本日(2021年7月22日)2回目の更新です。
今回はまた【グリフィンと欠落の姉妹編】ですー。
ロイヤルはついに、兄・グリフィンが胸に秘めていた思いを知りました。兄が女性に対して控えめに振舞い、女性と距離を置きたがるのは、いつか来る兄自身の終末を見定めていたから。消滅を宿命づけられているグリフィンは、そんな自分が妻を娶れば【消滅後】に妻が過酷な人生に見舞われると考えていたのです。
結婚相手と思い定めるような女性が現れぬよう、グリフィンは注意深く行動している……
その事実に、ロイヤルは激しいショックを受けます。そして日は沈み、お買い物に出かけていたシャーロッタが帰宅しました……
それでは、本日もまいりましょう!
*
その夜、ロイヤルは熱を出しました。
シャーロッタ・ニュームーンはロイヤルに熱いハーブティーを飲ませ、ぐっしょりと汗をかいた身体を拭いてやり、献身的に尽くしました。
一段落して、彼女が「もうひとりのあるじ」の様子を見に行くと……
グリフィン「……眠ったか」
シャーロッタ「はい、ロイヤル様は大丈夫でしょう。おカゼという訳ではなさそうですし、たっぷりお休みになればお元気になられるはずです」
グリフィン「……そうか」
シャーロッタ「…………。何か、あったのですか?」
昼間、シャーロッタの留守中に兄弟の間に何が起こったのか……彼女は控えめに知りたがりました。日頃、兄弟の様子をよく見ている彼女にとって、ロイヤルの発熱が【心】に起因していると見抜くのは、たやすいことでした。
グリフィン「…………」
グリフィンはいつもの冷静さを保っていて、その感情は読み取れません。お世話係たる精霊は、限りなく優しい声で、
シャーロッタ「……シャーロッタにも話しにくいことですか?ムリにとは言いません……」
グリフィン「いや、言う」
彼が遮るように告げたのは、逡巡する彼自身を断ち切るためでしょうか?
グリフィン「夕方、話す必要のないことをロイヤルに話した。あいつが倒れたのは、それが原因だ。あいつに負担をかけ過ぎた」
シャーロッタ「……何を……?」
グリフィン「おれの個人的な問題を打ち明けた。話そうと決めた自分が愚かだったとは思わない。だが、そこまで話すべきじゃなかったのは事実だ」
内面の見えにくい表情は相変わらずでしたが、グリフィンの声には苦みのようなものが混じっていました。
シャーロッタはなんとなく、この若い主人が弟君と【呪い】について話し合ったのではないかと感じ取りました。そこで何か……おそらくは、兄君から弟君に対して……決定的な発言があったのではないでしょうか。
シャーロッタ「……グリフィン様。グリフィン様は、ご自分を責める必要はないのです。ロイヤル様もまた、そうであるように」
グリフィンは何も言いませんでした。
シャーロッタ「ロイヤル様が体調を崩されたことについて、それだけでなくロイヤル様の人生に対して、グリフィン様が責任を負う必要はありません」
シャーロッタ「むしろグリフィン様は、心のなかにある重荷のことを、言葉にしてお話しになったほうが良いのです。言葉は変化をもたらし、癒します。ロイヤル様やシャーロッタにお話しになりたくなければ……どなたか、信頼できるお方に」
そう言ってからシャーロッタは、悲しげに唇をゆがめました。みずからを厳しく律するこの主人に、そんな相手が……心から信頼し、重荷を分かち合える友人が現れることはあるのでしょうか?
あの遠い雪の日、あのビルディングの谷間の都会(まち)で、主人はついに友人を見つけたかに見えました。それは、シャーロッタの願いが叶えられた瞬間でした。けれど、あの友人は……彼女はすぐに去ってしまった。
この特殊な生い立ちを持つ主人を【心の底から理解できる友達】は、それでも世界のどこかに存在していて、出会いを待ってくれているのでしょうか?
グリフィン「心配いらない。今でも充分だ」
結局グリフィンは、シャーロッタが差しのべた手を取ろうとはしませんでした。彼はただ凛々しい主君の顔をして、安心させるようにほほえみました……
*
部屋のなかでは、状態の落ち着いてきたロイヤルが、身を起こしていました。彼は、夕方の兄との会話を繰り返し思い出していて、兄のことを考えていました。
ポーラスター「グリフィン兄さんは、苦労しすぎたんだよ……」
ずっと前、姉が兄について語った言葉が、ロイヤルの胸に蘇りました。
ロイヤル(ポーラスター姉さん……、姉さんが正しい)
彼は、ひどく静かな心で認めました。
ロイヤル(おれはずっとグリフィンのそばにいて、おれが一番グリフィンを理解してると思ってた。おれがグリフィンを支えてるとさえ思ってた。でも、そうじゃない)
ロイヤル(グリフィンの心のなかには、誰も手が届かない扉がある。扉にカギが掛かってるのではなく、ただ到達できない高みにあって届かない。決して肩代わりはできないけれど、せめて共に歩みたい。……おれはもう【グリフィンにはムリがある】なんて言わない。おれはただ隣にいて、グリフィンが歩む道を、永劫憶えていようと思うんだ)
そののちロイヤルを永く支配し、ロイヤルが人生をかけて登ることになる険しい山道は、こうして見出されたのです。
星がよく見えて風のない、ストレンジャービルの夜でした……
つづきます!
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