本日は、新年最初の「お話」更新になります。今年もまた(転んだりつまずいたりしながらも)はりきって更新してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします!
さて!
それでは「グリフィンと欠落の姉妹」編……前回のお話を振り返りましょう。
グリフィンの回想は続き、過去の時代の物語は「重要な局面」を迎えています。
ついにダンサーとして劇場に立つことになったイナ・ポートランド。しかし、彼女はその裏で【舞台に立たせてもらう代わりに、興行主の愛人になる】という取引をしていました……
それでは、本日もまいりましょう!
(最終加筆修正:2023年10月9日)
*
イナ「あたし、ワットさんのものになるって血判を捺したのに、こんなところで男の子と一緒にいるのがバレたら、耳を切り落とされちゃうからね。はは!」
グリフィン「…………」
イナ「どうしたの、グリフィン。コワい顔して。……じゃ、あたしはもう行くね?十一時からお稽古なんだ。またね!」
グリフィン「…………!」
イナ「…………?」
イナ「……変なの。さっき、あたしがあんたに触ったら、あんたはあんなに怒ったのに」
グリフィン「危険な生きかただ」
イナ「危険がなによ。あたしは冒険の旅に出て、なりたい自分になるんだ。きっかけはどうであれ、ここから本物のダンサーになるんだよ!」
グリフィン「あなたはおれを助け、おれの弟妹(きょうだい)を助けてくれた。そんなあなたが自分を売って、破滅していくのは……だめだ」
イナ「破滅なんかしない。これは成功への第一歩だよ。……グリフィン、あんたはわかってくれると思ったのに。故郷を棄てて旅に出たあんたなら。それほどまでに揺るがぬ心を持ってるあんたなら!あたしにはただ、すべてを棄ててでも手に入れたい夢があるだけなんだよ!」
グリフィン「傷つくだけではすまない!あなたの選択は……あなたを永劫苦しめることになる!」
イナ「うるさい!あたしは別の人間になる。日がな一日街をウロウロしているだけの、ただの娘じゃ終われないんだよ!」
グリフィン「ただの娘じゃない。あなたはおれを拾った!おれが死ななくて済むようにしてくれた!」
奇想天外な不意打ちでもくらったかのように、イナの目がまるくなりました。
彼女はけたたましく笑いだしました。
グリフィン「…………。なにがおかしい」
イナ「ふ、はははは!……ごめんねグリフィン、怒鳴ったりして。あんたが心配してくれてるのはわかってる。でも、問題ないんだよ?初めて話すと思うけど、あたしはもともと、窮屈でご立派な実家からとびだしてきたの。いまのあたしは、なにも持ってない。失うものなんて、なにもない。……あたしはここからひとつずつ、人生のお城を築くんだよ」
グリフィン「ちがう、そうじゃない……!」
頭を殴られたかのような衝撃が、だしぬけにグリフィンを襲いました。
実際に殴られたのかと思ったほどでした。
脊椎に鉛を流しこまれたかのように、全身が二倍の重さになる。関節が悲鳴をあげて軋みだし、グリフィン自身の体重を支えられなくなる。ぐんにゃりとしたものに脚をつかまれ、地面に引きずり込まれるかのような感覚がきて、彼は頭を押さえました。
グリフィン(こんなときに……!)
前触れなく、身体の自由が利かなくなる。
グリフィン特有の魔法疾患です。
生まれつき彼に備わっている【呪われた魔力】が彼自身を傷めていることによって起こる、けっして癒えない病でした。
イナ「グリフィン、あんたの友情には感謝してる」
グリフィンは表情を変えずに異変に耐えていたので、イナは彼を襲った現象に気がついていません。彼女は自分の袖にもう片方の手を入れて、ブレスレットをはずしました。
イナ「このブレスレットを渡しておくね」
イナ「気に入ってたんだけど、あんたという友だちができた記念に、あたしのお気に入りをあんたにあげるの。あ、でも、あんたの手首には小さいかな?サイズが合わなかったら、妹さんにあげてちょうだい。妹さんは、あたしとあんたが仲よくなるキッカケだった」
動かない少年の手を取って、少女は形見を握らせました。
イナ「さよなら、グリフィン。よい人生を。いつかどこかの劇場で、あたしのポスターを見かける日を楽しみにしててね!」
グリフィン(だめだ……そちらに行っては……)
凝りかたまった彼の喉が、少女の名を呼ぶことはありませんでした。
雪景色がはじまったサンマイシューノで、グリフィンは永遠に立ちつくしていました。
*
つづきます!
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Thanks to all MOD/CC creators!
And I love Sims!
(ポーズは、自作です……)
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