今回は、ようやく更新される「グリフィンと欠落の姉妹編」本編ですー。もしお待ちいただいていた方がいらっしゃいましたら、本当に本当にお待たせいたしました!(……あれ?なんか言葉が変だな)
弟・ロイヤルの力を借りて、旧友イナの許へ転移(瞬間移動)を試みたグリフィン。しかし何者かに阻まれて、イナの居場所からやや離れた「軍の基地のド真ん中」に移動してしまいます。グリフィンは今度こそ、イナの居場所めがけて走り出します……。
それでは、本日もまいりましょう!
*
走れ、走れ、名もなき者よ
風よりも速く
日の出よりも、まだ先に……
グリフィン・トワイライトは軍の区画をいっさんに突っ切って、旧友の許へ急いでいました。彼はただ一度、口のなかでその思いを呟きました。
「その娘から離れろ。……イナ!」
夜はいよいよ深まり、午前二時。
「今日」と「明日」の間にある、ひずみのような時間が始まろうとしていました……。
*
イナ・ポートランドはレンガ塀のへこみというへこみに指をひっかけ、あろうことか、塀を垂直にのぼろうとしていました。しかし……
イナ「あっ……」
ずるりと指先がすべり落ち、彼女の小さな身体は芝生へと落下していきました。
イナ「いたた……。もう一度!」
彼女は既に六回「壁のぼり」に挑んで、六回転落しています。人差し指と中指の爪が、はがれそうに痛かった。それでもグッと唇を結んで、再びレンガに指をかけました。
???「苦戦しているな」
ふいに響いた低音は、ある意味では彼女が待ち望んでいたものでした。
イナ「……あんたか」
フードの男「…………」
イナ「あんたがもう一度現れたら、言ってやろうと思ってた。鏡をくぐり抜ければ外に出られるって言ったクセに、そんなのウソっぱちじゃない。ここはまだ、シセツの敷地のなかだもの」
フードの男「想いの強さが足りないのだ」
イナ「うん……?」
フードの男「鏡はただ、そこに在るものを映し出すだけだ。そなたが外へ出たいとより強く願えば、鏡はそなたをより離れた地へ運んだだろう。足りなかったのは、そなたの想いだ」
イナ「なんだかヘリクツに聞こえるし……仮にあんたの言う通りだったとして、それならそうと、先に言って欲しかった」
下唇を突き出して、イナは不満をあらわしました。フードの男の口ぶりが整然として、なんとなくグリフィンに似てきたのも気に入りませんでした。あのまっすぐな青年の口調を【まねる】ことは、誰であろうと許すまいと思いました。
フードの男「……手を貸そう」
イナ「え?」
フードの男「そなたが言ったことだ。壁に大穴を開けてでもこの地より抜け出したいと、そなたはそう言った」
イナ「確かに言ったけど」
フードの男「十度にわたってあの壁をのぼろうと挑むより、ただ一度【障壁を粉々に吹き飛ばしたい】と願うほうが、ことは早い。願うのだ。大穴を開け、そなたはそこから外へ出てゆく」
フードの男「わたくしの力を使うがいい。そなたが願えば、わたくしは呼応して魔力を解放するでしょう。さあ、わたくしの手にそなたの手を重ねなさい」
イナは突然……目の前のこの人物が、女性であることに気づきました。いつから……いつから?なぜイナは、この人物を男性だと思っていたのでしょう。
イナ「…………」
イナ「…………。どのみち、あたしは受け入れるしかない。こんなとこで立ち止まっていられない。グズグズして見つかって、連れ戻されるワケにはいかないんだ」
女のひんやりとした手に、イナは自分の小さな手を載せました。
フードの女「念じるのです、そなたの望みを」
イナ(トリー……、トリーがいる場所に行きたい)
フードの女「もっと強く!」
イナ(トリーの許へ!あたしをどうか、トリーの許へ!)
フードの女「強く!!」
イナ「トリー!!」
我知らず叫んだイナの手から、何か巨大な……澄んだ魂のようなものが抜き取られる感覚がありました。澄んだ魂はフードの女に吸い込まれ、女の腕に巻きついて、火の粉に姿を変えました。火の粉はさらに集約され、波動に乗ってレンガ塀へと放出され……
イナ「…………!!」
肌をふるわせる衝撃とともに、イナの前に「それ」が現れました。
今度こそ、確かに。
それはイナが探し求め、渇望していた……外の世界へと導く「トビラ」でした。
つづきます!
*
SS最後のコマ
「扉風の白い窓」(Windows Collection 02)は、
よりお借りしております。いつもありがとうございます。
Thanks to all MOD/CC creators!
And I love Sims!
にほんブログ村
0 件のコメント:
コメントを投稿