本日は、また「アーモンドちゃんとグリフィンのお話?」です。
「高台の邸宅」……ポートランド邸に潜入した秘密工作員・グリフィン。
彼はついに、失踪したイナ・ポートランドの私室にたどり着きました。いまや廃墟のようになっているその部屋は、彼にどんな出来事をもたらすのでしょうか……。
それでは、本日もまいりましょう!
(最終加筆修正:2023年9月29日)
*
グリフィン(ここが……イナ・ポートランドの部屋なのか)
そう結論づけて、グリフィンは歯のあいだから息を吐きました。
消息不明になっている少女の部屋が、まるで百年前から放置されている廃墟のように、朽ち果てている。その事実は、グリフィンの心を暗くしました。
調度品が残らず風化しているところを見ると、ここでイナ・ポートランドの痕跡を見つけ出すのは、並のしごとではないでしょう。
それでもグリフィンは機械的に身体を動かし、調査をはじめます。床を這いまわり、放置されている枕を虫眼鏡で凝視し、イナ・ポートランドのものかもしれない髪の毛・爪のかけら・血液のシミなどを探すのです。
グリフィン(部屋自体はくずれ落ちそうだが、掃除はほんとうに行き届いている)
グリフィン(ネモフィラは、ロブ教の尼寺にいたのだったな。【ロブ教の僧侶は意外にも、掃除の腕では世界一だ】という記事を読んだことがある。星付きホテルの清掃係が、ロブ教の寺院に掃除の基本を学びにいくと。……どうやら、その通りのようだ)
かろうじてキャビネットの奥に残っていた「小指の爪の先ほどの、ほこりのかけら」を、彼はサンプルの小瓶に入れました。このほこりに「イナの遺伝子情報をしめすなにか」がふくまれていないとも限りません。
机のうえを調べようとしたとき……彼は、壁に掛けられている額縁に気がつきました。
サイズから見て、写真用の額縁でしょう。けれど、写真は入っていません。
グリフィン「…………」
かつては、家族のそれが飾られていたのか。
それとも、イナ・ポートランドのそれが剥がされたのか。
またぞろ陰鬱に考えていたグリフィンの耳に、だれかの呼吸音が聴こえました。
???「教えてやろうか、だれが写っていたのかを」
グリフィン「…………!?」
グリフィンは野生の獣のように、振り返りました。
だれもいません。キッチンにいるはずのアーモンド・ポートランドが階段をのぼって、この部屋に近づいてきたわけでもありません。
息を殺しているグリフィンの頭のなかに、だれかの笑い声が響きました。
???「いつまで、自分を抑えこんでいるつもりだ」
*
頭を殴られたような衝撃が、だしぬけにグリフィンを襲いました。
実際に殴られたのかと思ったほどでした。
脊椎に鉛を流しこまれたかのように、全身が二倍の重さになる。関節が悲鳴をあげて軋みだし、グリフィン自身の体重を支えられなくなる。ぐんにゃりとしたものに脚をつかまれ、床に引きずり込まれるかのような感覚がきて、彼は机にドンと手をつきました。
グリフィン(こんなときに。最近は、この症状は出ていなかった)
危機は、それだけでは終わりませんでした。
グリフィンははっきりと、彼の背後に立つ人物を感じました。
黒いフードをかぶった、知らない男。
その男が敵意をこめ、グリフィンをまっすぐに指差している。グリフィンの背中に第三の目が現れたかのように、彼自身の背後にいる者が視(み)えるのです。
だが、鉛になった身体は動かない。
相手の姿は視えるのに、その匂いも質量も感じない。
背中に氷をあてられたかのような緊張が、グリフィンに激しい動悸をもたらしました。
グリフィン「失せろ」
食いしばった歯のあいだから、彼は呪詛を投げつけました。
フードの男は、酷薄な笑いを洩らしました。肩をすくめ、身を翻し、その姿が凧のように、夜明けの薄闇のように遠ざかっていきます。
グリフィンはドッと息を吐きました。
全身の毛穴から、安堵の汗が噴き出します。
しかし、身体の不調は続いていて、手足はまだ動きません。筋肉という筋肉が凝りかたまって、彼は机にしがみついています。
トン、トン、トン……という、現実感のある足音が聴こえてきて、彼の意識は覚醒しました。
アーモンド「ネモフィラおねえさま?もう帰っていらっしゃったの?」
騒ぎに気がついたアーモンドが、二階へ上がってくるところでした。
*
つづきます!
*
Thanks to all CC creators!
And I love Sims!
(ポーズは、自作です……)

にほんブログ村
0 件のコメント:
コメントを投稿