こんにちはー。
本日は、また「ロイヤルと裸足の魔女編」ですー。
「きみはなぜ、おれを襲い、おれの魔力を奪ったのか」と問うたロイヤル。リノは彼に「先に奪ったのは、あなたのほうだ」と断じます。はたしてリノの背中には、ロイヤルと同じ「梟の紋章」が浮かび上がっていたのでした。事態は、最終局面(?)を迎えます……。
それでは、本日もまいりましょう!
*
ロイヤル・バーンウッドは、目の前に立つ彼女を黙って見つめていました。
やがてその唇から、重いため息が洩れました。
ロイヤル「……きっと、そうだろうという気がしてた」
リノ「…………?」
ロイヤル「きっときみは、その紋章を背負ってると思ってたんだ」
ロイヤル「おれの背中に現れた、梟の刺青……。瞬間移動の技を発動させるカギ……。おれはとある助けを借りて、この刺青について調べてもらった。それでわかったのは、この紋章を背負った者は、過去にひとりしか居ないってことだ。それは、英雄ライオネル・トワイライトの妻……。最後の確認だ。きみこそが、言い伝えられたその女。きみの真の名はおそらく、リノ・ミナキ……とでも呼べばいいのか?」
リノ「そう。それが、わたしを表す真の名です。そしてロイヤル、あなたは?わたしをこれほどまでに深く知るあなたは、一体何者だというのですか?」
もはや、失うものは何もないと感じているのでしょうか……。
隠し立てしないリノのの言葉はいっそう強く、剣を突き立てるような響きでした。ロイヤルを支えるように、ユキちゃんが彼の腕を掴んでいます。その握力に励まされ、ロイヤルはついに告げました。
ロイヤル「おれの本当の名前は、ノーマン家のロイヤル。そしておれは、ライオネル・トワイライトときみの、直系の子孫だ」
リノの表情に、一瞬の空白が生まれました。
リノ「馬鹿な」
ロイヤル「馬鹿なことを言ってると、自分でも思うよ。でも、ほかに考えられない。きみは戦場から四百五十年の時をとびこえて、未来の世界に来てしまったんだ」
初めて、リノが笑いました。それは乾いた哄笑で、ロイヤルの父親にそっくりな笑い方でした。四百五十年を超えた血の宿縁を感じ取り、ロイヤルは新たなめまいを覚えました。
リノ「わたしが、時を超えた?……そんなお伽話のようなことが、あるはずはない。あなたはやはり、ヴァンパイアどもの間者で、わたしを惑わせようとしているのか?……いえ、それにしては突飛すぎる作り話。あなたの狙いは、何なのですか!そんなお伽話を語って、あなたに何の得があるというのですか!」
ロイヤル「起きてしまったんだよ!そのお伽話のようなことが、現実に!だって、そうとしか考えらえないだろう?おれもユキも、きみが戦った戦争のことを知ってる。四百五十年前の史実としてだ!おれたちの世界じゃ、その戦争については誰でも知ってて、恢復戦争って呼ばれてるんだ。史上最大の戦い。こっちから見りゃ、きみがここに居ることのほうが突飛だ。どうしたらいいのかなんて、おれにもわからないよ!」
リノ「確かに」
ぴたりと笑いを収めたリノが、シャツを拾って再び羽織りました。壮絶な冷たさで、話しはじめます。
リノ「確かにロイヤル、あなたは時々、驚くほどわたしに似ています。柔和を装いながら、手向かう者に容赦なく噛みつく烈しい気性。わたしの子孫だから似ているのだと説かれたら、そうかもしれないと思ってしまうほどに。……元々、魂のうちの何かが似ていたからこそ、ほんの少しハーブを飲ませただけで、あなたは簡単にわたしに同調するようになった。わたしはハーブによってあなたを使い魔のように手なずけ、それからゆっくりと、あなたの身に移ったわたしの魔力を吸収し直すつもりだった」
ロイヤル「あの雪の夜、きみがおれに飲ませたムラサキタグリバナ」
