本日は、また「グリフィンと欠落の姉妹編」ですー。
三歳児の姿になってしまった旧友・イナを気に掛けるグリフィン。しかし、心を喪っている(あるいは、心を閉ざしている?)イナはグリフィンを認識せず、ふたりの会話は成立しません。一方で、グリフィンに姉の問題を託した「イナの妹たち」は今、どうしているのでしょうか……?今回は、ポートランド姉妹の動向を追いかけます。
それでは、本日もまいりましょう!
*
グリフィンが、小さなイナを訪ねて「妹の写真」を見せたのと同じ日……。
ポートランド家の邸宅では、イナの妹たちがコーヒータイムを過ごしていました。
ネモフィラ「アーモンド、お茶が入ったわよ。……ふふ、お茶というか本当はコーヒーなのだけど【お茶が入った】と言ったほうが、詩的な調べに聴こえるでしょう?」
アーモンド「うん……、ありがとう」
ネモフィラ「どうしたの?何か、考えていることがある?」
アーモンド「うん……」
アーモンド「…………。お姉さま、あの方はわたしたちの屋敷を去ったあと……どうされたかしら」
アーモンドの言葉はびどく漠然としていて、捉えどころのないものでした。それでもネモフィラは、妹の言いたいところを理解してほほえみました。
ネモフィラ「グリフィンさんのこと?」
アーモンド「うん……」
あの不思議な青年が訪ねてきた夜……あの夜の出来事は、姉妹にとっても忘れがたいものでした。
アーモンド「今になって、イナお姉さまの手掛かりに辿り着くなんて思わなかった」
ネモフィラ「手掛かり。……手掛かりって言うのかしら?あの方はお姉さまのことを調べてるだけで、あの方自身が何かを知ってる訳じゃなかったわ」
アーモンド「うん、そうね。でも、あの方はきっと、真実を掴むための【不思議な力】を持っている。わたしたちは今度こそ、イナお姉さまに出会えるかもしれない」
ネモフィラ「そうね。ずっと前、まだわたしが寺院の尼僧見習いだった頃、叔父さまがお見えになったことがあった……って言ったでしょう?」
アーモンド「うん」
…………。
…………。
叔父「……ネモフィラ、わたしだ。見習いのおまえの許へ、男であるわたしが訪れるのは気が引けた。だが、そうも言っていられない。面会の許可をとった」
ネモフィラ「とつぜんのお越し……一体どのような御用向きでしょうか」
叔父「単刀直入に言おう。旅行中、おまえの姉らしき娘を見た。あれが行方をくらませてからというもの、足取りを掴んだのはこれが初めてだ。おまえには伝えておこうと思う」
ネモフィラ「…………!!」
叔父「イナらしき娘を見たのは、地方のとあるバーだった。彼女はひとりで飲んでいた。わたしが声をかけるべきか躊躇ったのは、彼女があまりにも変わってしまっていて、まるで【野良犬のような女】だったからだ」
ネモフィラ「そんな……何か、間違いでは……」
叔父「わたしが目にした光景を、おまえの瞳のなかに映してやりたいと思う。とにかく、わたしが躊躇っている間にバーのドアが開いて、見知らぬ子供がとびこんできた」
少年「姐(ねえ)さん、出るぞ!サツだ!」
叔父「それを聞くと、彼女は弾かれたようにスツールからとびおりて、店を出て行った。【お代を!】そう叫んだ店主に彼女は、聞くに堪えない呪いの言葉を吐き捨てた。その声は間違いなく、かつてわたしたちが親しんだイナのものだった」
叔父「……これが、わたしが目にした光景のすべてだ。ネモフィラ、憶えておくべきだと思う。イナは、わたしたちとは別の世界の住人……裏の世界の女になってしまったようだ」
…………。
…………。
ネモフィラ「叔父さまは、わたしに【アーモンドには話すな。あの子は、まだ幼い】と、念を押したわ。でも、わたしはすぐに寄宿学校に手紙を出して、叔父さまのお話をそっくりそのまま、あなたに伝えた。なぜなら、わたしとあなたは」
ネモフィラ&アーモンド「いつだって、一心同体だから。わたしたちはもう、たったふたりになってしまったから」
アーモンド「そして、グリフィンさんがイナお姉さまのことを調べに来た時……わたし、あの方がおまわりさんなんじゃないかと思って怖かった。イナお姉さまがついに警察に捕まって、それで屋敷を調べに来たんじゃないかって」
ネモフィラ「そうではない、あの方もまた、お姉さまの足取りを追っている……そう知ったあとも、わたしたちはあの方に、叔父さまの話を伝えなかった。それがお姉さまの居所を掴む手掛かりになるかもしれないと、分かっていたはずなのに」
アーモンド「なんだか不確かな話だし、伝えるべきじゃないと思ったから」
ネモフィラ「お姉さまが堕落してしまったと、信じたくはなかったから」
ネモフィラ&アーモンド「イナお姉さまがいない今、ふたりで立ち向かわなければならないけど、それはとても難しいから」
ネモフィラ「…………」
アーモンド「…………。ネモフィラお姉さま。わたし、希望を持っていても不安になる。イナお姉さまは、本当に……帰ってきてくれるかしら」
ネモフィラ「分からない。それは誰にも分からないわ。でも、わたしたちは生きなければならない。イナお姉さまを待つために」
ネモフィラはポンと手を叩き、気を取り直したようにこう言いました。
ネモフィラ「さあ!今度こそ、お茶にしましょう。お店でお味見させてもらったけど、とても素敵なデカフェコーヒーなのよ?素敵なコーヒーとカップケーキで、お姉さまのために乾杯しましょう!」
アーモンド「われらの姉妹のために」
ネモフィラ&アーモンド「わたしたちの、勇敢なイナのために」
それは、誰にも聴かれることのない、静かな午後の会話でした……。
つづきます!
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今回お借りした主な作品
回想シーンのイナが持っているグラス(手持ちアクセサリー)
Many CC(コーヒーテーブルの上)
Thanks to all MOD/CC creators!
And I love Sims!
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