すっかり間が空いてしまいました。
本日は、また【グリフィンと欠落の姉妹編】ですー。
グリフィンは旧友・イナのために、彼女の「行方不明になっている息子」トリーの行方を捜し続けます。「大海のなかからひと粒の真珠を見つけ出すことさえ出来る」……同僚にそう言わしめたグリフィンの忍耐強い調査は、消えた幼子の消息に結びつくのでしょうか?その結末と不穏とが、少しずつ近づいてきます……。
それでは、本日もまいりましょう!
(今回も、ちょっと長めです……!)
*
グリフィン・トワイライトはトリー坊やの足取りを追って、聴き込みを開始しました。
一日目は、手掛かりなし。
二日目も、手掛かりなし。
手掛かりなし・手掛かりなし・手掛かりなし。
それもそのはず。イナ・ポートランドがガソリンスタンドに置き去りにされ、トリーが姿を消した日から、既に二か月以上が過ぎています。当時の出来事を目撃していて、それをハッキリ憶えている人に出会うだけでも、なかなかに大変なことでした。
これがたとえば、グリフィンが警察の一員だったりして人海戦術が使えるとなれば、事態はもう少し簡単だったかもしれません。しかし、それは無いものねだりというものです。軍もグリフィンの【私的な】調査にまで力を貸すことはできませんでした。
ともかくグリフィンは、仕事の合間に(※彼の「表の仕事」は、軍の宿舎の清掃です)宿場に通い詰め、トリーの痕跡を探し続けました。
グリフィン「…………」
グリフィン「…………!?」
グリフィン「…………」
*
ロイヤル「日焼けしたな、グリフィン?」
連日炎天下で足を棒にしたことにより、グリフィンは弟にそう言われるまでになりました。
*
その間も、グリフィンは毎日イナを訪ねて、調査の進捗について報告していました。
【手掛かりが見つからない以上、報告することは何もない】とも言えるのですが、手掛かりがないという現状を彼女が把握しておくことも大事でしょう。
とくに、イナは結果を急ぐ性急なところがありましたから(※グリフィンはイナをそう捉えていました)もし現状を知らされずに「置いてきぼりにされた」と感じたりすれば、やきもきしてのたうち回ることになりかねません。
彼女の健康のためにも、日課の報告は欠かせませんでした。
…………。
…………。
*
イナ「あれ?今日はまた資料があるんだね?」
ある月曜日のこと。
グリフィンが報告用の書類を取り出したのを見て、イナが言いました。
グリフィン「調査中に気になったことがあって、表(チャート)で一覧できるようにしたかった。あなたに見せるためというより、自分のためだ」
イナ「あ、今回は表なんだ」
グリフィン「……奇妙なことが起きてる」
イナ「…………?」
グリフィンは思索の海に沈んでいるようでしたが、ともかく資料を提示しました。
グリフィン「毎回同じ話を繰り返して申し訳ないが、今日もトリーの目撃情報は無い。表はその件ではなく、あなたがガソリンスタンドまで乗ってきた車……ワット氏が運転していたという車についてだ。だいたい結果が出た」
イナ「…………?ワットさんがくすねてきた、白いバン?ワットさんはルーフの上に、家財のテーブルや椅子をくくりつけて運んだ」
グリフィン「そうだ。テーブルと椅子をくくりつけた、白いバンだ」
イナ「うん?」
イナ・ポートランドも、とりあえずその表に目を通しました。
グリフィン「表は、ワット氏のバンが【目撃された地点】と【目撃した人数】についてまとめたものだ。トリーという子供のことを憶えている人はいなくても、テーブルと椅子をかつぎ上げた妙なバンのことは、近隣の住民が憶えてた」
イナ「……まあ、そんな変なのがウロついてたら、忘れたくても忘れられないかもね?」
グリフィン「その通りだ。ガソリンスタンドから宿場までの道中、バンは頻繁に目撃されてる。残念ながら、運転手の姿まで憶えている人物はいなかった。テーブルと椅子に目を奪われて、運転手どころではなかったのだろう」
グリフィンは至ってまじめに話していたのですが、イナは思わず、笑いのようなものを洩らしました。グリフィンの口ぶりに、彼自身が意図しなかったユーモアを感じたのです。
イナ「この表、区分が細かすぎてちょっと見づらいよ」
グリフィン「ああ。最初は、自分が見てわかればいいと思ってたから。失敗した。バンの目撃者数は、直線道路でふたり・郊外の農場地区でふたり・宿場に入ってから五人・宿場を過ぎて一キロの地点にあるダイナーでひとりだ」
グリフィン「……それが、そのダイナーを過ぎたところで目撃証言がぴたりと無くなる。不自然なほどに」
イナ「【不自然なほどに】?」
グリフィン「そうだ」
イナ「…………」
鋭敏なことに、彼女の頬に蒼白の気配が差し込みました。
グリフィン「それとは更に別の話を、ダイナーで聴いた。ダイナーの裏手に住む少女が、行方不明になってる。ある夕方、水を汲みに出たまま帰らなかったそうだ」
グリフィン「近辺では他にも、行方のわからないモノがいる。金網の柵で守られていたはずのニワトリが四羽、忽然と姿を消したらしい。飼い犬と散歩に出た紳士が、そのまま消えたという話もある。宿場では、まことしやかに【消滅事件】と噂されてる」
斧で切り落としたかのように、グリフィンはぶつりと話をやめました。単純に、そこで【すべての報告が終わっただけ】だったですが、それは異様な沈黙に聞こえました。
イナ「……ええと、あの……あたしだって今は子供の姿になっちゃったし、この世界には不思議なことがあるんだろうって思うけど……その」
話題があらぬ方向に進み始めたのを感じて、イナは口ごもりました。彼女の顔色は、目に見えてよくありませんでした。
イナ「それってつまり……ワットさんの運転する車はトリーを乗せて、その、本当に消えてしまった……ってこと?」
グリフィン「確かに、事実を並列するとそう聞こえる。だが、ただ並列しただけだ。それぞれは別個の事件で、横の繋がりはないかもしれない。まだ何もわからない。とりあえず、これらのことはあなたに知らせておくべきだと思った」
イナ「…………」
グリフィン「この話は、上にも報告する。どのみち、おれひとりで調べるのはこのあたりが限界だ。あとは専門機関の手を借りるしかない。町の住人が失踪していると突きつければ、上も動かない訳にはいかないだろう」
イナ「…………」
イナの顔には、不安の色がいよいよ濃く……
イナ(トリー……)
彼女は最後まで、その不安を口にすることはありませんでした……。
つづきます!
*
グリフィンが持っている書類(SS11・12枚目)は、
新生まるきぶねスローライフ 様
よりお借りしております。いつもありがとうございます。
Thanks to all MOD/CC creators!
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