本日は、また【グリフィンと欠落の姉妹編】ですー。
グリフィン・トワイライトは異常な根気強さを発揮して、【幼児の姿になってしまった旧友】イナの息子・トリーの行方を調べようとしていました。彼はまた、異常な量の資料を携えて、調査結果を報告するためにイナの許を訪れています。
彼が彼女に確認したいのは「イナが最後に息子と別れたガソリンスタンドは、どこだったのか?」その一点です。そして……?
それでは、本日もまいりましょう!
(今回、ちょっと長いです……!)
*
小さなイナは、促されて渋々、といった感じで書類に目を通しました。
そして……、その目の色が変わりました。
イナ「…………!これ」
グリフィンは余計な反応を見せず、彼女が決定的なことを口にするまで待っています。
イナ「この、うしろに写ってる風見鶏に見覚えがある。緑のペンキで塗られてて、それがちょっと剥げてて、四分の一くらいはこの世の終わりみたいに錆びていた」
グリフィン「他には」
イナ「こっちの、ふたつ並んだ電話ボックスも憶えてる。ここから電話をかけて、誰かに助けを求めることが出来たらどんなにいいだろう……って、夢みたいなこと思ってた。でもあたし、シムオリオンを持ってなかったワケだけど」
グリフィン「間違いないか、この場所で」
低く、念を押して。
イナは自分のほっぺに手を当てて、吐息のようなものを洩らしました。
イナ「あぁ、間違いない。ワットさんがあたしを車から降ろしたのは、このガソリンスタンドだよ」
グリフィン「わかった」
穏やかな首肯き。彼自身の調査が実を結んだにもかかわらず、グリフィンは一見、格別な感動を見せませんでした。
イナ「……すごい。グリフィン、すごいよ。手がかりなんて何もないと思ってたのに。指先から零れ落ちて風に消えた砂を、もう一度たぐりよせるような話だと思ってた。それなのにたった一回で【どこだかわからない場所】を探し当てるなんて」
イナは素直に尊敬をあらわします。
グリフィン「まだだ。あなたはここで、車を降りた。車はどちらの方向から来て、どちらに消えた?」
イナ「えっと……、こっちだね。この写真で言うと、右から来て左へ。ガソリンスタンドに入る直前に、このザリガニの看板がこんな感じの角度で見えたから」
グリフィン「だとすると、ワット氏は東に走り去ったことになる。このガソリンスタンドから東南に六キロ行ったところに宿場がある。そこで聴き込みをするのが現実的だ」
彼はイナの手から書類を取り上げると、それを他の書類と一緒にして、トランクに収め始めました。大量の印刷用紙をぴっちり揃えて、それを横向きにしたり縦にしたり、パズルのように組み合わせて詰め込んでゆくのです。
彼の整理術は、意外なほどに鮮やかでした。
イナ「……え!」
ぼんやり見ていたイナは、彼が帰り支度をしているのだと思い至ってすっとんきょうな声を上げました。
イナ「あんたもしかして、これから聴き込みに行くの!?トリーを捜してと頼んだあたしが言えた話じゃないけど、ちょっとオーバーワークじゃない……!?」
グリフィン「早めに動いたほうがいい。そして、あなたの協力が要る。トリーの似顔絵を描いてくれ。現地で人捜しをするとなると、どうやっても人相書きが必要だ」
トランクの底のほうからクレヨンを出して、彼はイナの前に並べました。
イナ「……う。あんたの言うことはいちいちもっともだけど、あたしは絵が苦手だよ?こんなことなら、何があっても携帯電話を肌身離さず身につけておくんだった。我を忘れるような別れだったから、電話もワットさんの車に置いてきちゃったんだよ。トリーの写真を壁紙にしてたのに」
グリフィン「過ぎたことを悔やんでも始まらない。下手な絵でも役立つ可能性は充分ある」
イナ「あーもう!本当に情緒がない男だね……!」
イナは苦労して、トリーの似顔絵を描きました。
イナ「茶色の、巻き毛で……巻き毛ってどうやって描くんだろ。クレヨンでグルグルって描けばいい?……目は、ぱっちりとまるくて……ん、ちょっと違うな……」
イナ「年齢の割に、身体が大きい男の子なの。ぽっちゃりして可愛いんだよ?……あれ?これじゃ戦闘ロボみたいに見えるな……」
