こんにちはー。
本日は、また「ロイヤルと裸足の魔女編」ですー。
「血の繋がりを遡上する魔法」をついに完成させ、リノ(フォレスティーナ)の許に瞬間移動したロイヤルと、彼を支え守るユキちゃん。そして忠犬のトト。再び、対峙の時がやってきました……。
それでは、本日もまいりましょう!
*
ロイヤル「リノ」
歩み寄る少年の呼びかけに、リノ(フォレスティーナ)は驚いた様子もなく振り向きました。
リノ「……遅かれ早かれ、あなたは来ると思っていました」
ロイヤル「ユキも一緒だ」
リノ「初めまして、と言うべきでしょうか、ユキ。あなたがわたしの声を耳にするのは、これが最初でしたね」
リノの声は凛としていながら、シムらしい感情というものが含まれていませんでした。
ユキ「……うん」
ユキちゃんの知っている「フォレスティーナ」と、目の前のリノの態度には、身も凍るほどの落差がありました。しかしユキちゃんは動揺を隠して、落ち着いた顔をしていました……。
ロイヤル「リノ。どうして黙ってたんだ、本当はきみが話せるってこと」
言いたいこと、尋ねたいことはあまりにも多かったはずですが、彼は思わずといった感じで、まずそれを口にしました。
ユキ「ロイヤル」
彼の口調にチリリとした怒気と鋭さが混じったことに気づいて、ユキちゃんが低く制しました。
ロイヤルは息をついて、かすかにほほえみかけながら答えました。
ロイヤル「……平気。おれもリノも、争ったりしない。今の彼女には、闘志が感じられないから」
リノ「声を」
ロイヤル「…………?」
リノ「……見知らぬ者にわたしの声を聞かれることを、わたしは何より恐れていました」
ロイヤルの問いに答えて、彼女は冷静に話し始めました。
リノ「解放軍の参謀であるわたしの首を、ヴァンパイアどもは長らく渇望していた。だからわたしは常にフードをかぶり、敵に顔を知られてはいなかったのです。だが、ただ一度、わたしは愚かな行動をとりました。我があるじに代わり隊を率いた夜のこと、わたしは部下たちに号令をかけ、その声をヴァンパイアの斥候に聞かれた。わたしの声。敵にとってそれは、わたしの正体をつかむための、ただひとつの手掛かりとなってしまった。その夜から、わたしがあるじの前以外で、声を発することはありませんでした」
ロイヤル「やっぱり、きみは」
【やっぱりきみは、四百五十年前の英雄であるライオネル・トワイライトの妻なのか?】
ロイヤルは、そう確かめようとしました。が、リノは彼のその疑問に対して、興味はないようでした。
リノ「状況は変わりました。わたしがいかに口をつぐみ、声を殺していたとしても……ロイヤル・バーンウッド、あなたがわたしの名を知っている以上、隠すことに意味はありません。わたしは、わたしの真実の姿を消し去ることに、失敗していたという訳です」
ロイヤル「…………」
ふいに、リノは首を巡らせ、晴れた空を見上げました。
リノ「……ここは、死者の国ですか?」
ロイヤル「え?」
リノ「ロイヤル、ユキ。あなたたちはヴァンパイアではなく、やつらの圧政に苦しむ貧しい民衆でもない。清潔な服を着て、温かな料理を食べ、自由を謳歌するあなたたちは、わたしの目には、夢のなかでまどろむ天使のように見える」
ロイヤル「おれたちは……おれたちは、生きたシムだよ」
リノ「本当にそうでしょうか?……わたしは我が軍の勝利のために、自分の命を棄てたのです。最後の作戦の朝、わたしはヴァンパイアどもを根絶やしにするため、我があるじを抱いて敵陣の中心にとんだ。我があるじはそこで偉大な魔力を振るい、わたしは敵もろとも、そのチカラを浴びました。そこまでは憶えています。そしてわたしは……ウィンデンバーグのあの小屋で、目を覚ましたのです。ロイヤル、ユキ、あなたたちとわたしが出会ったあの小屋で」
ロイヤル&ユキ「…………!!」
リノ「わたしは死したのち、肉体を脱ぎ捨てて、今この場所にいるのでしょうか?」
その言葉は、彼女が自分に向けたひとりごとで、答えを求めている様子はありませんでした。
ふいに、ロイヤルは強いめまいを感じました。
強烈な光を浴びた時のように視界が真っ白に塗りつぶされ、その純白の世界の向こうに、彼女……リノのあるじの姿が見えたような気がしました。
ユキ「ロイヤル。……ロイヤル、大丈夫?」
異変に気づいたユキちゃんが、ロイヤルの腕をつかんで揺さぶりました。
ロイヤルは意識を取り戻し、口のなかで何事かつぶやきました。ユキちゃんは彼の肩を支えながら、リノにまっすぐ向き直りました。
ロイヤル「フォレスティーナ。……あなたが、死んだ?」
リノ「そう思っていました。いや、そうではなく何か夢を見ているのかもしれない、とも思っていました。わたしは死の間際、つかのまの平安な夢を見ているのかもしれないと。この夢から醒めた瞬間、我があるじが放った光の刃は再びわたしを貫いて、わたしは血の海に臥(ふ)すことになるのかもしれません。……そう思わせてしまうほど、この世界は、わたしが居た場所とは何もかもが違う。城塞の何倍もの高さを持つ、石の家。馬が曳いている訳でもないのに疾走する車。煙を吐く、鉄の尖塔……」
リノ「この世界は、わたしにはこの世のものとは思えない」
リノ「……かと言って、ここが天国なのか地獄なのかも、分からないのですが」
つづきます……!
*
今回お借りしたポーズ
SSの14枚目(ラストのSS):膝を抱えるリノ
新生まるきぶねスローライフ 様
いつもありがとうございます!
尚、以下4種のポーズは自作です。
SSの1枚目:リノ
SSの6枚目:リノ、口許のアップ
SSの10枚目:リノのあるじ、背中
SSの11枚目:頭に手を添えるロイヤル
今回も、たくさんのMOD・CC・ギャラリー作品のお世話になりました。
すべてのクリエイター様に、心より感謝しております!
Thanks to all MODS creators and all builders!
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