こんにちはー。

本日は、また「ロイヤルと裸足の魔女編」です。
都会の魔女マル・フォーンの来訪により、自分に降りかかっている謎について、新たな手掛かりを得たロイヤル。しかしわかったのは、状況は芳しくない、ということでした。そして……?

それでは、本日もまいりましょう!




マル「率直に言います。今、あなたは激しいダメージを受け、あなたの魔力は欠損してます。あなたに術をかけて害した魔法使いは、あなたの魂を切り分け、その魔力を根本(こんぽん)から奪い取ったのでしょう。あなたのなかの空洞を見た限り、失った魔力の量が多すぎる。魔力の枯渇は、魔法使いの生命に関わります。これは剥離と呼ばれる、死に至る外傷。奪い取られた魔力を奪い返すしか、道はありません」

ロイヤル「…………」

マルの冷静な言葉を受け、ロイヤルは彼女から視線をはずして、自分の手元を見ました。彼の体温は低くなり、手の甲にはあまり血色というものがありませんでした。

ロイヤル「……それ、確かな話なのか」

質問ではなく確認のように、ロイヤルは言いました。

マル「あたしが専門に学んだのは、魔法医学なんです。正確なお話が出来ると思ってます」

ロイヤル「……わかった。ありがとう、教えてくれて」

マル「シムの魂を傷つけて魔力を奪い取るなんてことは、魔法界でも重大な犯罪なんです。あなたが良いと言ってくださったら、本部に通報して犯人を捜します。あなたさえ良ければ、ですけど」

ロイヤル「待ってくれ

坊っちゃんは即座に遮りました。

ロイヤル「……ちょっと、込み入った問題が起きてるんだ。どんなシムも手を出せないような謎めいた出来事が、今おれの身に降りかかってる。魔法の国の本部だろうと魔法界の法律家だろうと、どうにもできないのはわかってる。それに、本部はおれのためには動かないと思う。おれの血筋は、本部が保護する【善良な魔法使い】のものじゃないから


(いつのまにかトトがやってきていて、坊っちゃんにそっと寄り添っています……)

マル「…………?

ロイヤルが突然、血筋の話を持ち出したことに、マルは戸惑ったようでした。彼女は説明を求めているようでしたが、ロイヤルはそれ以上何も言おうとしません。

自分がライオネル・トワイライトの子孫であること、魔法界を追放された一族の末裔であること……。それらをユキちゃんに話すことは出来ても、出会ったばかりの「本物の魔女」に打ち明けるのは、難しいことでした。

自分がノーマン一族の者であると名乗れば、いま影の世界で静かに暮らしている一族の者全員が、非難に満ちた表の世界(魔法の国)に引きずり出されるかもしれない……。ノーマンの名は、魔法界では特別なものです。「陰の者」として生きてきた彼の警戒心と劣等感が、彼を黙り込ませていました。

マル「あなたがどのような出自の方なのか、あたしにはわかりませんけど……、あなたの血筋と、あなた自身がどんなシムかということは、関係がないと思いますよ……?」

ロイヤル「…………」

マル「……わかりました。何かあったら本部にいらして、モーギン様の名前を出してください。そうすれば、本部も取りつがざるを得ないから、あたしのところまで連絡が下りてくると思うんです。きっと、あなたの相談に乗れると思います。咎人とは言っても、モーギン先生のお力は絶大ですからね?」

そう言って、最後にマルはいたずらっぽい、チャーミングな笑みを覗かせました。


ロイヤル「ありがとう。きみの親切には、ほんとに感謝してる」

ふたりは立ち上がって握手をかわし、ロイヤルは心からそう言いました。
そして……


マルが帰って行ったあと、坊っちゃんは沈み込んでいました。

やるべきことは、決まっているのでした。リノを、見つけ出さなければなりません。けれど、ここでいくら考えたところで、彼女が今どこに居るのか、わかるはずもありません。

坊っちゃんの頭は、少々麻痺していました。どこか遠くのほうで次々に考えが浮かぶのですが、そのどれもが泡のように消えていきます。彼はこれまで日々考えていて、いまは考えることに疲れていました。次々に矢を射かけられているような日々だと、彼は思いました。

