こんにちはー。
本日は、また「ロイヤルと裸足の魔女編」ですー。
リノ(フォレスティーナ)の生命を維持するため、彼女から魔力を受け取ることを拒んだロイヤル。一方その頃、遠く離れた一族のお屋敷では、「ロイヤルの婚約者だったはずの少女」であり、同時に「従姉妹」でもあるレイニーを救おうと、グリフィンとポーラスターが奮闘していました。今回は、グリフィン・ポーラスターの動向を追いかけます!
それでは、本日もまいりましょう!
*
レイニー・クレイフィールドはなぜ、あんなにも先代当主ウルハ(※ウルハは、グリフィン・ポーラスター・ロイヤルの父親でもあります)に対して従順なのか?彼女の言動に覗く不自然さの正体は、何なのか?一族の娘であるはずの彼女がなぜ、火の精霊のような姿をしているのか?
レイニーにまつわるいくつもの謎を解くため、グリフィンは、彼女とウルハの関係について調べていました……
幸いと言うべきか、グリフィンの父ウルハには、徹底的な記録癖があります。
お屋敷の書庫深くには、父がレイニーの身柄を引き取った頃に書いたらしいメモや書簡や日誌が、大量に残っていました。それらのどこかに、レイニーの手がかりがあるかもしれません。グリフィンは父親に勘づかれないよう、ある夜半にメモの山を運び出し、一族の長老……「おばば様」と呼ばれる老女の館に移しました。
彼は最近、時間があるとそこにこもって、膨大な資料のなかから手がかりを探しています。
そして……
「おばば様の館」には、グリフィンの逞しい妹・ポーラスターの姿もありました。
彼女もまた、朝夕ウルハの日誌を読み込んで、レイニーの謎を追っています。
ポーラスター「お父様のメモ魔ぶりには、驚かされるわ。一日三食の献立を忘れずに書いて、起床時刻も忘れずに書いて、その日の室温も忘れずに書いて……。お屋敷に来たお客様の名前、購入した薬草の分量、月の満ち欠け、お父様自身の体重の記録。このなかからレイニーに関する記述を見つけるのは、大海原に落ちた一枚のコインを探すようなものだと思う。わたしは本を読むのが好きだけど、あてのない調べものとなると、話は別だって感じる」
ポーラスターは、父親の日誌をパタンと閉じました。
ポーラスター「気分転換に、グリフィンの様子を見に行こう。グリフィンは信じられないほど読むのが速いから、きっと今日も、わたしの三倍くらいの量を読みあさってるんだろうな……?」
天井の低い「地下屋敷の廊下」を通り、いくつもの角を曲がって……
彼女は、兄が「籠城」しているお部屋をノックしました。
ポーラスター「兄さん?入ってもいい?」
グリフィン「ああ、構わない」
ポーラスター「失礼しまーす、……っと。ぅわ」
文字通り、書物の山に埋もれているグリフィンの姿が目に飛び込んできて、ポーラスターは声を洩らしました。
ポーラスター「ある程度、お部屋の中はひっくり返ってるんだろうなと思ってたけど……わたしがそう思ってた以上に、凄い状態だね?グリフィン、生きてる?」
グリフィン「順調だ。調査について訊いてるのなら」
ポーラスター「そう、よかった。……ちゃんと寝てる?昨夜はお屋敷のほうで、当主のお仕事だったんでしょ?」
グリフィン「少しだが、寝てる。……ある程度、情報が集まってきた。やはり、レイニーは【ただ屋敷に置かれていただけの娘】じゃなかったらしい。彼女が、親父の魔法研究において重要な役割を担っていた……という証拠がある」
ポーラスター「……詳しく聞いても?」
グリフィン「問題ない。だが、覚悟を決めて聞いたほうがいい。……レイニーは、親父が森の地下で行っていた実験で……五年以上の間、被験者になっていた」
ポーラスター「…………」
前触れもなく告げられた言葉は、耳を素通りしそうでした。
声もなく、ポーラスターの身体が傾きました。
グリフィンが、目を見開きます。彼はすばやく手を伸ばし、妹の肩を支えました。
グリフィン「大丈夫か」
ポーラスター「ごめん、平気。……でも、被験者って……!?お父様が、人体実験を行っていたというの?それも、自分の姪を使って……!そんなこと、いくらお父様でも……!」
グリフィン「ここに、レイニーの血液検査の結果がある。膨大な回数の検査だ。薬草の投与前と投与後で、数値を比較しようとした形跡がある。一番古い記録は、十一年前だ。こっちには、大量のレイニーの写真。十歳、十一歳半、十四歳……。昔の彼女は、火の粉を浴びた精霊のような姿ではなく、ありふれたシムの外見をしてる。そして、どの写真も検査着を身につけてる」
ポーラスターは、自分の額にこぶしを押し当て、苦しそうに何か罵りました。
