少し間があいてしまいました。
本日は、また「グリフィンと欠落の姉妹編」ですー。
事態は風雲急を告げます。軍施設の病室に囚われた女性……今は幼児の姿になってしまったイナ・ポートランドの許に【フードをかぶった謎の男】が現れます。彼はイナに、魔法の鏡を通り抜けて外の世界に脱出することを提案しました。この男、読者様とプレイヤーには見覚えのある人物なのですが……?
行方不明になっている息子・トリーを捜したい一心で、イナは鏡に飛び込みます。一方、彼女を支え、励まし続けてきたグリフィンの身にも、異変が起こっていました……。
それでは、本日もまいりましょう!
(今回、地の文がとても多いです。読みにくかったらすみません……!)
*
グリフィン「何かがカギをこじ開けた」
ロイヤル「は?」
グリフィン「わからない。だが呼ばれた。カギをこじ開け、悪意あるモノがやってきた」
兄が何を言っているのかわからず、ロイヤルは鼻にしわを寄せました。そして、兄が目を押さえていることに気づき、けげんそうに近づいてきました。
ロイヤルは兄の腕をつかんで、顔の前からのけようとしました。グリフィンの腕は鉄の鉤棒になってしまったかのようにヒジを固く曲げたまま、目許をかばい続けています。
それでもロイヤルがグイと引っぱると、兄は手を下ろしました。
ロイヤル「…………!グリフィン、ほっぺたが結晶化してる」
ロイヤルがぞっとした声で言いました。
グリフィン「?」
微動だにせず、グリフィンが目つきで問い返しました。
いいえ、たぶん兄としては【問い返したつもり】だったのでしょう。しかし彼は今、近年稀に見る鋭い眼光を投げかけていて、物を問う眼差しというよりも、視線で弟を射殺そうとしているみたいに見えました。
ロイヤル「……鏡見てみろよ。すごいことになってる。痛くないのか?」
異様な様子になっている兄を前にして、ロイヤルは明らかに恐れを感じています。
グリフィンの目のまわりにある【青いアザ】は、彼自身の強い魔力が浮き上がったものです。それが今、範囲を広げ、チラチラと煌めいている……こんなことは初めてです。ロイヤルは兄の魂から、気分が悪くなるほど濃厚な魔力の匂いを感じました。それはほとんど悪臭と言ってよかった。
鏡、ともう一度言って、ロイヤルは兄を洗面所のほうへ押しやりました。グリフィンは弟を払いのけ、
グリフィン「なんともない。おれのことはいい。どこで呼んでる、もう少しで視(み)える」
ロイヤル「何が」
グリフィンは答えず、緊張して四方に目を走らせています。
ロイヤル「グリフィン」
ロイヤルの顔には、恐れを通り越して小動物じみた怯えの色がありました。兄が何か魔力のようなものを感じて揺り起こされたことは確かでした。
しかし、兄が第六感によって何かしらを感知した際にこれほど鋭敏な表情を見せるのは、何年ぶりのことでしょう。確かな危険が迫っているはずなのに、ロイヤル自身は何の異変も感じられない……その事実が、ロイヤルを更に怯えさせました。
グリフィン「…………」
心を糸のようにより合わせ、グリフィンは目に見えぬものを手繰ろうとしています。二秒半で、彼は答えを掴みました。
グリフィン「……時間がない。飛び道具が要る。ロイヤル」
ロイヤル「なんだよ」
グリフィン「力を借りる。おまえを巻き込む気はなかったが、いまはおまえの能力が必要だ」
*
【魔法の鏡】に飛び込んだイナは、気がつくと闇のなかを歩いていました。
イナ(…………。あれ?あたし、どうして歩いているんだろ)
ハタと気づいて、彼女は足を止めようとしました。すると、チリリと踵に痛みが走りました。
イナ「…………!何!?」
チリ、チリ、チリリ。
その痛みは「歩みを止めてはならない」と……「歩み続ければ、痛みは消える」と、そう教えています。仕方なく、イナは再び歩き始めました。
イナ(……どうして歩いているんだっけ。そうだ、トリー……。あたしトリーを捜すために、あの奇妙な男の鏡に飛び込んだんだ)
イナはあたりを見渡して、
イナ「ということは、ここは何。消えてしまったトリーが辿り着いた場所?」
???「いいや、違う」
どこかで聴いた声が告げ、次の瞬間、世界が激しく明滅しました。まるで、真夜中に部屋の照明を、誰かがすばやくオン・オフしているような感じでした。
イナ「…………!!」
白と黒が入れ替わる世界のなかで、イナはとっさに顔をかばい……
いつのまにか、彼女は高い壁に囲まれて、ぽつりと立っていました。
イナ「…………。どこ、ここ?」
彼女の問いに答える者は、ありませんでした……。
つづきます!
*
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