忘れた頃に更新される、弊ブログでございます……(平伏)
そして、今回はまた「グリフィンと欠落の姉妹編」ですー。
グリフィン・トワイライトは自宅にて「何かに呼ばれて」目を醒ましました。なんらかの危機が迫っていることを察知した彼は、弟・ロイヤルが持つ特別な魔法陣を制圧(ジャック)して、旧友・イナの許へ瞬間移動を試みます。そして……
今回はその後の彼らの動向を、ロイヤルの目を通して見てみます。
それでは、本日もまいりましょう!
【追記】
兄弟の個性に合わせ、一部の表現を修正しました。
また、セリフを複数追加しております。
(2021年10月29日)
【追記・2】
挿絵SSを1枚追加しました。
(2021年11月15日)
*
ロイヤル・バーンウッドは転移魔法の発動に際し【お定まりの現象】を感じました。つまり、彼がこの魔法で移動しようとするたびに耳を打つあの音……空気をひっぱたくような「ばちんっ!」という音を聴いたのです。
加えて今回は、背中の紋章がピリピリと痺れるのを感じます。流れ込んでくるグリフィンの魔力が、強大すぎるのです。
ロイヤル「!」
瞬間、ふわりと身体が浮き上がったと思ったら、ジェットコースターに乗った時のように急速に落下していく感覚があり……
ロイヤル「!?」
ロイヤル「……子どもだ!」
ロイヤルの足のはるか下、闇の波間を横切っていく小さな女の子の姿が見えました。女の子は旋回しながら永遠の沼底へと吸い込まれ、見る間に豆粒のように小さくなっていきます。
それでも、金髪をはためかせたその面影は、ロイヤルの網膜に縫いとめられました。
ロイヤル(……誰だ?どこかで会ったことがある……?)
グリフィン「ロイヤル下を向くな、バランスが取れない!それはただのカゲだ!」
ロイヤル「あ、ああ!」
ロイヤルの返事が終わらないうちに、再び「ばちんっ!」という音が響きました。気がつくと……
ロイヤル「…………。ここは」
ジープや何棟もの宿舎、そして軍の紋章が見える場所。
ロイヤルにとっては見慣れぬ場所でしたが、ここが「どこ」なのかは明らかでした。
ロイヤル「……基地。ストレンジャービルのはずれに転移(ジャンプ)したのか……?」
ドッと疲れを感じて、ロイヤルはしゃがみ込みました。
ロイヤル「……びっくりした。昼と夜の裂け目に落ちていくような気分がした」
グリフィン「気のせいじゃない。事実、ふたりして落ちかけた。おれのほうが重いせいかもしれない。ふたりでとぶのは不可能ではないが、おれとおまえでは重量オーバーだ」
ロイヤル「それ、体重の話?」
グリフィン「そうだ」
淡々とした口調で答えながら、グリフィンはあたりの様子を窺っています。
ロイヤル「ここが、グリフィンが来たかった場所か?」
グリフィン「……大きなくくりで言えば、そうだ。だが、座標がズレて振り落とされてる。なにかが転移を阻んでた。おれがコントロールすれば打破できると考えたのは、傲慢だった。敵の腕が上だ」
ロイヤル「うん?」
詳しく聴きたいという意思を示したロイヤルに、しかしグリフィンはそれ以上説明する気はなさそうでした。
グリフィン「ロイヤル、おれは行く。ふりまわして悪いが、おまえはここで待て。この場に転移してしまった以上、ほかにやりようがない。この先に行くにはパスが必要で、おまえはこれ以上進めないから」
ロイヤル「パス?軍の基地の、ずっと奥まで行く気なのか?」
兄が軍の宿舎で清掃の仕事をしていることは、ロイヤルも知っています。ということは、兄は軍の区画に入るための証明書かなにかを持っているはずです。
それにしても、グリフィンはなにをしようとしているのでしょうか?
グリフィン「そうだ。事情は話せない。いつか話せると思うが、いまは状況が込み入ってる。ほんとうだったら今夜は、おまえを子ねこにでも変形させて奥までひそかに運ぶつもりだった」
ロイヤル「え。仕立て上げてって、グリフィンの魔法で?……子ねこの姿に化けさせるってこと?おれをポケットに入れるのか?そりゃ、グリフィンの実力なら出来るだろうけど、ヤだなソレ」
グリフィン「ああ、おれがおまえでも、そう思うと思う。とにかく、そうするつもりだった。それがいちばん安全だからだ。だがその案は使えない。そこに見えるやぐらに監視カメラがついてて、今おれたちがここにいるのも撮影されてる。おまえを猫に変えたとしても、化ける瞬間を撮られておまえだとバレる」
ロイヤル「えーと、はあ。まぁ、そうだな」
グリフィン「出来ることはひとつだ。おまえはここから動くな。全部終わったらおれがおまえを拾いに来るし、現実的に考えればそれより先に警備が駆けつけて、おまえを【保護】する可能性が高いと思う」
グリフィン「【保護】された場合、警備にありのままを話せ。自分はグリフィン・スノウフイールの弟で、兄に脅されて転移魔法を発動、ここに不時着したと」
ロイヤル「……だいぶおおごとになってる気がするし、何からツッコめばいいのかわからないけど……まず、おれ兵隊に捕まるんだ?」
なんとなく【まっくらな独房で、鞭を持った男の尋問を受けている自分】を想像して、ロイヤルはうつろな笑いを浮かべています。
グリフィン「心配いらない。おまえ自身は、明日の朝には帰れるはずだ」
ロイヤル「グリフィンは?……帰れるんだろ?」
兄の口ぶりに不安を覚えて尋ねると、
グリフィン「当然だ。無事に帰る。いつになるかはわからないが」
その答えは、安心していいのかどうかわかりません。しかし、とにかくロイヤルはそろそろ疲労困憊で、口を利く気力も尽きそうでした。
久しぶりに【梟の紋章】を使ったことで身体がびっくりしていましたし、グリフィンの魔力を流し込まれて骨の髄まで痺れています。
ロイヤル「……わかった。行ってよ、待ってるからさ。もうすこしグリフィンの役に立ちたかったけど、なんだかすごく眠いんだ」
グリフィン「もう充分、役に立ってる。それに、おまえの価値はそこじゃない。眠るなら道の端に寄って、上着の前を留めろ。風邪をひく」
ロイヤル「はいはい……。ほんとうにもう行ってよ。グリフィンが今すぐ駆けだして、なにか大切なことを成し遂げたいと思ってるのはわかってる」
グリフィン「ありがとう。文句はあとですべて聞く」
グリフィン「ああ」
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断崖を駆けだしていくオオカミのようなグリフィンの足音を聞きながら、ロイヤルは重ったるくうずくまりました。
兄のために役目を果たした少年は、生あくびをして「武運を」とつぶやきました。そして岸辺を離れ、灰色の眠りの国へ漕ぎだしてゆきました……。
つづきます!
*
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