ユキ「ロイヤル……

ユキちゃんが躊躇いがちに声をかけました。彼女はロイヤルを気遣って、わざわざ少し距離のある、隣のテーブルにちょこんと着席しました。

ロイヤル「聞いてた?」

ユキ「えっ」

ロイヤル「今の、マルとの話」

ユキ「……ごめん、聞いてた」

ロイヤル「いいよ。おれのほうこそ、心配させてごめん」


ロイヤル「…………。なんでだろう。兄妹のことを考えてた

ユキ「えっ」

ロイヤル「おれの兄貴や姉さんや、妹のことを思い出してたんだ。……もし、おれが八方塞がりになってじたばたしてるって打ち明けたら、それで【助けてくれ】って兄妹に言ったら、きっとみんな助けに飛んできてくれるんだろうなって。特に兄貴なんかは、おれに代わって、おれが考えもつかないような方法で全部解決してしまうかもしれない。枯渇してるっていうおれの魔力の代わりに、兄貴の魔力を借りることだってできるはずだ。おれの魔力は元々、兄貴から奪ったものなんだから。……違う、そうじゃない。それじゃ、ダメなんだ」

ユキ「…………?」

ロイヤルの話はだんだん独り言になっていき、詳しい事情をユキちゃんに説明してくれることはありません。そもそも彼が背負っている事情は少々特殊すぎる、という面があります。

ロイヤル「おれも、リノとそう変わらない。……グリフィン。誰かのものを奪い取って、おびやかそうとしたという意味では」

ユキ「…………」

ロイヤル「マルの話……、ちょっとキツかったけど、そういう話をされたからこそ頭が冷えた。おれは兄妹の力を借りずに、自分でやりたい。そして、ユキの言う通りだったよ。もしおれがリノの事情を聞かず、彼女に奪われたものを奪い返してやっつけてしまったら、結局それは、彼女自身がおれたちにしたことと同じだ。おれは、彼女のようにはならない。彼女を見つけて、彼女の話を聞いて、それから自分で決めるんだ」

ユキ「ロイヤル!」

ユキちゃんの顔がほのかに明るくなり、花のような笑顔が浮かびました。
ロイヤルは照れくさそうに笑ってから、まっすぐにユキちゃんの目をとらえました。

ロイヤル「ユキはおれが守る。その気持ちはおんなじだ。ユキ、一緒に来てくれないか?店の外まで」


ユキ「何をするの?外で」


ロイヤル「うん。頭がクリアになったら、思いついたことがあってさ。新しい魔法を試すんだ

つづきます!


ここからは、プレイヤーが喋らせて頂きますー。

じつは、今回のお話に入りきらなかった事実があります。
以前からお読みいただいてる方は「あれ?」と思われたかな?
と思いますので、そのへんの補足を……。

(以下、画像がないので読みづらいです。すみません)

ロイヤルとマル・フォーンの会話を見ていると、まるでふたりが初対面のように見えると思うのですが、じつは「マジカル旅人世帯」のラベルで書いていた頃のエピソードで、グリフィン&ロイヤルの旅に、マル・フォーンが深く関わったことがありました。

その回は、兄弟の呪いを解くカギを探して旅立った水の精霊シャーロッタが、マル・フォーンを訪ねて助言を求める……というような内容だったのですが(その話は、たとえばこのへんにあります)そもそもマルは「魔法屋ほうき星」を経営してて、そこでシャーロッタが従業員をやってた、という経緯があります。

つまり、グリフィン&ロイヤル兄弟とマル・フォーンの世帯は、間接的には元々つながりがあった訳です。
というか、兄弟にとって、マルは結構「恩人」です。

しかし、シャーロッタはマルの許で働いていても、兄弟のおうちに帰ったあと「雇い主について詳しく語る」ことはありませんでした。

そして、兄弟の呪いについてマルの許へ相談に訪れた際も、シャーロッタは「兄弟の本名(フルネーム)」を打ち明けることはしませんでした。その後、マルはシャーロッタの旅に同行して、兄弟のことをいろいろ聞いたのですが、そこでフルネームが登場したことも、一度もありません。そしてマルは、兄弟の顔も知らない、と。

そのため、今回のロイヤルとマルは「過去にニアミスがあったのに、気づいていない」という、意外な(?)状態になっております。ロイヤル、と名乗ったのを聞いても「あのロイヤル」だとは思わなかったんですね?今回のロイヤルは「ロイヤル・バーンウッド」とフルネームを名乗っていないのです。

……これ、矛盾しないように設定を見直した時、自分ですごくびっくりしました。てっきり、マルはロイヤルのことをよく知ってると思ってた……!

以上、長々と裏設定(?)をお話しさせて頂きました。
お付き合い頂き、ありがとうございます!


今回お借りしたポーズ

SSの4枚目:頬杖をつくロイヤル
SSの5枚目:突っ伏しているロイヤル


他、沢山のMOD・CC・ギャラリー作品のお世話になりました。
すべてのクリエイター様、ビルダー様に、心より感謝しております!
Thanks to all MODS creators and all builders!



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