今回の記事は「きみは、あしたもここにいる(幕間)」です。
忘れた頃に脈絡なく更新され、もはや不定期更新レベルとなっている「謎のお話」のシリーズでございます。前回の更新から、うっかり2か月半くらい過ぎてしまいました……。
いつも使っているセーブデータ(※お話挿絵の撮影用でもある)が瀕死になってしまい、またもや「うちの子全員で、新規セーブにお引越し」をしていて、なかなか撮影環境が整わなかった……というのが遅れに遅れた理由なのですが、お陰様で今回のお引越しキャラバンも、うまくいきました。お話挿絵として必要だった最後の1枚「スパイス・フェスティバルの写真」も、昨夜撮影することができました。
そんなこんなで、ふたたび「幕間きみここ」の話を進められるようになりました。今回のお引越しキャラバンの顛末も、そのうち当ブログの記事としてまとめておきたいなー、と思っておりますが……とりあえず「幕間きみここ」の掲載を先にしたいと思います。
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まずは、定型のご挨拶を。
このお話は、プレイ記録をお話仕立てにしたものではありません。こちらは、おもにシムたちのポーズ画像を挿絵にして、うちの世界独自の設定なども盛り込んでストーリーが展開していく「シムズ小説」とでも呼べそうなシロモノです。
また、今回のお話のタイトルが「オールド・ソルト・ハウスの秘密のこと」という、若干シムズプレイヤーさんの興味を引きつけそうな?雰囲気になっておりますが、これはシムズ4のゲーム内における、ほんとうの「オールド・ソルト・ハウスの秘密」ではないのです。うちの世界における独自設定の「秘密」の話です。シムズ4のプレイや攻略でお役に立つ話題はなんっっにもございませんので、どうぞご注意ください。ぺこり……。
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そんなこんなで、星空シムズ年代記より「きみは、あしたもここにいる(幕間)」。
今回は「第一の話、その13節」です。
それでは、本日もまいりましょう!
第一の話(その13)
オールド・ソルト・ハウスの秘密のこと
???「おい、あんたたち」
ぶっきらぼうに声をかけたものがいて、話は中断されました。バーのおもてに立っていたはずの用心棒が、戸口に上半身をつっこむようにしてハンナたちを見ていました。
用心棒「悪いけど、早いとこ階下(した)に消えてくれないか。例の手下たちがうろつきはじめてる。窓から姿を見られでもしてみろ。おもしろくないぞ」
エヴァーブルー「なんてこった!」
エヴァーブルーが我に返り、額をぱちんとたたきました。
このときソニアは、エヴァーブルーが「瞬間移動」していることに気がついて、あっけにとられました。となりでぶらぶらしていたはずの金髪の少女は、いつのまにかすみの壁に背を預け、老芸術家のようにあごを撫でながら、ヘクターとハンナを観察していたのです。
エヴァーブルー「まったく、おっしゃる通りだよ」
ちいさな身体の元気者は、早口に話しています。
エヴァーブルー「あいつらときたら、油断もすきもないんだから。ヘクター、奥へ行って!レディ・グウェンドレン、あとをお願いしてもいいかな」
グウェンドレン「足許に気をつけな。お菓子が必要なら、自分で食料庫から出しておくれ」
グウェンドレンがポケットから真鍮製の鍵を出し、カウンターのうえをすべらせてよこしました。
エヴァーブルー「お茶かジュースも出していいでしょ?」
元気者は抜かりなくいいました。店のあるじの目つきで、許可が下りたとわかりました。
懐に鍵を入れたエヴァーブルーが手招きし、ハンナとソニアは母親のあとを追う子ねこのようについていきました。ヘクターはカウンターのうしろに進み、床にとりつけられた上げぶたを引き起こしています。
エヴァーブルー「ヘクターとあたしの部屋は、地面のしたにあるんだ」
ソニアとハンナの妹は、とっておきの秘密をうちあけるようにいいました。
ハンナ「これが要る?」
ハンナはキャビネットの四本脚のあいだに、縄ばしごがまるまっているのを見つけました。ひとまとめに巻きとって抱えあげる手際は、なかなかのものでした。
はたして、縄ばしごは床の戸口から投げ落とされました。
ヘクター「どうぞ、先に行きたいんだろう」
と、尋ねたときにはもう、エヴァーブルーは口のなかに飛びこんでいて、揺れるはしごをすいすいと下りていくところでした。
縄ばしごのしたには、心躍る光景が広がっていました。
赤い煉瓦の壁にかこまれた、小学校の教室ふたつ分くらいの空間です。足のしたも煉瓦の道のようになっていて、左手にむかってなだらかに低くなっていく。いちばん左のどん詰まりにアーチ形の穴がありました。そこから水路が引きこまれ、ちんまりとした貯水池になっています。穴は外の世界とつながっているらしい。赤や黄色の光……サンマイシューノのネオンサインでしょう……が差しこみ、水面が色ガラスのように揺れていました。
貯水池のほとりにはラウンジチェアとテーブルが据えられ、まるで「五分まえまで、だれかが休憩してたんですよ」とでもいうように、新聞が広げられています。
首をめぐらせて反対側を見ると、右のどん詰まりには、これまたアーチ形のドアがついている。「注意:この先、段差。グウェンドレンより」との貼り紙があり、出入口のよこに雪かき用のスコップ、りんごの空き箱、手押し車が置かれています。
