相変わらず間隔があきがちですが……
本日は、また【グリフィンと欠落の姉妹編】ですー。
グリフィン・トワイライト(グリフィン・スノウフイール)は、軍施設の責任者である大佐に、イナ・ポートランドの解放を訴え続けます。自分がイナの手を取り、イナと軍との間の架け橋になる、という保険をつけて。
大佐からの質問はひとつです。
「そういう口当たりのいいことを言っているきみが我々(軍)を裏切らないと、どうして言える?」
……それでは、本日もまいりましょう!
*
グリフィンがハウラ大佐との交渉に臨んでいたちょうどその頃、大佐の執務室の外では……
メルヴィル・ムーア。
マルボロ少尉に命じられた男が、不測の事態に備えて待機していました……。
*
ハウラ大佐「きみの言葉を信じるには、契約が必要だ」
部屋のなかでは、交渉が最終局面を迎えていました。
ハウラ大佐「きみが手を差しのべ鼻を使って【ポートランドと軍のあいだの架け橋になる】と言いながら、我々を欺いて、ポートランドの逃亡を手引きするということも考えられる。きみには賢さと勇気がある。必要と思えば我らを裏切るだろう。きみはどのようにして、いざという時に友情より命令を優先することを……我々への真の忠誠を誓うのだね?」
グリフィン・トワイライトは、黙って手を持ち上げました。
いぶかしむ大佐の前で、
その手のなかに、虚無じみた刃が現れました。
ハウラ大佐&マルボロ少尉「!!!」
得体の知れない、しかし明らかに危険を感じさせる行動を前にして、ふたりの軍人が同時に動きました。
大佐にしろマルボロ少尉にしろ、丸腰でグリフィンを組み伏せ、昏倒させるくらいの技術はあった。
ふたりの疑問はおなじものだった。
たったいま身体検査を終えたばかりなのに、この若者はどこから刃物を取り出した?
やはり魔法使いとは、信ずるに値しない人びとなのか。
グリフィンの足を払い、刃を弾き飛ばそうとしたふたりの動きが、その意志に反してぴたりと止まった。筋肉の躍動は物理法則を超えた力によって阻まれ、彼らのどちらともが、時が止まったように感じていた。
誰かが、大佐の耳許で囁いた。
???【好きなようにやらせてやれ】
ハウラ大佐「…………!?伝心(テレパシー)か!」
その間も、グリフィンは定められた軌道を描いて沈む太陽のような正確さで動き続けている。彼の刃はなんということか、彼自身を狙っていた。
大佐「ムーア、行動を許可する!やつを止めろ、腕をとばしてもいい!」
部屋の外で見張りについていたムーアは、すぐさま応じた。
彼は秘密工作員の本能で、手のなかにナイフを隠してとびこんできた。登場と同時に、グリフィンの肩口めがけてナイフを投げようとしていたが、グリフィンがやろうとしていることを見ると、なにか感嘆めいたことを叫びかけた。
ムーアはなんと口走った?
【待ちわびたぞ、海の巨人よ】……?
