルーはあなたたちにも、なにも言ってきてない?」
ソニア「いいえ……」
ハンナ「なんにも」
エヴァーブルーとは、ソニアとハンナの「妹」。
ミナキ四姉妹の「三女」。
二十一歳になる彼女はブライトチェスターの街に移り、大学に通っていました。それが、ある時期からふつりと連絡がとれなくなりました。
エヴァーブルーから最後に届いた手紙は、短いものでした。
しばらく地中にもぐります。
心配いらない。
ときが来たら、また連絡するね。
エヴァーブルーより。
*
フリーダ「賢明なエヴァーブルーのことだから、考えがあるのだとは思うけれど」
フリーダ・ミナキの瞳に知性の光が宿り、
フリーダ「しかたがない。さらにベルミナキ家やダルミナキ家の皆さまにも力をお借りして、エヴァーブルーの痕跡をさがしましょう。おおごとにしたくはないけれど、そうも言っていられない。日が暮れるまえに、皆さまに使いを出します」
ハンナ&ソニア「わかりました。フリーダさまのお考えを尊重します」
ふたりの娘は、ミナキ家の筆頭に従いました。
つづきます!
*
Thanks to all MOD/CC creators!
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