本日は、また「ニカラスが引越してきたお話」の続きですー。
十二年の時を経て、スラニの島にある「子供時代を過ごしたおうち」に戻ってきたドレス少年・ニカラス。ところが入居した途端に、少年は不思議な生き物(オバケ?)と出会います。ニカラスはその生き物にゴハンを食べさせ、そして……
それでは、本日もまいりましょう!
*
スラニに引越してきた日の夜……。
ニカラスは懐かしい寝室(それは昔、ニカラスが毎晩、おかあさんに見守られて眠っていたお部屋でした)で、ぐっすり休みました。不思議なオバケがおうちのなかをウロウロしていることは、どうしてか全然気になりませんでした。
不思議な生き物(?)は、自由に寝室を出入りしていました。お外をパトロールしたり、ソファーで寝そべったり、時にはニカラスの足許に来たりして過ごしたのです。
ニカラス「なんだか面白いね?きみとぼくは、初めて出会ったのに。ぼくたちは、お互いを自然に受け入れちゃってる。ぼくたち、相性ピッタリっていう感じがしない?」
オバケ「わふ、わふわふ!」
真夜中、ニカラスがトイレに起きた時、ひとりと一匹はそんな話をしました。
スラニにまた、朝がやってきました。ニカラスは身支度を整えて、管理人さんに挨拶に行くことにしました。管理人さんは浜辺のおうちに住んでいて、ニカラスがスラニを離れていた十二年の間、ずっと留守宅を保守してくれていたのです。
ニカラス「おはようございまーーーす!カナーリオでーーーす!」
???「はーーーい……!こっちにいまーーーす……!」
管理人さんの声はおうちのなかではなく、海のほうから聞こえました。
ニカラス「…………?」
おうちの裏にまわると、浅瀬で波を楽しんでいる管理人さんの姿がありました。
ニカラス「管理人さーん!アサガオちゃーん!」
ニカラスは口許に両手を当てて、メガホンのようにしながら呼びました。管理人さんは振り向いて、波しぶきのようにキラキラした笑い声をあげました。
アサガオ「おはようございます、ニカラス・カナーリオ!ご自宅の住み心地はどう?」
ニカラス「とても、いいです!アサガオちゃんは昔のまんまだねぇ!とっても綺麗で、可愛いね?」
ニカラスは、心の底から称賛しました。
アサガオ「ふふ。人魚にとっての十二年は、人間(シム)にとっての【まばたきするほどの刹那】と同じ。歳なんか取らないわ。でも、あなたも変わってないよ!ニカラス・カナーリオ。身体は大きくなったけど、あなた子供の頃からそうやって、女の子を口説いてた」
アサガオちゃんはあけっぴろげに笑うと、水を漕いで、やっとニカラスのほうへやってきました。
アサガオちゃんの鱗が朝日にきらめくのを見た途端、ニカラスはまるで【アクアマリンを散りばめたティアラを見た時】のように美を感じて、胸がドキッとするのを感じました。
アサガオ「どうしたの?顔が赤いよ?」
アサガオちゃんが、きょとんとして言いました。
ニカラス「ううん……。アサガオちゃんが、ぼくの【魂の片割れ】なのかな……って思ったの」
その言葉にアサガオちゃんは、小さな子供を見る母親のような笑みを浮かべました。もう「ひれ」はしまい込んでいて、人間のような「足を持つ姿」に変身しています。
アサガオ「本当に変わってないのね、ニカラス・カナーリオ。【運命】は、あるのかもしれないし、ないのかもしれない。たとえ運命が来たとしても、それを掴むかどうかはあなた次第なんだよ。もしかしたら、怖い運命から逃げ出すことだって出来るかもしれない」
ニカラス「運命は、きっとあるよ。それは、とても素敵なものなんだ。ぼくはいつか、ぼくの【魂の片割れ】を見つけ出して、一生一緒に生きるんだもん」
ニカラスは明るく言いました。
アサガオ「あなたのご先祖様……可憐なコハナ・ミナキに、双子の妹のユビ・ミナキが居たみたいに?」
ニカラス「うん、そうだよ?幼い頃にユビを喪(うしな)って、コハナは生涯、妹の面影を追い求めていたんだって。ぼくが、小さい頃からずっと【誰か大切な人を見つけたい】と思ってるのは……【ぼくの片割れを捜し出したい】と、心の底から感じてるのは、ぼくにコハナの血が流れてるからなんだよ?」
ロマンチックな幻想を、ニカラスはうっとりと語りました。
アサガオ「……うん、そうかもしれないね」
アサガオちゃんはおおらかに頷いて、夢見る人ニカラスをそっと見守るつもりのようでした。
アサガオ「……あなたのご自宅、気に入ってくれたならよかったわ。何か、困ってることはない?なんでも言って?」
ニカラス「困ってることはないけど……あ、そうだ」
ニカラスの頭に、あの不思議な生き物のことが浮かびました。というより、ニカラスはそもそも、管理人さんにあのオバケのことを訊きに来たのです。アサガオちゃんに見とれているうちに、それをすっかり忘れてしまっていたのでした。
ニカラス「アサガオちゃん、ぼくのおうち……ずっと誰もいなかった?あのね、ええと……昨日、ぼくがおうちに入ったら、その……先客?みたいなヒトがいたんだけど……」
どう説明したものかと思いながら、ニカラスはおずおずと話し始めました……。
つづきます!
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Thanks to all MOD/CC creators
(ポーズは、自作です……)
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