本日は、また「アーモンドちゃんとグリフィンのお話?」ですー。
【失踪した少女、イナ・ポートランドの謎を追え】
グリフィンの秘密の任務は、重要な局面を迎えました。型破りな同僚・ムーアの助言(?)を得て、ついにポートランド邸に潜入することになったのです。一方、グリフィンに情報を与えたムーアのほうは、その後どうしたのでしょうか……。
それでは、本日もまいりましょう!
(最終加筆修正:2023年9月29日)
*
グリフィンとの通話を終えて、メルヴィル・ムーアはヒューッと口笛を吹きました。
ムーア「さてと、スノウフイールの状況はわかった。おれは、おれの仕事をするかね」
彼は目許にかかってきた髪を指先ではらい、顔の筋肉をねじまげて、好青年に見えそうな笑顔を作りました。シャツの襟を直し、ポケットに手をつっこむのはやめて、ネモフィラ・ポートランド嬢のところにもどりました。
ネモフィラ「お電話は、もうよろしいんですの?」
ネモフィラ嬢が、澄んだ声色で尋ねました。
ムーア「まあね。毎日夕方の四時半に、ヘンフォードの祖母に電話する約束なんだ。ちゃんと食事をとったか、ちゃんと散歩に行ったのか……そんなことを訊くために。ばあちゃん、きょうは菜園の草とりをしたらしい。待たせて悪かったね」
ネモフィラ「おばあさまを思いやるお心は、すばらしいです」
嘘八百のムーアを疑わず、ネモフィラ嬢はほほえんでいます。その典雅な物腰を見ると、ムーアのような男は、むずがゆさを覚えるのでした。
ムーア「ネモフィラ、なにか食べるか。きみがパスタを好きだといいけれど。きみが少女時代をすごしたという、尼寺の話を聴かせてほしい」
ネモフィラ「パスタは大好きです。そしてもちろん、お望みのままにお話ししましょう。メルヴィルさんがロブ教に興味を持ってくださって嬉しい。なにからお話ししましょうか」
ムーア「きみの寺院に祀られていたという【調整の精霊】ヘレネについて。彼女に対する解釈は、ロブ教のなかでも宗派によって大きく異なる。きみのところでは、ヘレネはどう語られる」
ネモフィラ「おくわしいのですね。我が宗派では、ヘレネは滅びのあとに種をまくと伝えられております。大災害によって人間の世界が滅んだのち、ヘレネは生き残った人びとに安寧をもたらすだろうと、予言者シェルシーラは語りました」
ネモフィラ「また二六八年初春のこと、尼僧フルルギナは三人の魔法使いを連れて、銀鈴山(ぎんれいさん)を目指したといわれています。当時、黒獅子門(くろししもん)は開かずの門と呼ばれ、フルルギナが霊杖をかざすと……」
…………。
…………。
一方。
高台の邸宅……ポートランド邸の横手では。
グリフィン・トワイライトが、ポケットから【仕込まれていた発信機】を見つけたところでした。彼は二色ボールペンの先をスイッチに差しこんで、発信機の電源を切りました。
グリフィン(……左のポケットにはほとんど手を入れることがない、というおれのクセを知ってて仕掛けたのか。わかっていたことだが、ムーアは見た目より冴えてる)
グリフィンは自分の荷物のなかに【黒胡椒のつぶのような発信機】をほうりこみました。こんな片づけかたをしてもモノを紛失しないのは、グリフィンの七不思議のひとつでした。
携帯電話の電源を切り、グリフィンはポートランド邸の前庭に侵入しました。
といっても、招かれた人が屋敷にむかうのと変わらない足取りでしたけれど。
グリフィンは堂々と、正面玄関に立ちました。
右のポケットから【先端が鉤になっている工具】を取りだします。それは、軍の雑用をなりわいとする者たちの間では【万能解錠器】の愛称でとおっているツールでした。使い方にコツがあり、名前ほど「万能」ではないというのが、グリフィンの意見でした。
カチャリ。
グリフィンがまだ【解錠器】を差しこんでいないのに、ドアノブからささやかな音がしました。グリフィンはあわてることなくドアから離れて、様子を見ました。アーモンド・ポートランドがもどってきて、内側から鍵を開けたのでしょうか。
彼はオオカミのように神経を研ぎ澄まし、人の気配をつかもうとしました。ドアノブは静まり返っています。だれかがドアの向こうにいる気配はありません。
グリフィン(……違う)
と、グリフィンは気がつきました。
グリフィン(ロックがはずれたんじゃない。いまのは、おれの心のなかにだけ聴こえた音だ。おれの魔力がおれの右手を離れて、自動的に魔法を編纂したのか。そんなことが起こりえるのか。目のまえの障壁をうちくずす魔法、むりやりに道をひらく術。……開かずの門をこじ開けた霊杖の伝説にちなんで、偽杖のちからと呼ばれる被制限魔法だ。だがおれにはいま、魔力を放出した感覚はなかった)
躊躇を棄て、グリフィンはドアに向かって歩きました。まるで、閉じているドアに体当たりするように。
……ぶつかる!
しかし、グリフィンはドアに鼻をぶつけることもなく、体当たりした反動でしりもちをつくこともありませんでした。
ドアは両手を広げて迎え入れるように溶解し、なにかぐんにゃりとしたものが、グリフィンの手首をつかみました。グリフィンの姿は奇妙なちからによってずぶずぶと、邸宅にひきずりこまれていきました。
*
つづきます!
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今回のポーズ
SS3~4枚目(ムーアとネモフィラ)のポーズは、
よりお借りしました。いつもありがとうございます!
Thanks to all MOD/CC creators!
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