本日は、また「グリフィンと欠落の姉妹編」ですー。
ポートランド邸に招かれて、二度目の調査をおこなったグリフィン。邸宅のなかで奇妙なできごとが重なり、彼の目に映る世界にすこしずつズレが生じていきます。そして……
それでは、本日もまいりましょう!
(最終加筆修正:2024年4月11日)
*
長いようで短かった、ポートランド邸での物語が終わろうとしています。
夜半すぎ、グリフィンは邸宅をあとにしました。
彼がポートランド姉妹の許を去るまえに、次のようなやり取りがありました。
アーモンド「グリフィンさん。姉は……イナ・ポートランドは、わたしたちの許にもどるでしょうか」
ネモフィラがはっとして、末っ子の顔を見つめました。尼僧ネモフィラは、グリフィンがなんのために屋敷を訪れたか聞かされていたわけではなかった。それが【なんのため】であったのか、ネモフィラは一瞬のうちに理解したようでした。
アーモンドはまた顔をこわばらせて、おとなしくカゲのある少女にもどっています。
グリフィン「わからない。答えられるだけの根拠を持ってない」
直截的な性格のグリフィンは、むやみに【希望を持たせるようなこと】を言いません。彼のまっすぐな物言いは、ときおり残酷さに変わるのです。
アーモンドは、ちらりとほほえみました。
【それでも、あなたの曇りのなさは好もしい】と、彼女の顔に書いてありました。
アーモンド「……これをお持ちください」
あの、イナ・ポートランドからの奇妙な手紙です。
グリフィン「だが、あなたたち姉妹にとって大切なものだろう。物的証拠として画像を撮らせてもらえれば、それでいい。現物がほしいという考えもあるだろうが、あなたたちの心にとってかわりの利かないものを、奪いとって暴く気はない」
アーモンド「いいえ、どうぞお持ちになって。写真ではわからなくても、ほんものの手紙をくわしく調べていただければ、なにかつかめるということがあるかもしれません。グリフィンさんが何者なのか、わたしにはほんとうのことがわかりませんが……わたしたちが持っているより、あなたが持っているほうがお役に立つ気がするのです。どうか、わたしたちのイナのために」
グリフィン「わかった。必ず返す」
そして、いま。
グリフィンは「イナの手紙」を懐にしまい込み、深夜の大通りを歩いています。
*
グリフィン(ムーアは……いないか)
軽薄で型破りな同僚の姿を、グリフィンは目で捜しました。
【ポートランド姉妹の次女・ネモフィラが、グリフィンのために夜道を走って帰宅した】と聞いたとき、家路を急ぐネモフィラをあの同僚がエスコートしていたのではないかと、グリフィンはひそかに疑ったものでした。
あの男はゆうがた、ネモフィラに取り入って情報を得ようとしていたはずです。
グリフィン(とにかくムーアに連絡を入れて、マルボロのところに報告に行くべきだろう。遺伝子情報のサンプルとイナの手紙を、今夜じゅうに提出したほうがいい。…………。…………?)
ふいに【とてもよく知っている人の気配】を感じて、彼は足を止めました。
グリフィン「どうした、こんな場所で」
ロイヤル「…………!グリフィン!!!」
顔を跳ねあげ、歓声と呼べそうな大声をあげて、弟のロイヤルが駆けてきました。
ロイヤル「どうしたじゃないだろ!グリフィンの身になにか起こったんじゃないかと思って捜しまわってたんだ!なんだかわからないけどイヤな予感がしたからさ」
グリフィン「…………?」
ロイヤル「はは、口開けて見るのはやめてくれよ。まじめにやってたおれが、ばかみたいじゃないか。きょうはグリフィン、ここのカフェに行くって出かけただろ。だからここまで来てみたんだけど……ま、ピンピンしてるみたいだし、無事ならどうでもいいんだ」
グリフィン「おまえ、鼻をどうした」
ロイヤルの鼻の頭に絆創膏が貼りついているのが気になって、グリフィンはまずその問題の答えを得たいと思いました。
ロイヤル「あ、コレ?……えーと、なんでもないよ」
シャーロッタ「ロイヤル様は、グリフィン様をとても心配されてたんですよ?」
それまで口をはさまず、兄弟を見守っていたシャーロッタが、おっとりと歩みでて言いました。
シャーロッタ「グリフィン様、きょうのゆうぐれのことをお話しします。ロイヤル様は【だれかに呼ばれるような感じ】がしたそうです。わたくしがお買い物からもどると、ロイヤル様は垣根のまえに仁王立ちしていらっしゃいました。わたくしの姿を認めると、ロイヤル様は口上を述べる騎士のように、グリフィン様を捜しにいきたいとおっしゃいました」
シャーロッタ「そのお言葉をお聴きして、わたくしも不安になりました。ご兄弟の結びつきの強さがあれば、虫の知らせが生じてもおかしくないと人は言います。……でも、こうしてグリフィン様がお見えになったので、ロイヤル様とシャーロッタの恐れはふきとびました」
ロイヤル「い、いいよシャーロッタ!そんなに説明しなくても!」
シャーロッタ「ロイヤル様は図書館前から陸橋のほうまで全速力で捜しまわり、名高いハウンドドッグのようでした。でも、夜の闇のなかにグリフィン様を見つけようとしていたので、足許は見ていなかったのです。それでこの絆創膏です」
ロイヤル「シャーロッタ!」
グリフィン「……ありがとう。心配をかけた」
世界でいちばん聞き慣れた声、いちばん見慣れた光景をまえにして、鋭敏になっていた感覚がほどけていく。
グリフィンは目を伏せて、ロイヤルも気がつかないほどひっそりとほほえみました。
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つづきます!
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今回お借りした、おもな作品
SS7枚目(ネモフィラとムーア)のポーズは、
よりお借りしております。いつもありがとうございます。
SS4枚目、「アーモンドが持っている手紙acc」は
よりおかりしております。いつもありがとうございます。
SS9枚目以降、うしろに建っている「Book Cafe」の区画は
HIKARE! 様
よりお借りしております。いつもありがとうございます。
Thanks to all MOD/CC creators!
And I Love Sims!
(その他のポーズは、自作です……)
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