はるかな楽屋口でのこと【幕間きみここ】

2024年11月20日水曜日

★幕間きみはここに

t f B! P L

こんにちはー。

今回の記事は「きみは、あしたもここにいる(幕間)」です。
忘れた頃に脈絡もなく更新される「お話」のシリーズでございます(平伏)

いま現在、このシリーズはハンナ・ミナキが主人公を務めております。行方不明だったはずの妹・エヴァーブルーからのとつぜんの呼び出しを受け、ハンナ自身が姉・ソニアとともにサンマイシューノを訪れる……というエピソードが進行中です。ただただ旅行してるだけなのに、びっくりするほど長い話になってしまいました。それでもなんとか、彼女たちはオールド・ソルト・ハウスにたどり着くことができました。


まずは、定型のご挨拶を。

このお話は、プレイ記録をお話仕立てにしたものではありません。こちらは、おもにシムたちのポーズ画像を挿絵にして、うちの世界独自の設定なども盛り込んでストーリーが展開していく「シムズ小説」とでも呼べそうなシロモノです。ぺこり。


そんなこんなで、星空シムズ年代記より「きみは、あしたもここにいる(幕間)」。
それでは、本日もまいりましょう!


第一の話(その10)




はるかな楽屋口でのこと


くるみ色の髪の用心棒に見送られ、エヴァーブルー、おとなふたり、緑のズボンのうさぎは店の門をくぐりました。

元埠頭施設のなかは、ひんやりしていました。シーリングファンがまわっていて、奥にビリヤード台がふたつならんでいます。手前におおきなソファーがある。テレビもジュークボックスもあるが、スイッチは切られています。店内に人間はひとりだけ。女主人が安楽を絵に描いたような顔をして、床を掃き清めています。




大柄な女主人「おお、お見えになったね」

店のあるじは手を止め、うなずきかけました。

エヴァーブルー「グウェンドレン・ナイチンゲールさん」

エヴァーブルーが、女主人のよこに立って紹介しました。

グウェンドレン「はじめまして、おふたりさん。無作法で申し訳ないけれど、握手は勘弁してくださいね。ほら見て。こんなほこりまみれの手だから!」

ソニアが品よくほほえんで「ソニア・ブレイクと申します」と、目礼しました。




一方のハンナは、慎重さを必要とする場面だと感じました。はからずも出会ってしまった人のまえで「ハンナ・ミナキ」と名乗っていいものか、判断するのは難しい。とはいえ、エヴァーブルーの顔つきからは、グウェンドレンに対する信頼が見てとれる。加えて、できることならどんな場所であっても、ほんとうの自分でありたいと願っています。




ハンナが本名をいうと、グウェンドレン・ナイチンゲールはうなずきました。

グウェンドレン「ソニアさん、ハンナさん、あんたがたをお見かけしたことがありますよ。四一八年のウィロークリークでした。その日はあんたがたのおかあさま、フリーダさまの五年ぶりの演奏会で、あたしは最後列のチケットを握りしめてそこにいた。音楽堂の出入口をさがしてウロウロしていると、防火扉が開いてあんたがたが出てきた。あたしが防火扉だと思ったのは、楽屋口の扉だったんですね」

グウェンドレン「おふたりにつづいてフリーダさまが顔を出したもんだから、びっくりして植え込みのうしろにかくれました。フリーダさまはいった。【じゃあふたりとも、開演六十分まえにまた来てちょうだいね】ステージのマイクをとおして聴くのとおなじ、ぶどう色の天鵞絨(びろうど)のようなお声でした」

ソニア「まあ」

ハンナ「あたしたちの母が歌手だったのを、ご存じでいらっしゃるのですか」

ハンナは目をまんまるにして、あけっぴろげにいいました。

フリーダ・ミナキの名前は、オアシス・スプリングスからコモレビ山まで響きわたっています。有名人、という言葉では到底足りない。しかしそれは、フリーダが【歴史的な英雄】の妹、ヘレン・デイライトの血を引いているからであり、フリーダ自身が「全世界にとどろくような」偉業をなしたからというわけでもない。それが、娘ハンナによる評価でした。




