命の負債

2022年9月5日月曜日

★グリフィンと欠落の姉妹編

t f B! P L
こんにちはー。

本日は、また【グリフィンと欠落の姉妹編】ですー。


グリフィンは、イナの心からの望みを聴いて行動に出ました。軍施設の責任者・ハウラ大佐に談判したのです。「イナ・ポートランドを解放してほしい。彼女と対話し、彼女を尊重してほしい」と。彼はその後どのように行動し、彼の身に何が起きたのか……?

それでは、本日もまいりましょう!




グリフィン「イナ・ポートランドがどこへ行こうと彼女を見失わず、その手を握って離さない存在が必要だというのなら、おれがその【手】になります。おれにはそれが出来る。おれと彼女の間には、すでに繋がりがあるから」

ハウラ大佐「うむ……?」

ハウラ大佐は興味をそそられたというように、続きを促しました。


ハウラ大佐「きみの魔力でポートランドに【魔法発信機】を仕込む……そんな話ではないのだろうな?」

そんな軽口まで付け足して。
無論、【魔法発信機】などというシロモノは実在しません。

グリフィン「魔力ではなく、嗅覚です


グリフィン「おれはイナ・ポートランドの【魂の匂い】を憶えてる。彼女がどこにいるか、何をしているか、その気になればおおよそ嗅ぎ分けることが出来る。以前はこんなことは出来なかった」

ハウラ大佐「…………。うん?」

グリフィン「聴いてください。あの白い監獄で彼女と面会した時、彼女の匂いを識別できる自分に気づいた。いまも、あの監獄から数区画離れてるのに彼女の匂いを感じる。証拠を示してもいい。イナ・ポートランドに許可をとってください。あなたのプライバシーに立ち入って申し訳ないが、あなたがいま何をしているか、カメラを見ずに言い当てても構わないかと」

流石のハウラ大佐も、あっけにとられてグリフィンを眺めました。この若者は何を言っているのだ、と。

ここで事態を膠着させてもしかたないので(と、大佐は考えたらしかった)彼女は片耳にイヤホンを装着し、グリフィンに見えない角度で第二モニターを立ち上げました。


ハウラ大佐「イナ・ポートランド。聴こえるか」

イナ「…………?なに」


イナの声は大佐の耳のなかにだけ響いていて、グリフィンには聴こえません。

ハウラ大佐「グリフィン・スノウフイールがこう言っている。ポートランド、きみのプライバシーに立ち入って申し訳ないが、きみがいまそこで何をしているか、当てても構わないかと」

イナが示した反応は、ハウラ大佐のそれとおなじものでした。グリフィンは何を言っているのだろう、と。

イナ「…………。手品?」

大佐が苦笑を洩らしました。【わたしにもわからない】という意味です。

イナ「……まぁ、いいけど。あ、ちょっと待って……オーケー、どうぞ。グリフィンにそう伝えて」

ハウラ大佐「感謝する」

こうして許可を得たグリフィンは、もったいをつけることもなく無造作に始めました。

ものの喩えでもなんでもなく、文字通り、鼻の奥に集まる膨大な情報をより分けていく。それらをふるいにかけ、必要なものだけを取り出していくのです。


グリフィン「…………。イナ・ポートランドはいま、クッションのきいた椅子にすわってる。脚を前後にぶらつかせているせいで、彼女自身の匂いが前後にバラ撒かれてる。食事の時間なのか、彼女のそばまで食べ物の匂いが近づいてきた。カートで運ばれてきたんだと思う。おそらく揚げ物、魚、種類まではわからない。彼女はおれを気にしないよう努めながら食べはじめた」

大佐がモニターを覗き込み、イナの様子を確認している間、沈黙がありました。



ハウラ大佐「…………。なるほど」

ハウラ大佐「マルボロ少尉。スノウフイールの身体検査を」

マルボロ「了解」

グリフィンがイナの様子を知るために、何かカラクリを使ったのではないか。たとえば、小型モニターのたぐいを隠し持っているのではないか。

そういったことが疑われて、グリフィンは全身を調べつくされました。靴のなかまで検分されて、彼が何も持っていないことが証明された。

ハウラ大佐「……まいったね。言葉通り、匂いを感じたのか。配膳された揚げ魚やら、イナ・ポートランド自身やらの」

グリフィン「そうです」

ハウラ大佐「なにが起こっている、きみの身に」

グリフィン「わかりません。医務室で目醒めた時に全身のキズが消えたあたりから、何かがおかしい気はします」

グリフィンは顔色がよくありませんでした。

遠くにいるはずのイナの匂い。揚げ魚の油の匂い。イナが座っている椅子の中綿の、頭痛がするような合成繊維の匂い。肌の匂い、骨の匂い、血の匂い、逆さに剥かれた魂の匂い。

それらが入れかわり立ちかわり鼻腔の奥で膨れあがり、グリフィンの平衡感覚を奪っています。


嗅覚を二倍に研ぎ澄まそうと心に決め、試みた結果がコレなのだとしたら、甘んじて受けようとは思っている。

それにしても世界とは、こんなにも脳髄をえぐる臭気にあふれた場所だったか?天井はあんなにも、落ちてきそうに低かったか?壁はあんなにも、目に痛いオレンジ色だっただろうか?

イナ「ねえ、あたしの声聴こえてる?グリフィンはあたしがゴハン食べてるって言い当てられた?

大佐のイヤホンがイナの声をとらえて、

ハウラ大佐「パーフェクトだ」

その後も、ハウラ大佐はイナと何か話しているようでした。

しかし、グリフィンはもう興味を持てなかった。

押し寄せてくる匂いの渦、匂いの高波、匂いの雪崩。

それらを脳みそから締め出すために、力ずくで嗅覚を遮断する。その大仕事を成功させなければ、この場で卒倒するという気がしていた。

ハウラ大佐「……大丈夫かね」

グリフィン「問題ありません」


意志の力で鼻を麻痺させながら、グリフィンは表向き、いつもの平然とした顔つきのままでした。

よくも悪くも、そういう青年でした。

ハウラ大佐「……我々がポートランドを解放し、ポートランドは我々の研究に協力する。きみはその【鼻】を使い、いざという時はポートランドの居所を我々に知らせる。奇妙を通り越して滑稽だとさえ思うが、きみの言い分は、一応わかった。だが、きみがポートランドの良き友人であることも理解している」

ハウラ大佐は、グリフィンの心の奥底を覗き込むように言いました。


ハウラ大佐「きみの言葉を信じるには、契約が必要だ。きみが手を差しのべ鼻を使って【ポートランドと軍のあいだの架け橋になる】と言いながら、我々を欺いて、ポートランドの逃亡を手引きするということも考えられる。きみには賢さと勇気がある。必要と思えば我らを裏切るだろう。きみはどのようにして、いざという時に友情より命令を優先することを……我々への真の忠誠を誓うのだね?」


グリフィン・トワイライトは、黙って手を持ち上げました。

いぶかしむ大佐の前で、


その手のなかに、いつか見た刃が現れました……。

つづきます!


SS4枚目(ノートパソコンを覗き込む大佐)のポーズは、
よりお借りしております。いつもありがとうございます。

(他のポーズは自作です……)

Thanks to all CC creators!

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