グリフィン「…………」
イナ・ポートランド画伯が完成させた作品を、グリフィンはたっぷり三十秒見つめました。彼の感想は、次のようなものでした。
グリフィン「…………。だいたいわかった」
イナ「いいんだよ、グリフィン。お世辞を言わなくたって。その絵が二歳の男の子を描いたものだってわかる人はいないよ」
イナは横腹でも痛むような顔をして呻きます。
グリフィン「心にもないことを言ったワケじゃない。本当に、だいたいわかった。ありがとう。じゃあ、この絵を借りておれは行く」
イナ「ん……。あんたがそれでいいって言うのなら、あたしもまぁ、文句はないよ……。引き続き、ヨロシクオネガイシマス……」
珍しくしおらしいことを言って、イナは優雅なお辞儀をしました。古い伝説に登場する舞姫が勇者に捧げるお辞儀、そのようにも見えました。
グリフィン「明日、また来る」
イナ「あ、グリフィン!あたしのために骨を折ってくれるのは嬉しいけど、夜はちゃんと寝るんだよ!自分じゃ気づいてないと思うけど、あんた目の下に【夜の化身が撫でたみたいな】ひどいクマがある。太陽の下を歩くなら、ちゃんと水分もとるんだよ!」
こどもの姿をした女性は、心から心配した様子で【お姉さんのようなこと】を言いました。
ようやく、グリフィンの表情が和らぎました。
グリフィン「……わかった。そうする」
*
病室を辞して、機密区画から帰ってゆくグリフィンの前に、ひとりの男が現れました。
???「よう」
グリフィン「……メルヴィル・ムーア」
時にグリフィンと共に働き、時に真意不明の行動をとる同僚です。
ムーア「まったく、見事だよ。大海のなかからひと粒の真珠を探し出すことさえ出来る。おまえの粘り強さと、諦めの悪さは見事だ」
グリフィン「おれの監視は必要ないだろう。ここ(機密区画)では、おれの行動はすべてカメラで記録されてる」
ムーア「そうなんだけど、おれとしても仕事してるフリはしなきゃならんからな。……あれ。この話、前にもしたっけか?」
グリフィン「忘れた。……通してくれ」
ムーア「あのお嬢ちゃんが乗ってた車」
グリフィン「…………?」
ムーア「車のナンバーをお嬢ちゃんが憶えてりゃ、一発で行方を割り出せたのにな。軍の権限で各地の街道(ハイウェイ)のカメラにアクセスすりゃ、ナンバーなんてたちまち見分けられる」
グリフィン「だが、彼女は憶えていない。ムダな議論だ。彼女の元夫が運転していた車は【途中で調達した】盗難車だったと、彼女自身が証言している」
ムーア「……だな。そういう時のために、別の手管もある。あのお嬢ちゃんを試験運用中の記憶解析装置にかけりゃ、彼女が視たナンバーを映像としてとりだせるかもしれない」
グリフィン「あの装置が被験者の脳に負担をかけ過ぎるという話は有名だ。軍の協力には感謝するが、あの装置を彼女に使うことは認めない」
ムーア「はっ。おまえが認めないと吼えたところで、どうなるワケでもねぇだろうよ、小さなヒーロー。ここじゃおまえもおれと同じ、鎖に繋がれた飼い犬だ。わびしいもんだろ?」
グリフィン「…………」
ムーア「……ま、せいぜいあの子を守り抜きな。おれは別に、どう転んでも構わない」
グリフィン「通せ」
ムーア「あいよ」
ふたりはすれ違い……、
グリフィンはいっとき、陽のあたる世界に戻ってゆきました……。
つづきます!
*
グリフィンが持っている書類(SS1~3枚目)
グリフィンが持っているトランク(SS5枚目・11枚目)
トランクを持つグリフィンのポーズ(SS11枚目)
立っているグリフィンのポーズ(SS14枚目)
以上の作品は、
よりお借りしております。
イナが描いている「おえかきセット」は、
よりお借りしております。
(ファンクショナルなCCです)
皆様、いつもありがとうございます。
(その他のポーズは、自前です……)
Thanks to all MOD/CC creators!
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