本日は、また【グリフィンと欠落の姉妹編】です。
いやはや、前回からすっっかり時間があいてしまって申し訳ないです。なんだか私の頭の整理が悪くて仕込みが遅れに遅れてしまい……5月のお話更新が1回だけになると気づいた時、滝の汗をかきました……5月は31日もあったというのに……!(平伏)
そんなプレイヤーのつらつらとした言い訳とザンゲはほっておくことにして、サックリと本編にまいりましょう!(重ねて平伏!)
*
強い魔力を持つグリフィンの存在は、軍にとっては脅威と受け取られたようでした。軍に拘束された弟・ロイヤルを解放させるため、そして状況を打開するため、グリフィンはできうる限り軍への誠意を示します。「とにかく深夜の事件について証言する」と。
ロイヤルは解放され、グリフィンは軍の施設に【拘束】されることになりました。
……それでは、本日もまいりましょう!
(今回、かなり長いです……!)
*
グリフィンは軍の施設に留め置かれ、ひたすらに証言を続けました。
イナ・ポートランドを見つけた庭(パティオ)に向かう区域において、きみはどのように警備を突破したのだね?
グリフィン「突破はしてない。おれの行く先に、警備はひとりも現れなかった。警備ロボは道を譲り、おれはIDでゲートを開ければそれでよかった。【敵】の張った結界はおれ以外の人間をパティオから遠ざけ、おれだけを招き入れていた」
記録と一致しているな。
それでは【敵】とは結局、何者だったのか。きみはどう見ているのだね?
グリフィン「おれ自身とまったくおなじ姿をした男。だが、人間じゃない。あの男の身体は、魔力の【磁場】を発生させていた。人間には、それがどれほど強力な魔法使いであっても、体外に【磁場】を発生させるほどの魔力はない」
証言、証言、証言。
昼食をはさんで、また始まります。
グリフィン「パティオに現れた【白い扉】がどういった類いの装置だったのか、ほんとうのところはわからない。おれとおなじ姿の男は、そこから出てきた」
グリフィン「あの【白い扉】は一点の曇りもなくそこにあり、人間による探索を拒んでいた。封印した時の感触では、あれは魔性の門ではなく、もっと高みにあるものだ」
グリフィン「それが魔性に属するものか、世界の法則に属するものかという違いは、魔力を持つ人間ならだれでもひと目で判別できることで、だからこそ、どう違うか言い表すのは難しい。単純に、ほうれん草とジャガイモくらい違う」
疲れも見せずに話しながら、そしてできうる限り正確に話そうとしながら、グリフィンは耳のなかに「ガサ、ガサン」という音を聞きました。左の耳です。ゴミでも入ったのでしょうか?
一分の間、彼はがまんして証言を続けました。
「ガサ、ガサン」は、だんだん大きくなっていく。
とうとう話を中断し、ゴミを追い出そうとして頭を振りました。
マルボロ少尉「……耳に水でも入ったのか」
そう見えたかもしれませんが、プールで泳いでいる訳ではないので、それはありえません。
グリフィン「いや」
マルボロ「…………」
グリフィン「…………」
グリフィンは、まだ頭を振っています。
マルボロ「……すこし休もう。わたしは退出する。グリフィン・スノウフイール、きみは飴でも口に含みたまえ。話しすぎて声がかれている」
*
???「よう、スノウフイール」
振り向くと、いつもの同僚が立っていました。
職員用の第二休憩室です。
グリフィン「ムーア」
何か用か、と尋ねなかったのは、この同僚がグリフィンの監視のために現れたとわかっていたからでした。
ムーア「……おまえ、何を口に入れてんの」
グリフィン「のど飴だ」
ムーア「それ、まだ持ってる?タバコ切らしてて落ち着かねぇのよ」
グリフィン「ない。おれもマルボロから支給されただけだ」
ムーア「あっそ」
メルヴィル・ムーアは、手持ち無沙汰に口を開けたり閉めたりしています。
グリフィン「訊きたいことがある」
ムーア「なんだよ」
グリフィン「その後、彼女がどうなったか情報はあるか」
ムーア「彼女?」
ムーアはしらじらしく聞き返そうとしましたが、グリフィンの射抜くような目を見てやめました。ここで芝居を打って問答を引き延ばせば、目の前の若者の【絶対零度】という一面を引き出してしまってめんどうなことになる。そう判断したのです。
ムーア「……マルボロに食らいついて聞き出せばいいだろうよ。おれなんかじゃなくて」
グリフィン「彼の言動には、上が目を光らせてる。彼がおれに情報を洩らせば、彼自身が職を失くすことになる」
ムーア「おれは職を失くしてもいいのかよ!?……まぁいいや……イナ・ポートランドもおまえとおなじ身の上だよ。上が彼女に張りついて、例の深夜の事件について彼女の証言をしぼりとってる」
グリフィン「ほかには」
ムーア「おまえが気にかけてるのが、彼女が苛酷な扱いを受けてやしないか……ってことなら、まぁ心配はない。今のところは」
グリフィンはさらに情報を引き出そうとするかのように、同僚の顔を見つめていました。しかし相手は、これ以上話す気はないようでした。
グリフィン「…………。…………?」
グリフィンはまた、耳のなかに「ガサ、ガサン」という音を聞きました。
グリフィン「…………」
ムーア「……耳に水でも入ったのか」
グリフィンのまわりの人物は、どうして揃いも揃っておなじことを言うのでしょうか。
グリフィン「ちがう。……もう会議室に戻る」
ムーア「おう。テキトーにやってこい」
グリフィンがガサガサ言わせたまま部屋を出ようとすると、
ムーア「スノウフイール」
ムーア「イナ・ポートランドはまもなく、西部の【D-4施設】に身柄を移送される。謎の手法で脱走を図った彼女を上が持て余して、警備体制が盤石な【D-4】に収容しようと考えてる」
グリフィン「…………。ありがとう」
短くまっすぐな感謝は、今日最大の情報をもたらしてくれたことに対して。
今日最大の情報を与えたムーアのねらいは、どこにあるのか。その疑念と警戒は、今はおいておくことにして。
ムーア「面会をとりつけるならうまくやれ。別れの時を逃すな」
*
グリフィンは廊下に出て、同僚から聞かされた話を胸のうちに繰り返しました。
グリフィン(予想されたことだ。一度逃走を企てた者が、より堅固な檻に入れられるというのは)
耳のなかの異音は続いています。
じわじわと首を絞めつけてくる縄を断ち切りたいような心持ちで、グリフィンは頭を強く振りました。
ふいに、身体が軽くなりました。同時に、足許で硬いものが跳ねる音。
グリフィンの耳許から、何かが落ちた?
脳裡のくすみはすっきりと晴れて、鼓膜にしみこんでいた熱もさめている。
見下ろすと、いつか見た刃が落ちていて、グリフィンに拾われるのを待っています。グリフィンの耳の奥から落下したのは、身体の奥から落下したのは、この刃だというのでしょうか?
グリフィンは手をのばして、ひんやりとした柄をつかみました。
とたんに、目の前が白くなる。
この刃でグリフィンに敵意を向けたもうひとりのグリフィンが、乾いた声で哄笑している。【ほかでもない、ここにいる我が胸の内側で】。
謎の男「切っ先はおまえのなかにある。遣(つか)いみちは自分で決めろ」
世界の底に封じたはずの敵対者が、赤い瞳でささやきました……。
つづきます!
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