本日は、また「アーモンドちゃんとグリフィンの話」です。
「古書店を兼ね備えたカフェ」で出会った男子大学生(?)が気になる少女・アーモンド。一方、その大学生こと(ほんとうは大学生ではないのですが)グリフィン・トワイライトが、アーモンドを尾行していることが判明しました。
それでは、本日もまいりましょう!
(最終加筆修正:2024年4月12日)
*
アーモンド・ポートランドとグリフィンによって、物語ははじまりました。
ここでときを巻きもどし、そもそもの話を打ちあけましょう。
物語のはじまりから遡ること一か月前。
勤務中のグリフィンは、同僚によって呼びだされました。そのときすべての問題は、もうはじまっていたのです。そうとは知らず、グリフィンはストレンジャービル郊外に位置する軍の宿舎で、清掃の業務に就いているところでした。
???「グリフィン・スノウフイール」
グリフィン・スノウフイール。
それは、グリフィンが【魔法の世界】の外側……【物質の世界】で使っている偽名でした。
もっとも、彼がグリフィン・トワイライトと名乗るようになる前……トワイライトという栄誉ある称号を冠する前は、彼は実際に「グリフィン・スノウフイール」と呼ばれていたので【完全にニセの名前】というわけではないのですが。
グリフィン「メルヴィル・ムーア」
感動のない顔で、グリフィンは自分を呼んだ同僚の名を口にしました。
ムーア「おうよ。きょうも労働してるね。感心なこった」
グリフィン「すべるから気をつけろ。入ってくるな」
グリフィンは床に洗剤を撒いてみがいていたので、足許がすべるのは事実です。しかし彼が言っているのは「話ならあとにしろ」という意味でした。グリフィンは社交を楽しむタイプではなく、仕事中に私的な話をするのは苦手でした。
ムーア「はっはっは。心ない人形みたいなフリはやめろよ。おまえをひとりきりにしてさしあげて、社交という苦行から解放してやりたいのはやまやまだけどね、今夜はそうも行かないわけよ。……マルボロから新しい指示が来てる。副業の時間だよ」
ムーアは皮肉を言っているのではなく、三百六十五日このしゃべり方です。
グリフィンは振り向きもせず、モップに力を込めました。
グリフィン「わかった。あとで行く」
ムーア「おうよ」
一時間後。
グリフィンは【いまは使用されていない、訓練場跡地】を歩いていました。
グリフィン「なんだ」
三十五番廃倉庫にムーアの姿をみとめると、グリフィンは会話を再開しました。
マルボロからの新しい指示とは、なんだ。
同僚は、火のついていないたばこをくわえたまま苦笑しました。
ムーア「第一声がそれかい。おまえは今後の人生のために、世間話ってものを身に着けたほうがいいわな。ま、んなこた、どうでもいいんだわ。これを見てくれよ」
人差し指と中指にはさむかたちで同僚が差し出したのは、写真でした。
グリフィンは受け取り、仕事のうえの資料を見る目でながめました。
ムーア「その娘の名は、イナ・ポートランド。もし生存しているとすれば、今年で二十二歳。あ、おまえと同い年か。若いね。イナの生家は、このストレンジャービルの高台に百年前からある、歴史的な邸宅だ。知ってるだろ。あのでかい坂道を行ったところにある、赤屋根の……スノウフイール、どうした」
長いまつげを伏せ、沈んだ顔をしているグリフィンにムーアが言いました。
グリフィン「聴いてる。つづけろ」
グリフィンは感動のない声で言いました。
ムーアは目をすがめるようにして、グリフィンの表情を観察しました。
ムーア「なんかあったら言えよ。腹くだしの薬くらいなら分けてやれるんだし」
グリフィン「いらない」
ムーア「イナ・ポートランドは、ありふれた家出娘だ。十七歳のときにストレンジャービルをとびだし、サンマイシューノで友だちのところに転がりこんだ」
ムーア「十八歳までサンマイシューノ近辺を彷徨っていたらしいが、その後は消息不明。おまえとおれの任務は、彼女の生家であるストレンジャービルの邸宅で、彼女の痕跡を見つけることだ」
グリフィン「痕跡。彼女が生家に潜伏しているか確かめろということか。彼女がひそかにストレンジャービルにもどっていると。そうではなく、邸宅でイナの遺伝子情報のサンプルを探せということか」
ムーア「後者だ。おれたちはイナ・ポートランドの遺伝子情報……つまり、髪かなにかが落ちていないか探す。ま、血液や皮膚の破片なんかでもいいわけだが」
いまになってこの指令がくだったということは、最近になってイナ自身が関与する、重要度の高い事件が発生したということです。重要度の高い、というのは謀略とか地域の安全にかかわるとか、そういったこと。そうでなければ、軍がただの家出少女に注目するはずがない。その事件を調べるため、イナの遺伝子情報が必要になった。
【事件現場】はイナの生家かもしれないし、そうではなく、単に家ならサンプルが手に入りそうだという話かもしれない。現在グリフィンにわかるのは、この程度です。
グリフィン「警察の仕事だ」
いちおう、それを主張しておきます。
グリフィンもムーアも、軍の施設で清掃業務に就くかたわら【副業】に手を染めていますが、なんでも引き受ける掃除屋ではない。
ムーア「おれもそう言ったけど」
グリフィンは写真に目を落とし、話をもどすことにしました。
グリフィン「イナ・ポートランドは十七歳で家出したと、おまえは言った。五年前だ。彼女がいま生家にもどっているならともかく、そうでなければ、五年より前に残された遺伝子情報を探すということか」
五年前に床に落ちた髪一本がいまもそこに残っているかと考えると、それはすこしばかり現実味のない話に思えます。
ムーア「ムーアは【探せ】とだけ言ってる。だが、第二のプランも用意されてる。イナの痕跡が見つからない場合は、イナの親族の遺伝子情報を入手しろと。こっちはまぁ、カンタンな仕事だ」
ムーア「ストレンジャービルにはいま、イナのふたりの妹が暮らしてる。ネモフィラ・ポートランドとアーモンド・ポートランド。ネモフィラが尼寺を出て山を下りたのにあわせて、アーモンドもウィンデンバーグの寄宿学校からもどってきたらしい。かっこうの獲物だ」
グリフィン「……親族の遺伝子情報と、なにかを照合する。そんな話が持ちあがってるのなら、イナ・ポートランドらしき死体が上がったのだと考えるべきだろう」
グリフィンは言葉を切り、つづきを心のなかでつぶやきました。
グリフィン(イナが死んだ。軍が頭をつっこむほどの事件に巻きこまれて)
ムーア「おれにはなにもわからんよ。おまえとそう変わらない下っ端だからな。どうしたよ、今回はやけに食いつくね」
年上の同僚は、たばこをもてあそびながらほほえみました。
*
つづきます!
*
今回のポーズ
SSの6枚目(イナの古い写真)・10枚目(ネモフィラとアーモンド)のポーズは、
よりお借りしました。いつもありがとうございます!
Thanks to all MOD/CC creators!
(そのほかのポーズは、自作です……)
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