フリーダはそもそも、劇場やカフェでうたう職業的な歌手でした。

十五年まえまでの話であり、さいきんの彼女の仕事はスラニ諸島の山岳地帯に旅人のための宿泊所をこしらえたり、宿泊所のレストランを切り盛りしたり、レストランの貯水タンクを修理したり、巣から落ちた鳥のひなを助けたりすることです。ハンナはフリーダの歌が大好きですが「かつて、フリーダ・ミナキがうたっていた」というほんとうのことを、知らない人のほうが多いでしょう。

グウェンドレン「あたしが初めて買ったレコードは、フリーダさまの【ダリアの花束が死んでいる】でした」

ファンのあいだでとくべつな意味をもつ話題を持ちだし、女主人はにやりと笑いました。ハンナとソニアは、顔を見あわせました。

ハンナ「それはすごい。あれってフリーダが誕生日の記念に作ったレコードで、この宇宙に五十枚しかないんですよね。誕生日なのにタイトルが【死んでいる】だし、どうせ売れないだろうと思った、というのが理由だったらしい。当時三つだったあたしがいうのは小生意気で自分をひっぱたきたくなるけれど、母にかわってお礼を申しあげます。四一八年の楽屋口で、母はホワイトガゼル社のジャージを着てましたね。楽屋着だったんです。胸許に黄土色の縫いとりでガゼルのロゴが入ってました」

グウェンドレン「そうだった!」

女主人は、たとえば暖炉ではぜる薪を見るように目をほそめ、彼女のまえにあらわれた過去の一場面をながめていました。その様子をじっと見つめるうちに、ハンナの顔つきにもほんとうの信頼があふれてきました。

エヴァーブルー「ちきしょう。あたしもその演奏会を見たかったよ」

子どもの姿をした二十一歳の三女は、真上を見上げるみたいにして会話に加わりました。ソニアがほおを赤らめ、言葉づかいをたしなめました。

グウェンドレン「そういやエヴァーブルーは、あの楽屋口にいなかったねぇ」

エヴァーブルー「そりゃあそうだよ。そのとき、あたしはまだブレイク家の子だった。あたしがミナキ家に移ってきたのは、四二〇年だからね。さいしょは馴染まなかったけれど、いまじゃすっかりミナキ家の女になったと思う」




エヴァーブルーは自信がある様子でしたが、ハンナとしては、口をはさまないわけにはいかなくなりました。

ハンナ「ちがうよブルー、あんたはミナキの女になったんじゃない。あんたはブレイク家の子としてのパートとミナキ家の子としてのパートを、いまでも両方持っている。どちらかを棄てる必要なんてないんだ」

エヴァーブルー「ああ、もちろんそうだね」

ふたりの妹が丁々発止とやりあうので、ソニアは楽しそうでした。ハンナやエヴァーブルーの「思ったことをすぐさま確実に言葉にする」という得意技は、控えめでおっとりしたソニアが持ちあわせていないものです。

ハンナ「ところで」

うえの妹が振りかえり、この場にいるさいごのひとりを見ました。




ハンナ「あたしがこのことを気にしてるのが、失礼じゃないといいって願ってます。陽は落ちたとはいえ夏のサンマイシューノで、あなたがもこもこを脱がないでいるうちに茹でダコになってしまうんじゃないかって、頭のすみで考えてた。素顔を出すのがいやなら、それでいいんだけれど」

緑のズボンをはいたうさぎがうなずき、エヴァーブルーを手招きしました。

エヴァーブルー「ごめんごめん!」

エヴァーブルーはとびあがり、うさぎのうしろにまわって、背中のファスナーを下ろしてやろうとしました。ブルーがせっかちだったため、金具はもこもこの毛並みを巻きこんで引っかかった。「ちっきしょう」エヴァーブルーがふたたびさけび、交代したハンナが用心深く、いちばん下まで下ろしました。

とんぼが羽化するみたいに、うさぎの背中がふたつに割れ、人間の姿があらわれました。人間は天井の吊るし照明を見上げ、立ちくらみがしたみたいに頭を押さえました。




人間?の男「世界はいつも、突き刺すように鮮やかだ」

エヴァーブルー「この人の名は、ヘクター・プラチナム。ソニアねえさん、ハンナねえさん、ふたりをサンマイシューノに呼んだのは、どうしても彼に会わせたかったから。今夜はどうか、ヘクターと話をしてほしい」

エヴァーブルーが熱をこめていいました。



つづきます!

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