リノ「そうです。学者たちがそう名付けた花。しかし、そんな名に意味はありません。もともとは、このわたしの指先から生まれ、足許に咲き乱れる魔の花です。わたしは花の一族の女として生まれ、あるじライオネルの妻となった。そして花弁のチカラを使い、あなたを操ろうとした。時が過ぎて花のチカラが満ちた時、わたしはまず、あなたの背中の紋章に触れて、魔力の通り道を開いた」
リノ「しかし、あなたはその意志の強さで、わたしの浸透を妨害した!……わたしは次に、あなたを襲撃した。そのためにあなたを見つけるのは、ごく簡単な仕事でした。あなたとわたしの間で魔力の通り道が開いた以上、あなたの身にある【移動のチカラ】を逆流させてわたしをあなたの許に運ばせるのは、造作もないことですから」
ロイヤル「…………」
リノ「そしてわたしは、わたしの目的を達成した。あなたと争い、闘志に合わせて放出されたあなたの魔力を、我が身に引き入れることに成功したのです。でも、まだ完全ではありません。あなたの身にはまだ、わたしの魔力の残滓が残っているのが見える。……この世界がもし死者の国であったなら、それを取り戻そうが取りもどすまいが、大した意味はありません。わたしもまた死の国の平安にまどろみながら、朽ちてゆくべきかと思っていた」
リノ「しかし、ここが仮にも生者の世界……未来の国であれ何であれ、わたしがまだ生きているのだとしたら……、話は大きく変わってきます」
ロイヤル&ユキ「!!」
リノ「わたしには、まだやることがある。わたしは最期の瞬間まで我があるじと共にあり、あるじのためにのみ死ぬと、定めているのです」
ロイヤル「でも、何もかも、どうしようもない!もしどこかに方法があって、きみがきみの世界に帰れたとしても、すべては……!おれはそのこと、英雄詩を聴いたから……!」
ライオネル・トワイライトは自らの魔力に呑まれて妻を殺し、自らもまた破滅的な最期を迎える。
英雄詩に語られる事実を言おうとして、しかしロイヤルは、どうしても言えませんでした。懸命に生きた過去の者たちの行く末を、神にでもなったような気分で語るなど、彼はそこまで愚かではありませんでした。
リノの凄絶な眼差しの奥に、透明な笑みのようなものが混じりました。
リノ「……すべては、時が決めること。あるじの行く末も、わたしの行く先も、時の神だけが知っている。わたしはただ、すべてを取り戻し、あるじの許に還らねばなりません!」
ユキ「やめて!!」
リノが手をかざして魔力を放った瞬間、ユキちゃんはかばうように、リノとロイヤルの間に身体を割り込ませました。
ロイヤル「ユキ!!」
見えない波動が衝撃波となって襲いかかり、ユキちゃんはロイヤルの代わりにそれを受けて、草の上に吹き飛ばされました。ロイヤルは駆け寄って助け起こそうとしましたが、その手首をリノが捕まえていました。ロイヤルは、動きの悪い我が身を呪い、激しく悪態をつきました。
トトの激しい吠え声が響くなか、
リノ「終わりです」
氷の魔女。
彼女が再度、手をかざし、
彼の最後の魔力が、抜き取られてゆきます……!
つづきます!
*
今回も、ちょっとややこしいので細かく記載させて頂きます。
今回お借りしたポーズ
SSの13枚目「手をかざすリノと、頭を押さえるロイヤル」の画像のうち、「頭を押さえるロイヤルのポーズ」を、Choudu SimS 様よりお借りしました。ありがとうございます!
尚、同画像中の「手をかざすリノのポーズ」のほうは、自作でございます。
尚、
SSの4枚目(横のほうを見るロイヤル)
SSの7枚目(手をかざすフォレスティーナ=リノ)
SSの10枚目(リノ:決戦)
SSの11枚目(吹き飛ばされるユキちゃん)
以上4枚は、自作ポーズ。
その他は、ポーズを使っておりません。
今回も、たいへん沢山のMOD・CC・ギャラリー作品のお世話になりました。
すべてのクリエイター様に、心より感謝しております!
Thanks to all MODS creators and all builders!
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