本日は、また「グリフィンと欠落の姉妹編」ですー。
グリフィンと別離してからの数年間、本当にダンサーとして生きていたイナ・ポートランド。彼女の陰影に満ちた人生は暴かれました。奇妙な症状によって「三歳児の姿」になってしまったイナと、今一度話したい……グリフィンは上官にそう申し出ます。そして……
それでは、本日もまいりましょう!
(今回も、ちょっと長めです……!)
*
時刻は、十七時半。
グリフィン・トワイライトの姿は【彼女】の病室にありました。
イナ「…………」
彼が入室した物音にも、小さなイナ・ポートランドは興味を示しませんでした。
グリフィン(…………。この子供が……彼女か)
今ではもう、グリフィンも【この子こそが、旧友その人である】ということを、受け入れつつありました。いくつもの証拠が、それが事実だと突きつけています。
*
グリフィン「彼女と話したい。イナ・ポートランドと」
十五分前、グリフィンがそう切り出すと……上官は期を逃さず、こう尋ねました。
マルボロ「きみは彼女について……何か知っているのか。先ほどからきみの言葉を聞いていると、どうにも引っかかるものがある」
グリフィン「数年前、彼女と会っていた時期がある。冬のサンマイシューノだ」
マルボロ「…………。貴重な情報だ。いや、奇妙なめぐりあわせだと言うべきか。少年時代の友人か。彼女が家を出たあとだな」
グリフィン「そのようだ」
マルボロ「きみにも、あとで聴き取りをおこなう。きみはいつから、調査対象がきみの友人であることに気づいていた」
グリフィン「はじめから」
マルボロ「そしてきみは、その事実を報告しなかった。わたしにも」
グリフィン「話す理由がなかった、こんな事態になるまでは。個人的なことだ。おれは犬じゃない」
初めて、マルボロ少尉はほんとうの意味で笑いました。
マルボロ「もっともだ」
マルボロ「……きみの存在は、物言わぬ彼女への刺激になるかもしれん。入室許可を取る。十五分待て」
*
そしてグリフィンは今、彼女の白い部屋に立っています。
イナ「…………」
数年ぶりに、こんな形で出会い……また、友人がこのような姿をしている、となれば、一体どのように声を掛ければいいというのでしょうか。それでも彼は、ただ棒立ちで考えあぐねているほど、決断の遅い男ではありませんでした。
グリフィン「イナ・ポートランド」
斬り込むように、彼は彼女の名を呼びました。
イナ「…………」
イナ「……帰りたい」
グリフィン「どこへ」
イナ「今じゃないどこか、過去じゃない場所へ」
彼女が繰り返すこの言葉には、何か重要な意味があるように、グリフィンには感じられました。過去……その言葉は、彼に【彼女が居た時代】を思い出させます。
グリフィン「あの頃」
イナ「…………」
小さなイナの目に、感情の光はありませんでした。
彼女の心は、どこにある?グリフィンは五秒考えて、結局こう言いました。
グリフィン「あなたがおれを憶えてるのか、それはわからない。サンマイシューノで出会ったグリフィンだ。申し訳ないとは思うが、あなたの物語を聴いた。……あなたはすべてを失くしたのか。あの烈しい魂も、心の底から求めていた物もすべてを喪って、抜け殻となったあなただけがここにいるというのか」
イナ「…………」
小さなイナの目に、感情の光はありませんでした。
問いかける言葉が詰問じみた響きを帯びるのは、グリフィンの悪いクセでした。彼は今、それを自覚して口をつぐみました。
目の前にいるイナが、もし二十二歳の姿をしていたら……彼は迷わず、その【残酷な一面】を発揮して、追い詰めるように問いを重ねたことでしょう。
しかし、ここにいるイナはあまりにもあどけなく、彼の追及には到底耐えきれないように思えました。彼女に問いかけるための言葉を、彼はもはや持っていませんでした。
グリフィン「…………」
イナ「…………」
どちらも何も言わないまま、三分が過ぎ、五分が過ぎました。ドアノブが回る音がして、彼の上官が入室しました。
マルボロ「スノウフイール、時間切れだ。退室したまえ。彼女の食事と、血液検査の時間だ」
グリフィン「…………」
グリフィンが彼女と再会した最初の一日は、そうして終わりました……
つづきます!
*
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