ともかく、なにかがムーアの心を揺り動かし、彼は自分の意志でナイフを収めた。
ハウラ大佐の危惧は、ある意味では杞憂だった。
グリフィンは、自分の喉を突き刺したりはしなかった。
しかし、中空にとどまるグリフィンの刃はあるじの胸を指し示したまま、切っ先に黒い光をともしはじめている。
びりびりと、部屋の酸素が焦げはじめている。
ムーア「…………!」
食べたものを吐きもどす猫の背中のように、グリフィンの胸が波打った。
そして左胸が、本当になにかを吐き出した。
グリフィンはひとつ息をついて、吐きだされたものに【力ある言葉】(スペル)を書き込んでいく。
グリフィン「光と闇/夜明けと黄昏/焼き尽くすものと濡らすもの/わたしが約束をたがえたときは/わたしの心臓をおまえに還そう」
切っ先からインクがにじみ出し、なにかコードのようなものが赤いカケラに絡みついていく。
蔦のつるのように、へその緒のように。
左胸から現れたカケラは、確かにいま、言葉によって捕らえられた。
絶句している人たちの前で、グリフィンだけがけろりとしている。
彼は【言葉のへその緒が絡みついた】それをつまみ上げ、口を開けてひと飲みにした。
全員「…………!!」
…………。
…………。
静寂。
終わったのか。
ムーア「おい、平気か……?」
日ごろ軽薄な同僚が、青ざめた声で尋ねました。
ムーア「!!」
グリフィン「……平気だ」
グリフィンの姿にあらわれた異状は、一瞬のものでした。
彼の顔に浮かびあがった斑(はん)は、布巾でぬぐい取られるかのように、二秒のうちに消えてゆきました。ムーア以外、この斑を見た者はいなかったはずだし、グリフィンが顔を伏せていたために、監視カメラに映ることもありませんでした。
グリフィンは、まったくふつうの顔色で立っています。
ハウラ大佐「…………。まったく」
ハウラ大佐が洩らした安堵の言葉が、この場の空気をあらわしていました。
ほんとうに、驚かせないでほしい。
なんだってこんなことをしたんだ、この若者は。
いつのまにか椅子を蹴倒していたことに気づいて、大佐は片手で引き起こしました。
グリフィン「大佐のご質問に対する、これがおれの答えです」
グリフィンが落ち着いた態度で釈明しました。
ハウラ大佐「あぁ……きみはどのようにして、我々への真の忠誠を誓うのか。わたしはそう訊いたのだったね」
グリフィン「もしおれがイナ・ポートランドを裏切るか、あるいは反対に、あなたがたへの反逆を行動に移すか。そのどちらかに傾いた場合、おれは手足の自由をなくし、その場で意識を失う。イナを裏切った場合はイナ自身が、あなたがたを裏切った場合はあなたがたが、おれを見つけて捕縛するまで目醒めることはない。そういう魔法をかけた。心臓に直接書き込むタイプの、自分では解くことができない魔法です」
ハウラ大佐「…………」
グリフィン「おれはイナ・ポートランドを友人として助け続けるし、友情のためにあなたがたと争って誰かの血を流すような浅慮も選びたくはない。見つけなければならないのはもっと別の、三番目の道だ。まだ見ぬその道から外れそうになった時、おれ自身も終わるだろう」
グリフィン「おれ自身に行使した約束の魔法がどんなものか、おれの話だけでは疑問も疑いもあるだろうから、必要な資料をとりよせて四十八時間以内に提出します。これがいま、おれにできるすべてです」
ハウラ大佐「…………」
大佐はモニター前に歩いてゆき、画面越しにこの騒ぎを見守る羽目になった調査委員会の面々に呼びかけました。
ハウラ大佐「……まずは、お見苦しい場面をお目にかけました。後日、スノウフイールには相応の罰を与えます。監督者のわたしにも、明確に責任があります」
委員会がどんな答えを大佐に与えたのか。
大佐はイヤホンをつけて話していたので、うかがい知ることは出来ませんでした。
ハウラ大佐「この騒ぎについて、すでに通報済みですか?……は?……いいえ、感謝します閣下。そして、いまご覧になった一部始終を思い返し、一考して頂きたい。以上が、グリフィン・スノウフイールの言い分です。彼の言葉を踏まえたうえで、イナ・ポートランドの処遇について今一度検討したいと考えますが、いかがでしょうか」
大佐と委員会の会話は一分間続き、
ハウラ大佐「マルボロ少尉。これからわたしは委員会室に出向いて、ポートランドの問題についての最終的な対応を協議する。スノウフイールとムーアを連れて退室したまえ」
マルボロ少尉「はい、大佐」
グリフィンは、マルボロ少尉の監視を受けながら部屋を出ました。礼をして扉を閉める時、グリフィンは、執務室の奥の大佐がなにかを目で語りかけていることに気づきました。
【きみの決意には報いよう】
長い前髪のあいだから覗く目は、そう言っていました。
……つづきます!
*
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