本日は、また「ロイヤルと裸足の魔女編」ですー。
これが最後の決戦になる「かもしれない」ロイヤルとリノ(フォレスティーナ)の対峙の時がやってきました。リノはそこで、耳を疑うような事実を口にします。彼女は一度は致命傷を負い、死を迎えたのちにウィンデンバーグにやってきたのだと。ユキちゃんをまじえ、三者の問答は続きます……。
それでは、本日もまいりましょう!
*
リノ「この世界は、わたしが居た場所とは何もかもが違う。城塞の何倍もの高さを持つ、石の家。馬が曳いている訳でもないのに疾走する車。煙を吐く、鉄の尖塔……。この世界は、わたしにはこの世のものとは思えない。……かと言って、ここが天国なのか地獄なのかも、分からないのですが」
無表情に見えていたリノの目の奥に、悲しみと、絶望のようなものが浮かびました。
しかし、その色に気がついたのは、ユキちゃんだけでした。ロイヤルはその時、地面に膝を折り、ギュッと目を閉じて、激しいめまいに耐えていたのです。
リノ「……ロイヤル。なぜ、あなたがそんなにも苦しむのですか?」
単純に「不思議でたまらない」といった表情で、彼女はふとロイヤルを見下ろしました。小さな子供が、初めて目にした生き物について質問する時のような、素朴な訊き方です。
ユキ「フォレスティーナ、あなたが」
ユキちゃんがロイヤルの隣に跪いて、彼の腕を支えながら、懸命に立ち向かいます。
ユキ「あなたが、ロイヤルの魔力を奪い取ってしまったからだよ。そのために、ロイヤルは身体が弱りはじめてる。お願い、ロイヤルの魔力を返して。このままじゃ、ロイヤルの命に関わるという話なの」
ふたりをながめるリノの瞳は、氷の温度でした。
ロイヤル「待って。ユキ」
ユキ「ロイヤル!」
ユキ「ロイヤル!」
少年は頭を振り、呻きながら立ち上がります。その紫の瞳には再び、彼独特の鋭い情熱が燃えていました。
ロイヤル「リノ、きみに訊きたいことがある。ユキも訊きたかったことのはずだ。リノ、今おれはきみの眼差しから、強くて混沌とした魔力を感じてるんだ。なぜだろう。おれの嗅覚は、今とても鋭くなってる。きみがこれまで上手く隠してきた、きみ自身の魔力……そして、おれから奪い取った魔力……ふたつが混ざり合って、きみの魂のなかで渦巻いてるのがわかるんだ。たぶん、コーヒーにクリームを落として混ぜ合わせた時のように、ふたつの魔力はひとつのものに変わっていて、もう混ざり合う前のふたつに分離させることはできないはずだ」
ロイヤル「もしおれがきみを倒したら、おれの魔力はきみから離れて、おれの身体に戻るんだと思う。でもその時は、おれの魔力と混ざり合ったきみの魔力まで、一緒に吸い上げることになる。そうすれば、今度はきみの生命が危ないだろう。きみがおれにしたのと同じことを、おれはきみにしたくない。誤解するなよ。おれは、きみを許しちゃいない。おれはただ、きみのように生きたくはないんだ!」
リノは目をすがめ、値踏みするようにロイヤルを見ました。
ロイヤル「リノ、きみがどうしてウィンデンバーグに現れたのか、そのいきさつは聞いた。でもまだ、重要な話を聞いてない。きみはどうしておれたちを欺き、おれを襲い、おれの魔力を奪ったんだ?」
リノ「最初にわたしから奪ったのは、あなたのほうです」
彼女の声色は、鋼のように強靭でした。
ロイヤル&ユキ「…………!?」
リノ「戦場にて、あるじの魔力を浴びて斃(たお)れたわたしは、ウィンデンバーグのあの小屋で、再び目を覚ましました。その時、どういう訳か……わたしは、すべての魔力を失っていた。……チカラをすべて失っていたからこそ、わたしは【自分が、死者の国に流れ着いたのだ】と思ったのです。神官たちは常々【死者の国には、この世のものは何ひとつ持って行くことが出来ない】と語っていたから」
リノ「……しかし、ロイヤル・バーンウッド。わたしの前に、あなたが現れました。あの雪の夜、無垢そのものの顔で訪ねてきた。……そしてあなたはどうしてか、わたしが本来この身に宿していた特殊な魔力を、あなた自身の身に移し替えていた。【空間を超えて、移動する】というチカラを。……わたしだけが背負っているはずの魔法陣、梟の紋章をあなたもまた宿してしまったことが、その何よりの証拠です!」
言うや否や、リノは自身の胸もとに、手をかけました。
ロイヤルとユキちゃんは息を呑み、同時に止めようとして、声を洩らしました。
しかし、間に合わず。
リノはひと息にシャツを脱ぎ捨て、その背中があらわになりました。
リノ「見なさい、ロイヤル。これが、あなたが写し取った魔法陣……その抜け殻の姿です……」
これまで散々ロイヤルを翻弄してきた「その紋章」が、彼女の背に浮かび上がっていました……。
これまで散々ロイヤルを翻弄してきた「その紋章」が、彼女の背に浮かび上がっていました……。
つづきます!
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今回お借りしたポーズ
SSの2枚目(頭を抱えるロイヤル)
SSの6枚目(ベッドに倒れ込んで寝ているリノ)
尚、SSの5枚目(話すロイヤル)は、自作ポーズです。
今回も、たくさんのMOD・CC・ギャラリー作品のお世話になりました。
すべてのクリエイター様に、心より感謝しております!
Thanks to all MODS creators!
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