死神の報酬イベントがはじまりましたね。私も楽しく死神さんとふれあっております。死神の蓄音機かわいいし、死神さんをいつでも呼び出せるの、めちゃくちゃ便利では……!?いや、便利っていうか、便利というのとはちがうんだけど、いつでも死神さんと会えるのはなんだか嬉しい!
そんな2024年9月ですが、今回の記事はイベントとはなんの関係もなく(!)うちの世界のお話を進めていこうと思ってます。忘れた頃に更新される「きみは、あしたもここにいる(幕間)」でございます。
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まずは、定型のご挨拶を。
このお話は、プレイ記録をお話仕立てにしたものではありません。こちらは、おもにシムたちのポーズ画像を挿絵にして、うちの世界独自の設定なども盛り込んでストーリーが展開していく「シムズ小説」とでも呼べそうなシロモノです。ぺこり。
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そんなこんなで、星空シムズ年代記より「きみは、あしたもここにいる(幕間)」。
それでは、本日もまいりましょう!
第一の話(その9)
スパイス・マーケットとねずみと用心棒のこと
ソニア「あおちゃん、いままでどこにいたの。おなかはすいてない?」
ハンナ「食べもの、着るもの、寝床は足りてる?見たところ健康そうだけれど、必要なものがあったら調達してくる」
ソニア「これね、ベルズ・ベーカリーのクロワッサン。あおちゃんが好きだったから買ってきたの」
ハンナ「ベルズ・ベーカリーって、省略すると【B・B】だね。おや、ブルーの髪の毛からあまい匂いがする。さてはソフトクリームを食べたね」
エヴァーブルー「まあまあ、落ち着きなって。ねえさんたち」
小学生の身長であらわれた二十一歳のエヴァーブルーは、おじさんみたいにもったいぶっていいました。
エヴァーブルー「ねえさんたちふたりとも、一から千まであたしを問いつめたい気分だと思うけれど、腰をすえて話したい。ねえさんたちをアジトに案内するよ」
ソニア「アジト?」
うえの姉が目をまんまるにして、
ハンナ「いいね」
二番めの姉はちいさな海賊のように、顔を輝かせました。
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ほんとうに、夜がきそうでした。
エヴァーブルーは冷めた風に目をほそめ、地りすのように車どめのうえによじのぼりました。そうやって身長を増し増しにすると、フェンスに遮られた街の【下層】、思いやりのあるあかりがポツポツとつきはじめたもうひとつの都会を見晴るかすことができました。
エヴァーブルー「アジトはあっち、スパイス・マーケットのほうにある。フェスティバルの提灯にぼうと照らされた街のすみっこに。こっちのうさぎちゃんは、あたしの友だち。うさぎちゃん、あいさつをして。ハンナねえさん、ソニアねえさん、ラムネをありがとう」
緑のズボンを着けたうさぎが、ふかふかの手のひらにラムネの瓶をにぎり、クレーン車のようにおじぎをしました。
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スパイス・マーケットについて、詳述する必要はないでしょう。おそらく、このおはなしをお読みのみなさんは、スパイス・マーケットをよく知っている!
知らない人のために話しておくと、スパイス・マーケットと呼ばれる地区には、れんが造りのアパートメントが十五も三十もひしめきあっている。閉鎖された缶詰工場がいくつかある。コンクリートの高架のうえを列車が走っていくので、街がガタゴトゆれている。
裏通りのどん詰まりに【ハングリー・ドラゴンズ】と名乗る暴れものの少年少女がたむろしていることがあるが、びくつくことはない。アートセンター地区を根城にするライバル・グループ【サーティーン・カラーズ】とは停戦協定が結ばれていて、双方路上の決闘を辛抱している。いつか遠くない日、蓋をされていたエネルギーは爆発し、いさかいは再びはじまる。だがそれは、また別の物語に収められる件なのです。
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エヴァーブルーは、若者たちの笑い声や手持ち花火の煙がたちこめる裏道を、ねこのように抜け目なく進んでいきます。自信に満ちたちいさな背中のあとにおとなふたりと緑のズボンを着けたうさぎがくっついてゾロゾロ行くのは、興味深い光景だ。ハンナはそう考えました。側溝から顔を出したねずみが、首をかしげてハンナをながめました。
ハンナ(気持ちはわかるよ)
ハンナは心のなかでほほえみました。
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エヴァーブルーの目的地は、れんが造りの埠頭施設を改造したバーでした。「オールド・ソルト・ハウス」と書かれた、錆のういた表札が打ちつけてあった。エヴァーブルー自身が「うさぎちゃん、尾行はない?」鼻息あらく確認し、緑のズボンを着けたうさぎがふかふかの親指を立てて「オーライ」を示します。バーの入口では、くるみ色の髪の用心棒がフードをかぶって待ち構えています。
用心棒「今夜は貸し切りだ……」
一団が近づいていくと、用心棒はうっとうしそうにいいかけました。先頭にいるのがエヴァーブルーだと気がつくと、うなずいて道をあけました。
用心棒「あぁ、安心しろ。静かなもんだ」
ハンナは用心棒の顔を、穴があくほど見つめました。会ったことがある。四一九年のウィンデンバーグだ。あの頃より肩幅が増し、声も低くなっているが、彼の腕に包帯を巻いたことがある。
ハンナの記憶のページが開き、彼と出会った日にハンナ自身が記したメモの紙片が、目のまえに現れました。
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かあさまから逃げだし舗道を歩く
凍りついた朝のウィンデンバーグ
欄干に寄りかかる少年と出くわし
少年はわたしを飽くことなく見る
反逆を忘れはてた野良犬のように
いじけた上目遣いでくるみを噛む
彼はいった「ミナキ家の姫さま」
なけなしの冒険は台なしになった
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用心棒「なに」
ハンナの凝りかたまった視線を受け、用心棒が不審そうにいいました。
ハンナ「ごめんなさい。知っている人に似ている気がしたもんだから」
あたしたち、会ったことがあるね。あの、あかるい冬の朝に。水がしみこむように確信が浸透してくる感覚とは裏腹に、ハンナは礼儀正しくいいました。
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つづきます!
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