こんにちはー。
今回の記事は「きみは、あしたもここにいる(幕間)」です。
忘れた頃に脈絡なく更新され、もはや不定期更新レベルとなっている「謎のお話」のシリーズでございます。
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まずは、定型のご挨拶を。
このお話は、プレイ記録をお話仕立てにしたものではありません。こちらは、おもにシムたちのポーズ画像を挿絵にして、うちの世界独自の設定なども盛り込んでストーリーが展開していく「シムズ小説」とでも呼べそうなシロモノです。ぺこり……。
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そんなこんなで、星空シムズ年代記より「きみは、あしたもここにいる(幕間)」。
今回は「第一の話、その12節」です。
それでは、本日もまいりましょう!
第一の話(その12)
ヘクター「ヘクター・プラチナムは人形を見て、郷愁とは別の思いにとらわれた。おそらく、彼の心には戦争がよみがえった。腕がもげたまま寒空のしたに投げだされているかつての兵士を、見棄てておけなかったのだと思います。彼はシムオリオンを支払い、人形をかついで家に帰った。そして、はんだごてやこまごまとした部品を取りだし、半年かけて人形を修復した。どうしてわたしが、まるで見てきたように話すのかというと……わたし自身が、その人形兵器。蚤の市で腕がもげていた、その人形だからです」
ヘクター・プラチナムの名を持つ若者は、空洞のような瞳でいいました。
ハンナ「…………」
ソニア「…………」
ハンナとソニアは、おなじように沈黙しました。しかしふたりは、まったく別の表情を見せていました。
ソニアは目をぱちぱちさせていて、口をおにぎりの形に開けていました。思いがけない話に対する感想が、顔全体にあらわれています。彼女自身は、自分が無防備な態度をとっていることに気がついていませんでした。
身長一七六センチ。少女たちの憧れを一身に受ける、着せ替え人形みたいに整った姿の持ち主ですが、一年のうち三百五十日はあどけない顔つきをしています。
一方、ハンナの瞳は深みを増し、いつもより濃い紫色に見えました。
目、耳、鼻、皮膚のうぶ毛……全身のセンサーでヘクターに触れていて、彼の身体の奥にある本心を見抜こうとしている。まわりのものたちは、そう感じました。「ミナキ家のハンナさまは、ちょっぴりおそろしい。得体の知れないところがある」そう評される、彼女の一面です。
ヘクター「突拍子のない話だとお思いでしょうか」
ぐあい悪そうにいって、だんだん顔が赤くなりました。
ヘクター「ハンナさん、わたしがあなただったとしても、このヘクターという男に疑いの念を抱くと思います。さりとて、詐欺師を志すにしては才能がない。だから、彼にがっかりさせられそうだ。なんだかほんとうに、わたし自身にがっかりしてきました。第三者の目で見てみると、それこそフィクションのような話をしていると、自分でも感じる」
繊細そうな若者はテーブルランプのあかりに透かすようにして、手首を持ちあげてみせました。
ヘクター「ほら、わたしが作りものだという証拠に、節々には継ぎ目が……」
ハンナ「いいえ、ちがうの。疑念なんかじゃなく」
おそろしいと噂される娘が、はっとして叫びました。瞳のなかに、星が輝いています。
ハンナ「そんなに年上の方にお目にかかるのは初めてだから、この世界の不思議を感じてました。十七歳のとき、スクールの夏の旅行で初めてウィンデンバーグに行きました。フォン・ホーント・エステートでお会いした女のひとがあなたの【ごきょうだい】だったかもしれないと、いまになって思います。ちがいますか」
ヘクター「ああ、おっしゃる通りかもしれない」
幻想にとらわれていた若者が、自分を取りもどしていいました。
ヘクター「失礼ですが、あなたはいま、おいくつですか」
ハンナ「二十三です」
ヘクター「というと、エステートで開催されていたのは【暗黒時代の秘宝特別展】でしょうか。いいや、別のと取り違えているかも。そこで展示されていた人形兵器をご覧になった?【血を流さないイオカステ】を?」
ハンナは子どものように、大きくうなずきました。
ハンナ「彼女は大理石の台のうえに立っていた。女神さまのように、あたしには見えた……」
もちろんハンナが「会った」のは、偽装心臓機関(シリンダー)が欠損し、動かなくなった人形兵器です。