ハンナ「車が走り抜ける音がする。まるで遠い幻影みたいに」
敏感な耳をもつハンナが、ぽつりといいました。
エヴァーブルー「うん、スパイス・マーケットの真下だからね」
エヴァーブルー「ここはね、あたしとヘクターの屋内庭園だよ。おっと、あたしらは暗がりに目が慣れてるけれど、ねえさんたちにはランプが必要か。あとはポテトチップスと飲みものと……待って。調達してくる」
ヘクター「付き合おうか」
ハンナ「あたしもやる」
ソニア「いっしょに行ってもいい?」
三人が同時にいいました。
ちいさな三女が、首をよこに振りました。
エヴァーブルー「いいや、みんなはここで待っててほしい。まあ、親睦でも深めてて」
そして右のドアのところに行き、りんごの空き箱を胸に抱えました。
ヘクター「そいつに入れて運ぶのかい、お菓子と飲みものを」
エヴァーブルーはうなずきました。
ヘクター「持てる?きみの腕のちからで」
エヴァーブルーはうなずきました。
ヘクター「助けが必要なら、ハーモニカを吹いてくれ。すぐに行くから」
エヴァーブルー「心に留めとく。で、ヘクターはなにを飲むのさ」
ヘクター「ライムの炭酸水」
といって、ドアを開けてやると、木箱で両手が塞がっているエヴァーブルーは蜘蛛のようながに股で、真っ暗闇の奥へ進んでいきました。
まるくあどけない金色の頭が見えなくなってもまだ、ハンナはまだ戸口のほうを向いていました。
ハンナ「物語のような場所」
熱がある人みたいにほっぺたに手をあて、振りかえって笑いました。
ハンナ「物語のような夜」
人形兵器の若者はポケットに両手を入れたまま、肩をすくめてほほえみました。
ヘクター「もどってくるのに数分かかるでしょう。わたしを質問攻めにしてもいいんですよ。エヴァーブルー、あの人、大切なことはなんにも説明しないで行ってしまった。せめて、あの人自身がどうしておちびさんの姿をしてるかってことくらい、話したらいいのに」
ハンナ「いいの。ブルーが帰ってきて、みんな揃ってから訊きます。あぁ、でもひとつだけ。エヴァーブルーはもうずっと、便りをよこしませんでした。ブルーは何十週間もああやって、あなたのとなりで暴れまわっていたんですか」
ヘクター「一週間のうち五日は、まぁそんな感じです。わたしの気持ちも若返る。この錆びついた身体に血がかよい、少年にもどったのではないかと思うことさえあります」
ハンナ「いま、あたしが考えたことを話してもいい?あなたがものごとの明るい面を見る方でよかったって、そう思いました」
ヘクター「ははは!」
ソニアは不思議な生きものを見るような顔をして、ふたりのやりとりを聴いていました。人形兵器には、人間のような心臓がない。心を持っていない。ヘクター自身が話したことです。けれど、笑っておしゃべりしている彼を見ると、とてもそうは見えませんでした。
ソニア(心について考えるとき、決まってわからなくなる。わたしは、ヘクターさんの内側に心を見る。ハンナちゃんもそうだろう。けれど、外側から見て心があるように見えるのと、ほんとうに心があるのでは、天と地ほどの差があると思う。
道ばたの小石にも心がある。そんなふうに想像の翼を広げることはできるけれど、わたしには実際、石が心を持っているとは思えない。ふたつのちがいを、わたしたちはどのように感じとるのだろう。彫刻家のミラ・ミランダは自叙伝に、石には生命の源泉が宿ってる、石も感情を持ってると書いてたっけ……)
よこを見ると、ハンナは煉瓦の壁に寄りかかり、自分だけの夢想の旅に出ているようでした。当分口を開くことはなさそうなので、ソニアには考える時間がありました。答えの出ない大きな謎がメリーゴーラウンドのように回転していて、そっと目を閉じました。
*
つづきます!
Thanks to all MOD/CC creators!
And I love Sims!
あとがき
今回のいちばんの難敵は、まえに述べたとおり「新規データへのお引越しをしなければならなかった」でした。シムの写真を撮るだけだと……
「新規データにシムをお引越し」
「撮影スタジオ(撮影用のライティングがセットしてある部屋)を、マイライブラリから新規データに下ろす」
「写真撮る」
これでおしまい!
と、なるのですが……
問題は(これも冒頭で述べましたとおり)スパイス・フェスティバルの写真です。うちの世界は新規データにお引越しする場合、プレイヤーの脳みその混乱を避けるために「かならず、春から開始する」「ひとつの季節は28日」という決まりを設けております。
この状態で新規データをスタートすると……さいしょのスパイス・フェスティバルまで2週間近くかかるんですよねぇ。ふだんプレイしていて意識したことがなかったのですが、さいしょのスパフェスは、第2週の金曜日でした。妖精パックを遊んだりしながら、延々日付を進めました。
とりあえず「新規データではじめると、スパフェスは思ったより遠いんだぞ!」ということを学んだので、シムズプレイヤーとしてビミョーに経験を積むことができた……のかもしれません。ちゃんちゃん。
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お読みいただき、ありがとうございました!
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