本日は、また「グリフィンと欠落の姉妹編」ですー。
七日間の空白を経て、再びイナとの面会に臨んだグリフィン。イナが心を取り戻してから初めてとなる対面は、思いのほか穏やかなものでした。ふたりは互いに、数年の別離を感じさせない距離感で接します。しかし時は確かに流れ、グリフィンもイナも、既に子供時代とは別の人間になっているのかもしれません……。
それでは、本日もまいりましょう!
*
イナ「……それで、本当に訊きたいことは何?」
グリフィン「?」
イナ「知ってるよ。あんたも、このシセツの職員だか関係者だかなんでしょ?あたしに近づいて、何か情報を引き出せ……エライ人に、そう言われたんじゃないの?」
友人同士だった時代に戻り、「ごく普通に会話している」ような気がしたのは錯覚で……イナの扉はまた、急速に閉じてゆきました。
グリフィン「…………。否定はしない。おれはこの施設の者だ。あなたに会うにも、行動を監視される」
持ち前の「ばか正直」を発揮して、グリフィンは自分というものを明らかにしました。
イナ「素直なんだね。相変わらず」
イナの呆れ顔には「苦々しさ」というのを超えて、なんだか憎しみのようなものが混じっていました。
グリフィン「だがおれは今日、あなたから何かを聞き出すために、この部屋を訪れた訳じゃない。訊きたいことはもう消え失せた。おれはただ、あなたの無事を確かめたかった」
イナ「……許可するんじゃなかった」
グリフィン「…………」
イナ「気がつかなかったの?あんたはそんなに頭がいいのに。……あんたの面会申請が却下され続けたのは、エライ人からの面会指示を、あたしが猛然とハネつけていたからだよ。どうあっても、あたしがあんたに会いたくなかったからだよ……!」
声はだんだん大きくなり、またぞろイナのなかで、無尽蔵な怒りが膨れ上がってきました。グリフィンにとっては、唐突で理不尽な怒りでした。
グリフィン「……そうか」
感情を殺し、ただ受け止めるより他に、彼には方法がありません。それがまた、火に油を注いでしまうようでした。
グリフィン「…………」
グリフィンのような冷静な若者であっても、この文脈で「あんたはいい子だ」と評されるのは、胸をえぐられるものがありました。【あなたにおれの何がわかる?】そう言い返しても良い局面かもしれません。
しかし彼は、神経が高ぶるとかえって研ぎ澄まされ、氷のような落ち着きを見せるのでした。彼はイナの目を、唇を、金糸のような髪を見つめました。そして、思ったことをそのまま言いました。
グリフィン「もしおれがあなただったら、やはりおれに会いたくないだろうと思う。それはわかる。だが、あなたは変わってない。今も野良犬のように自由で、嵐のように強い」
率直な親愛と敬意をぶつけられ、イナは無垢な少女のようにひるみました。
グリフィン「待て、考える」
グリフィンはふいにそう言うと、隅にあった椅子を引き寄せて腰かけました。
グリフィン「今日の面会の目的は果たしたが、この機会をムダにしたくない。おれが今、あなたを前に何をするべきか考えてみる」
脈絡のないグリフィンの行動が、イナの毒気を抜いたようでした。グリフィンはまた、小首を傾げて考えていました。
グリフィン「わかった」
イナ「三秒しか待ってないけど」
彼は頷いて、
グリフィン「この状況下で、おれがあなたのために出来ることは多くないと思う。この施設のなかであなたが不当に扱われないよう訴えて、上に噛みつき続けるくらいがせいぜいだ。少しでも問題が起きた場合、あらゆる手を尽くして告発する」
グリフィン「だが、別の手立てもある。あなたが望むなら、あなたが【研究者たち】の尋問に答えてするような話を、おれに聞かせても構わない。あなたが今まで何をしてきたかとか、どこかであなたの身体が縮む原因に触れた・あるいは触れなかったかとか、そういうことを」
グリフィン「そうすれば、おれがあなたの話を上に報告する。尋問室の硬い椅子に長時間座らされるより、おれのほうがまだマシだ、とあなたが感じるならの話だが」
イナ「……どっちもヒドさでは大差ないね。あんたに出来ることは、何もないよ」
イナ・ポートランドはひっそりと、酷薄な笑みを浮かべました……
つづきます!
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今回お借りした主な作品
SS14~15枚目でムーアが持っている「タバコ」は、
よりお借りしました。いつもありがとうございます。
Thanks to all MOD/CC creators!
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