ウィロークリークのミューズ美術館が、大戦期の遺物……この場合は「遺産」と呼んだほうがいい……を収集しているのを、皆さんもご存じかもしれません。【血を流さないイオカステ】は、収蔵品のひとつでした。ヘクターの記憶は正確であり、十七歳のハンナが足を踏み入れたのは【暗黒時代の秘宝特別展】にちがいない。三百二十点の掘り出しものがミューズ美術館からウィンデンバーグに移され、その日から、二年がかりのワールドツアーがはじまったのでした。
そのような大イベントで、イオカステは目玉として、主要ポスターのモデルに採用されたのです。瑞々しい印象を与える顔立ちで、たちまち話題となりました。
ヘクター「一度だけ」
若者が、そっとほほえんでいいました。
ヘクター「偽装心臓機関が稼働していた頃のイオカステを見たことがあります。つまり、四百五十年まえの戦争のときにです」
ハンナとソニアは、吸いこまれるように聴いています。
ヘクター「イオカステは機知に富んでいて、心を持たない人形たち、鳥や獣、人間やヴァンパイアの子どもにも人気があった。虚栄心や恥じらいとは無縁のひとだと評判でした。夏至祭りの夜、彼女が兵舎でギターを弾き、テーブルのうえに立ちあがって踊りだす場面に出くわした。わたしは、彼女のような人形兵器を遠巻きにながめるタイプだった」
ハンナはバーカウンターに手を置き、じっと壁を見つめました。
ハンナの目にも、ヘクターが語る光景が見えてきました。穴ぐらに詰めこまれた人形たちを、灯油ランプがぼんやりと照らしている。全員、靴を履いていない。声を合わせて【忘れられない水車小屋】を歌い、思い思いにパンデイロを打ち鳴らしたり、たばこをふかしたりしている。人形たちが肩を揺らすたびに、塵がきらきらと舞いあがる……。
とつぜん、イオカステがテーブルに飛び乗り、カーキ色のズボンをまくりあげました。ふくらはぎを見せびらかしながら、アホウドリのようなステップを踏んでいます。まわりのものたちが指笛を鳴らし、手に手をとって群舞がはじまりました。イオカステのあけっぴろげな笑い声は、ハンナの心を揺り動かしました。
ハンナ(あたし、このながめを憶えていよう。まもなく偽装心臓機関を撃ち抜かれることになる人形たちを。滅びは避けられないとしても、このひとたちの輝きはいま、ここにあるんだ!)
ヘクター「やはり、あなたには視(み)えるのですか」
畏れるようなヘクターの声音が、ハンナを現実に引きもどしました。今度は、ヘクターの瞳が輝いていました。
ハンナ「へ?」
ヘクター「ミナキ家の姫君には、まれにご自身の血肉から先祖の記憶を引き出し、何百年もむかしのできごとを視る方がいらっしゃると聞きます。たとえば、巫女として名高いガートルード・ミナキのように。ハンナさんも力をお持ちなのですか」
ハンナ「あぁ、いいえ」
はにかむように、ハンナ・ミナキは笑いました。
ハンナ「あたしはただ、想像と現実の区別がつかなくなるだけ。いま、テーブルのうえで踊るイオカステを想像して、その光景を現実のものみたいに思いました。映画を観てるみたいな感じで、映画とちがうのは、ほこりっぽい匂いや手触りがあったこと。ほどほどにしておけって、よく叱られます」
???「おい、あんたたち」
ぶっきらぼうに声をかけたものがいて、話は中断されました。バーのおもてに立っていたはずの用心棒が、戸口に上半身をつっこむようにしてハンナたちを見ていました。
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つづきます!
Thanks to all MOD/CC creators!
And I love Sims!
あとがき
前回、お話のさいごに「あとがき」をつけてみたところ、おさまりがいい感じがしました。なので、これからもお話のページの終わりに「今回のエピソードを書いたときの感想」をくっつけてみようかなと思います。
今回の話で登場した「暗黒時代の秘宝特別展」というのは、プレイヤーの頭のなかでは「古代エジプト展」みたいな感じのイメージがありました。
あと、どさくさに紛れて「ソニアが意外と高身長である」という設定をお披露目することができたのが嬉しかった。書きこむ隙がなかったのでハンナの身長については言及がありませんが、ハンナちゃんは一六七センチ。うちの女子たちは(日本の感覚でいうと)割と高身長の子が多いです。
あ!
あと、さいごにもう一個!
なんか、一年後くらいには自分でも忘れていそうなのですが、本日の表紙画像に写ってる「虚空にむかって伸ばされた手」は、ハンナちゃんのおててでした。
(これ)
お読みいただき、ありがとうございました!!
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