本日は、また【グリフィンと欠落の姉妹編】ですー。
前回は「大切な旧友・イナの息子を捜そうと、調べものに没頭するグリフィン」の姿を、弟・ロイヤルの目で見つめました。今回はその続き。兄弟の暮らす家に、グリフィンの縁談が持ち込まれたところから始まります。
……それでは、本日もまいりましょう!
*
ロイヤル「グリフィン、見合い話だ。グリフィンに、花嫁の写真が送りつけられてる」
グリフィン「…………」
グリフィン・トワイライトは、驚きを見せませんでした。その瞳は冷え切って青みを増し、何の感情もあらわしてはいませんでした。
ロイヤル「…………」
兄の様子は、ロイヤルにイヤな汗をかかせました。こちらを睨んでいる兄の肩のあたりから、ピリピリと魔力の気配を感じます。気持ちはわかりますが、冷酷に黙り込んだまま、ヤマアラシの針みたいな魔力を放出するのはやめてほしいと思いました。
兄の【度を越した】厳しい態度は、ロイヤルにいつも恐ろしい思いをさせます。
ロイヤル「……見る?写真」
動揺した結果、ロイヤルはバカなことを言いました。こんなことを言えば、兄の怒り……たぶんコレは【怒り】なのでしょう……は増すばかりです。心のなかで、ロイヤルは自分を罵りました。
グリフィン「送り返す」
グリフィンは、写真の束を奪うように掴みました。箱のなかにキッチリ戻し、掛け金をかけ、それを小脇に抱えて部屋を出ていこうとします。
ロイヤル「……え!?ユーリエに持って帰ってもらうのか!?彼女、もう行っちゃったよ!」
ユーリエの魔法の箒のスピードを、グリフィンが知らない訳はないでしょう。彼女は今頃、ストレンジャービルをあとにしているはずです。
グリフィン「……確かにそうだ」
げんなりした様子で認め、グリフィンが戻ってきました。絶対零度の怒りは、とりあえず鎮まったようでした。ロイヤルは心底ほっとしました。
グリフィン「…………」
ロイヤル「グリフィン、大丈夫か」
グリフィン「なんともない」
ロイヤル「……意外だった。長老様方が、勝手にグリフィンの縁談を進めようとするなんて。長老様方は話がわかるし、父さんを諫めてくれるし、おれたちの……グリフィンの味方だと思ってた」
グリフィン「あの方々が親父と対立してるからこそ、一致団結して、おれの立場を確かなものにしようとお考えになってもおかしくはない。旧い体制を切り崩そうとしていることもあって、おれの立場は悪い。他方、長老様方はおれを擁立したい。そして、未だにあの家では、当主は妻を娶らなければ一人前とはみなされない」
ロイヤル「そんなの知ってるよ。古すぎる。だからこそ、グリフィンは負けちゃいけないんだ。花嫁の話なんて、結婚したくなったら、グリフィンが自分で選べばいいんだよ!」
尊敬する兄への支持を表明すると、ロイヤルの胸に勇気が熱く湧き上がってきました。
兄は何か言いたそうにロイヤルを見つめ、しかし何も言いませんでした。
ロイヤル「…………。え!」
兄の表情を眺めているうちに、ロイヤルは急に【ある可能性】に思い至って、自分でも呆れるほど狼狽えました。顔を真っ赤にして言い募ります。
ロイヤル「もしかしてグリフィン、結婚したい相手がいるのか!?おれやシャーロッタが知らないだけで、ガールフレンドがいたりするのか!?」
グリフィン「いない」
感動のカケラもない即答。
グリフィン「知ってるだろう。おれに恋人がいたことはない。自分から女性に近づいたこともない」
ロイヤル「あ、そう。うん、そう。びっくりした。……そうだよな、シャーロッタ以外には近づかないよな」
ロイヤル「わかってるって。ほんとの例外って言ったら……ハンナくらいだもんな?」
グリフィン「……それはそれで、また別の話だ。単純に、まだ子供だった」
兄は珍しく困惑を見せて、そこそこ具合の悪そうな口調です。
ロイヤル「はは」
グリフィン「……話を戻す。おれがさっき、黙っておまえを見たのは……おまえがおれを励ますのは珍しい状況だと、そう思っただけだ。実際、励みになる」
ロイヤル「あ、そう?ま、確かに、いつもは立場が逆だもんな」
こういう時にあっけらかんと笑うのは、ロイヤルの良いところです。
ロイヤル「……だけどさ、ムカシひとりだけいたよな?グリフィンは何も言ってないのに、向こうからグリフィンに近づいてきちゃった女の子。……ほら、サンマイシューノで【カギ】を探してた頃、ポーラスター姉さんが熱を出して……その時助けてくれた女の子」
ロイヤル「あの子、道で顔を合わせても、野良犬みたいにすぐいなくなっちゃうんだった。あと、おれたちのために食べてなくて倒れそうだったグリフィンに、食べ物をくれた。おれ、あの子を忘れたことはないよ」
弟の話に、グリフィンは口許を緩めました。……いいえ、【口許を歪めた】と言うべきでしょうか?
ともかく、その思い出話は(基本的に、あまり感情の波がない)グリフィンの心を動かしたようでした。兄は格別な感想を述べませんでしたが、あの少女を好意的に思い返している様子は見て取れました。
兄弟の間に、くつろいだ空気が流れています。
……もしかして、あのことを尋ねるなら、今しかないかのもしれない。
不意打ちのように機会が訪れたのを悟り、ロイヤルは口に出すタイミングを計っていました……。
つづきます!
*
SS13枚目(シャーロッタ・イメージ)のポーズは、
よりお借りしております。
SS14~15枚目(子供時代のグリフィン・ハンナ・ロイヤル)のポーズは、
よりお借りしております。
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