きみの運命の人

2020年10月20日火曜日

【物語のカケラ】 ドレス少年世帯

t f B! P L
こんにちはー。

本日は、また「ニカラスが引越してきたお話」の続きですー。
十二年の時を経て、スラニの島にある「子供時代を過ごしたおうち」に戻ってきたドレス少年・ニカラス。ところが入居した途端に、少年は不思議な生き物(オバケ?)と出会います。ニカラスはその生き物にゴハンを食べさせ、そして……

それでは、本日もまいりましょう!



スラニに引越してきた日の夜……。

ニカラスは懐かしい寝室(それは昔、ニカラスが毎晩、おかあさんに見守られて眠っていたお部屋でした)で、ぐっすり休みました。不思議なオバケがおうちのなかをウロウロしていることは、どうしてか全然気になりませんでした。


不思議な生き物(?)は、自由に寝室を出入りしていました。お外をパトロールしたり、ソファーで寝そべったり、時にはニカラスの足許に来たりして過ごしたのです。


ニカラス「なんだか面白いね?きみとぼくは、初めて出会ったのに。ぼくたちは、お互いを自然に受け入れちゃってる。ぼくたち、相性ピッタリっていう感じがしない?」

オバケ「わふ、わふわふ!」

真夜中、ニカラスがトイレに起きた時、ひとりと一匹はそんな話をしました。


スラニにまた、朝がやってきました。ニカラスは身支度を整えて、管理人さんに挨拶に行くことにしました。管理人さんは浜辺のおうちに住んでいて、ニカラスがスラニを離れていた十二年の間、ずっと留守宅を保守してくれていたのです。


ニカラス「おはようございまーーーす!カナーリオでーーーす!」

???「はーーーい……!こっちにいまーーーす……!」

管理人さんの声はおうちのなかではなく、海のほうから聞こえました。

ニカラス「…………?」


おうちの裏にまわると、浅瀬で波を楽しんでいる管理人さんの姿がありました。

ニカラス「管理人さーん!アサガオちゃーん!」

ニカラスは口許に両手を当てて、メガホンのようにしながら呼びました。管理人さんは振り向いて、波しぶきのようにキラキラした笑い声をあげました。

アサガオ「おはようございます、ニカラス・カナーリオ!ご自宅の住み心地はどう?」

ニカラス「とても、いいです!アサガオちゃんは昔のまんまだねぇ!とっても綺麗で、可愛いね?」

ニカラスは、心の底から称賛しました。

アサガオ「ふふ。人魚にとっての十二年は、人間(シム)にとっての【まばたきするほどの刹那】と同じ。歳なんか取らないわ。でも、あなたも変わってないよ!ニカラス・カナーリオ。身体は大きくなったけど、あなた子供の頃からそうやって、女の子を口説いてた」

アサガオちゃんはあけっぴろげに笑うと、水を漕いで、やっとニカラスのほうへやってきました。


アサガオちゃんの鱗が朝日にきらめくのを見た途端、ニカラスはまるで【アクアマリンを散りばめたティアラを見た時】のように美を感じて、胸がドキッとするのを感じました。


アサガオ「どうしたの?顔が赤いよ?」

アサガオちゃんが、きょとんとして言いました。

ニカラス「ううん……。アサガオちゃんが、ぼくの【魂の片割れ】なのかな……って思ったの」


その言葉にアサガオちゃんは、小さな子供を見る母親のような笑みを浮かべました。もう「ひれ」はしまい込んでいて、人間のような「足を持つ姿」に変身しています。


アサガオ「本当に変わってないのね、ニカラス・カナーリオ。【運命】は、あるのかもしれないし、ないのかもしれない。たとえ運命が来たとしても、それを掴むかどうかはあなた次第なんだよ。もしかしたら、怖い運命から逃げ出すことだって出来るかもしれない」


ニカラス「運命は、きっとあるよ。それは、とても素敵なものなんだ。ぼくはいつか、ぼくの【魂の片割れ】を見つけ出して、一生一緒に生きるんだもん」

ニカラスは明るく言いました。

アサガオ「あなたのご先祖様……可憐なコハナ・ミナキに、双子の妹のユビ・ミナキが居たみたいに?」


ニカラス「うん、そうだよ?幼い頃にユビを喪(うしな)って、コハナは生涯、妹の面影を追い求めていたんだって。ぼくが、小さい頃からずっと【誰か大切な人を見つけたい】と思ってるのは……【ぼくの片割れを捜し出したい】と、心の底から感じてるのは、ぼくにコハナの血が流れてるからなんだよ?」

ロマンチックな幻想を、ニカラスはうっとりと語りました。

アサガオ「……うん、そうかもしれないね」

アサガオちゃんはおおらかに頷いて、夢見る人ニカラスをそっと見守るつもりのようでした。

アサガオ「……あなたのご自宅、気に入ってくれたならよかったわ。何か、困ってることはない?なんでも言って?」

ニカラス「困ってることはないけど……あ、そうだ」


ニカラスの頭に、あの不思議な生き物のことが浮かびました。というより、ニカラスはそもそも、管理人さんにあのオバケのことを訊きに来たのです。アサガオちゃんに見とれているうちに、それをすっかり忘れてしまっていたのでした。

ニカラス「アサガオちゃん、ぼくのおうち……ずっと誰もいなかった?あのね、ええと……昨日、ぼくがおうちに入ったら、その……先客?みたいなヒトがいたんだけど……」

どう説明したものかと思いながら、ニカラスはおずおずと話し始めました……。

つづきます!


Thanks to all MOD/CC creators

(ポーズは、自作です……)


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