グリフィン「……とりあえず、座れ。休んだほうがいい。……おまえがこんなにショックを受けるとは思わなかった」
兄に促され、ポーラスターはベッドに腰かけました。
グリフィンが隣に座ります。
ポーラスター「……兄さんは」
ポーラスターは、彼女にしては珍しいことでしたが、兄をまっすぐ見ず、窺うような横目で言いました。
ポーラスター「グリフィン兄さんは、驚いてないように見える。その……、お父様がしていたことに……。わたしは今、そのことにも動揺してるの。グリフィンはもしかして、最初から本当のことに気づいてたの……?」
グリフィン「いや、知らなかった。ただ、おれは親父が裏で何をしてたとしても……たとえ、娯楽映画めいた世界規模の悪事に関わっていたところで……大して驚かないだろうという気がする」
ポーラスター「そう……。わたしは、楽観的すぎたのかな……」
グリフィン「そんなことはない。考えてみれば、おまえの反応のほうが、おれよりまともだ」
ポーラスターは手許に視線を落とし、自分のブレスレットに爪を立てました。
自分たちに黙って父親がおこなっていた実験の酷さに、心が乱れます。同時に、グリフィンが父親に対して本当に何の期待も抱いていないこと……、過酷な育ちである兄の内面が、じつはひどく荒廃してしまっているのかもしれないということに気づいて、胸が締めつけられました。
ポーラスター「……他にもわかったこと、ある?」
よどんだ水面から顔を出して息継ぎをしたいとでもいうように、ポーラスターは浅く息をして、別の話題を求めました。
グリフィン「あるには、ある。親父とは、全然関係のない話だ。資料庫には変な文献が、かなりの分量混じってる……ということが、わかった」
ポーラスター「変な文献って」
すっとぼけた兄の言い方に、ポーラスターは思わず、小さく笑みを浮かべました。まだ苦しそうでしたが、それでも笑顔には違いありませんでした。
ポーラスター「せっかくだから、兄さんのその話を聴きたいな……?肝のすわったグリフィンが【変】呼ばわりするなら、よっぽど変わった書物なんだと思うし」
グリフィン「わかった。ちょうどおまえの足許にある本だ。取ってくれ」
ポーラスター「え?あ、これ……?」
兄妹の声がすこし明るくなった時、お部屋のドアが、ぶしつけな感じでノックされました。
グリフィンが応答するより早く、ドアは乱暴に開けられて……
その老女が、入室しました。
ポーラスター「おばば様!!」
兄妹は、すぐに立ち上がって出迎えました。
おばば様「やれやれ。ちょっと見ないうちにまた、大量の文書を運び込んだもんだね、グリフィン!あたしが一昨日見た時より、また増えてるじゃないかい!おまえさんたち、ごたいそうな調査とやらが終わったら、このボタ山のような資料を、再び屋敷まで運ばなけりゃならんのだろ?おまえさんたちの父さんに見つからぬよう、何もかも元通りにしなけりゃならんってこと……、ちゃんと頭にあるんだろうね?」
グリフィン「どうにかします」
グリフィンが丁寧な口調で、無策を露呈しました。
ポーラスター「おばば様、わたしもグリフィンを手伝うから大丈夫だよ?おばば様こそ、どうしてお部屋に?何日もの間、瞑想に臨まれていたのではなかったの?」
ポーラスターが、おっとりと尋ねます。
おばば様「あたしの努力が実を結んだんだよ。水のエレメントの再構成がようやっと終わって、あの子が目を醒ましたんだ。一番最初に、おまえさんたちに会わせてやろう、喜ばせてやろうと思ってね。……入っておいで!」
その呼びかけに、再びお部屋のドアが開いて……
グリフィン&ポーラスター「シャーロッタ!!」
グリフィンとポーラスターに、今回の「里帰りの旅」をもたらしたキッカケの精霊……都会で身体を弱らせてから、ずっと眠りについていたシャーロッタ・ニュームーンが、ついに目を醒ましました!
つづきます!
*
今回のポーズ
SSの4枚目(本に埋もれてあぐらをかいているグリフィン)
以上1枚のポーズは、
Kiruluvnst 様
よりお借りしました。ありがとうございます。
尚、
SSの6枚目(グリフィン、アップ)
以上1枚のポーズは、自作(既出のもの)です。
今回も、たいへん多くのMOD・CC・ギャラリー作品のお世話になりました。
すべてのクリエイター様に、心より感謝しております!
Thanks to all MODS/CC creators and all builders!
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