今回は、ひさしぶりに(それはもうひさしぶりに)「きみは、あしたもここにいる(幕間)」をお送りしたいと思います。
決まってすっかり忘れた頃に現れる、星空シムズでございます……(平伏)
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えーーーーーと。
まずは定型のご挨拶を。
このお話は、プレイ記録をお話仕立てにしたものではありません。こちらは、おもにシムたちのポーズ画像を挿絵にして、うちの世界独自の設定なども盛り込んでストーリーが展開していく「シムズ小説」とでも呼べそうなシロモノです。ぺこり……。
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というワケで、
星空シムズ年代記より「きみは、あしたもここにいる(幕間)」
それでは、本日もまいりましょう!
第一の話(その3)
ときにはケンカをするということ
ハンナとソニアが灯台荘にもどると、コハクはもう、小学校から帰ってきていました。
ハンナ「ごめんコハク!待った!?」
ソニア「びっくりしたでしょう!おうちにだれもいなくて!」
姉たちが徒競走のように駆けてきて口ぐちに言うので、コハクが目をまるくしました。
コハク「平気。おねえちゃんたち、コハクに手紙を書いてくれたでしょ。クッキーおいしかった」
ハンナとソニアは、帰りが遅くなる場合に備えて、玄関に手紙を残していました。
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かあさまのところに行ってきます。早めにもどるつもりです。
食糧庫のクッキーを食べて、待っていてください。ギンガムチェックの包みに入っています。ラズベリージュースを飲んでもまだおねえちゃんたちが帰ってこなかったら、マコアさんのおうちを訪ねて待たせてもらいなさい。
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コハク「これからラズベリージュースを飲もうと思ってたの。心ゆくまで味わって、それからマコアさんのおうちに行こうと思ってたの」
ハンナ「そうなんだ。困ったことはなかった?」
コハク「うん、ないよ。コハクはもう九歳だし、コドモじゃないから」
ハンナ「えぇっ!もう子どもじゃないの!?」
コハク「うん」
牝牛のマリーアンヌが興味深そうに寄ってきたので、コハクは鼻面をなでてやりました。
コハク「おかあさんとおとうさんから、おみやげもらってきた?」
ハンナ「もちろん、きたよ!かあさまったら、とうさまが煮た秘蔵のジャムを持たせてくれたんだ」
コハク「すてき。それ、なめてもいい?」
ソニア「パンかクラッカーに載せて食べましょうよ、お茶の時間になったらね。さあ、おうちに入りましょう」
ハンナがおもてのガラス戸に鍵を差しこんだとき、くぐもった音が聞こえました。キッチンで電話が鳴っています。
ハンナが勢いにまかせて戸を開ける様子といったら、ガラスが木枠からはずれるのではないかと思うほどでした。彼女は椅子だのカウンターだのにぶつかりながら、猛然と電話に突進しました。
しかし、受話器をつかむかつかまないかというところで、ベルはふつりと途切れてしまった。
ハンナ「おぉぉおぉのぉぉぉぉぉう!!」
ソニア「なにかしら。これ、ずっとおなじ人から掛かってきてるのかな……」
ソニアが腰をさすりながら、やっと立ちあがって言いました。コハクが手を貸しています。ソニアはハンナとおなじように電話に突進しようとして、足がもつれて転んだのです。この長女は、すこしばかり不器用なところがありました。
ハンナ「ううん、めげない!……ねえさま大丈夫?ケガしてない?」
ソニア「大丈夫だよ。わたしは見た目より丈夫だから」
コハク「コハク、おとうさんのジャムが見たい」
ハンナ「手を洗ってきなよ。その間にテーブルをプルメリアの花とシダの葉で飾りつけて、ジャムをきれいにならべておくからさ」
*
なんだかタイミングの悪い日というのは、あるものです。
次にキッチンの電話が鳴ったのは、夕方の五時。そのときはまた、今朝とおなじことが起こりました。灯台荘の外では夕立がとおりすぎていくところで、ソニアはピアノを練習していて、ハンナはコハクの服にできた「かぎさき」を直すついでに、服の胸許に刺繍を入れていました。
電話が鳴ったのは、そのときでした。
ソニアが弾いていたのは交響曲のピアノアレンジで、まさに山場をむかえていた。その壮大な音量は、電話のベルをかき消してしまっていました。
ハンナ「ソニアねえさま!!」
またしても電話に気がつくのが遅れ、すんでのところで受話器をとり逃したハンナが、がまんできなくなってかんしゃく玉を破裂させました。
ハンナ「ねえさまがあんまり大きな音で弾くから、電話が聞こえなかった!ねえさまのせいなんだから!」
とつぜんの小爆発に、ソニアは驚いて妹を見上げました。
ソニア「ごめんね、ハンナちゃん。あしたからはリアちゃんにキーボードを借りて、タウンの集会所でお稽古することにする。弾くのをちょっとやめることができればいいんだけど、次の日曜日はライブだから、お稽古をおやすみしたくないの。弾いてないと不安なの」
ハンナ「うーーーーー……」
風船から空気が抜けるみたいに、ハンナの怒りがしぼんでいきました。ハンナ自身の主張はやつあたりにすぎないと気がついたのです。今朝なんて、ハンナのほうから「ねえさま、お稽古してきなよ」と言って、ピアノに触れるよう熱烈に勧めていたものでした。
ハンナ「ごめんなさい、あたしが悪かった」
ハンナは口をとがらせて、子どもみたいに言いました。
ソニア「ううん、悪くはないんだよ。気にかけなければいけないことがあるときに、わたし、大きすぎる音で弾いてたってわかったの。……お茶にしましょう?コハクちゃん、よかったらポットを出してもらえるかな」
コハク「…………!はーーーい!!」
【とうさまのジャム】を載せた全粒粉のクラッカーはすばらしくおいしかったけれど、お茶の時間は気まずいまま終わりました。
*
午後七時。
牝牛のマリーアンヌやニワトリたちに「おやすみなさい」を言いにいこうとしたコハクは、庭先のブランコにハンナがぶらさがっていることに気がつきました。
コハク「…………?おねえちゃん、なにしてるの」
ハンナ「反省してんの」
コハク「はんせいすると、ぶらさがるの?」
ハンナ「ソニアねえさまに怒りをぶつけてしまった」
コハク「コハクもすごく怒って、がまんできなくなっちゃうこと、ある」
ハンナ「うん……」
*
みんなが寝静まったころ、キッチンの電話が鳴りました。
ハンナはヘッドボードに頭をこすりつけるようにして、寝ぼけまなこの海坊主みたいに起きあがりました。どうせまた、受話器をとるまえに切れちゃうのかなぁ。それにしても、こんな時間に……。
ハンナ「まさか、親戚のだれかが冥界に旅立ったんじゃないだろうね……」
電話はまだ鳴っている。
ハンナはだんだん真顔になり、ガシリと受話器をつかみました。
ハンナ「もしもし?」
電話「…………」
相手の無言のなかにまじる浅い息づかいの音を、ハンナの耳は聴きのがしませんでした
ハンナ「もしもし?」
電話の相手「…………。ハンナねえさんなの?」
聞き覚えのある、ハイトーンの声が言いました。
つづきます!
*
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