こんにちはー。
本日は、また「ロイヤルと裸足の魔女編」ですー。
そして…、前回までは「裸足の魔女編」のなかでも「グリフィン・ポーラスター側」の話を進めてまいりましたが、今日からはまた視点をロイヤルに戻します。相克から緊張緩和へと、すこしずつ関係が変わりはじめた(?)ロイヤルとリノ(フォレスティーナ)。ふたりを見守るユキちゃん。彼らの行く先は……?
それでは、本日もまいりましょう!
*
早春、ウィンデンバーグ。
ロイヤルとユキちゃんは、毎日のようにリノの小屋を訪ねて(一見)静かな生活を送っていました。最後にロイヤルと激しく対決した、あの「ストレンジャービルの戦い」以降……、リノが敵意を見せることはありません。彼女は驚くほど穏やかになり、また、心配になるほど気力を失っていました。
ロイヤルの魔力は依然、リノに奪われたまま。
彼の「生命力そのもの」である魔力のほとんどが、リノの身の裡(うち)に捕らえられています。
一方、リノ自身も「元の世界(四百五十年前の世界)」に還る手立てなど、ありません。
何も解決しないまま、物寂しい黄昏のような日々が続いて行きます……。
ロイヤル「……何?……今きみは、おれのことを見てたはずだ」
ある午後。
ロイヤルが振り返って、ひどく落ち着いた口調で尋ねました。
今日の彼は、機嫌が悪い訳ではありませんでしたが、特に愛想がいいと言ったふうでもありませんでした。その顔色は白っぽく、あまり体調がよくないようにも見えました。
リノ「いいえ……、大したことではありません」
ロイヤル「…………。いい天気だよな?こんな日にローラースケートをやったら、風になったみたいな気がすると思う」
ぼんやりと、独り言のような口調でロイヤルが話します。
リノ「ろーらー……?」
ロイヤル「うん……。小さな車がついてる靴だよ。それを履くと、信じられないほどのスピードで滑ることが出来るんだ」
リノ「……その小さな車も、馬が曳いているわけではないのでしょうね」
ロイヤル「は?」
過去の世界からやってきたリノにとって、車と言えば「馬車」なのだと気がついて、ロイヤルはようやく、かすかにほほえみました。
ロイヤル「うん、そうだな……。馬が曳いてるわけじゃない。そうだな……絵でも描こうか、ローラースケートの。そのへんに棒切れ落ちてないかな……」
ユキ「ロイヤル、フォレスティーナ!ただいまー!」
リノ「お帰りなさい、ユキ」
ロイヤル「お帰り……!学校、終わったのか」
ユキちゃんの明るさに引っ張られるように、ロイヤルの声にも元気が戻ってきました。
ユキちゃんは、ドサッとカバンを下ろしました。
ユキ「うん!今日もよく学びましたよ、……っと。そして今日も、宿題がいっぱい!ロイヤル、もしよかったら、あとで文法の問題を付き合ってもらえる?」
ロイヤル「ああ、いいよ。たまには年上っぽいところを見せないとな?」
リノ「……ふ」
リノが温かな目をして、小さくほほえみます。
ユキ「それと、今日はもうひとつ、学校から持って来たものがあります!」
ユキちゃんはそう言って、大きなサブバッグのチャックを開け、大きな機械を引っぱり出しました。
リノ「……これは、何でしょうか」
ユキ「これはね、オーディオ機器っていうものなの」
ロイヤル「これがあれば、そこでシムが演奏してなくても、勝手に音楽が流れる……。からくり仕掛けの装置だよ」
リノ「……信じられないモノが、ここにはいくらでも存在する。……わたしの居た世界では、魔法のチカラをもってしても、自動演奏など実現できなかったのですが」
【リノが生きていた時代】には存在しなかったモノ……機械やら何やらについての解説が、ユキちゃんもロイヤルもどんどん上手くなっています。
ロイヤル「それで、ユキ。なんでこんな重い物をわざわざ持って来たんだ?メールくれたら、おれ、荷物持つために迎えに行ったよ。いやそれ以前に、オーディオなら、ユキの家にもあるだろ?外で聴くなら、携帯電話があるしさ」
ユキ「うん。そうなんだけど、携帯電話に一曲ずつ落とすのもお金かかっちゃうし、うちには持ち運びできるコンパクトなオーディオはないから。あんまりロイヤルをこき使うのも、気が引けるしね?……この古めかしいオーディオはね、フォレスティーナに見せるために持って来たんだよ?」
リノ「わたし、のために……?」
ユキ「うん!モダンダンスの授業の復習をしたいって言って、体育の先生に貸して頂いたの。で、こっちがCD」
ロイヤル「お、古いCD!……あ、学校のバーコードがついてる。ワルツに、タンゴ、昔のミュージカル音楽……。みんな古風だけど、有名な良い曲ばっかりだ」
ユキ「うん。メロディーラインが綺麗な曲がいいかなと思って。森の風や葉擦れの音も素敵だけど、音楽があると、気分が楽しくなるでしょ?かけるね。CDを入れて……スイッチ・オン!」
ユキ「…………」
ロイヤル「…………」
リノ「…………」
リノ「……楽器の音色は変わらない、ということがわかります。わたしが生きたあの時代と、おなじ響きがする」
ユキ「そうなんだ……」
ロイヤル「…………」
リノの声はいつも通り凛々しく、淡々としていましたが、どこか悲しく、心の空洞を感じさせました。その響きは、ロイヤルの心をもかき乱しました。彼女のために、どうしたらいい?おれたちはみんな、どうしたらいいんだ?と。
リノ「これは……踊るための曲ですね。わたしが一時期身を寄せていた城では、こうした曲が夜ごと演奏され、殿方と令嬢が手を取って踊りました。これは、わたしが知っている類の曲とは、かなり違うところもありますが」
ユキ「フォレスティーナは、踊れる?わたし、その踊りを見てみたい」
リノの気持ちを明るくしたい、と思ったのでしょう。ユキちゃんが、元気を出して尋ねました。
リノ「踊れることは踊れますが、ひとりではどうにも。相手がいないと……」
少し考えてから、リノはロイヤルを見ました。
ロイヤル「……おれ!?いや、踊ったことなんて、ほとんど無いぞ……!?実家で、最低限仕込まれたくらいで……」
ユキ「えっ。おうちでダンスを習ったの!?ロイヤル、すごい……!」
リノ「手を」
ロイヤル「う……」
ロイヤルは心許なさそうに、目を彷徨わせました。しかし、やがて心を決めて……
リノの手を取り、紳士的に口づけしました。
つづきます……!
*
今回のポーズ
SSの15枚目(リノの手にキスするロイヤル)
以上1枚は、
Katverse 様
よりお借りしました。
尚、
SSの13枚目(ロイヤルを横目で見るリノ)
SSの14枚目(リノが差しのべる手)
以上2枚のポーズは、自作(既出のもの)です。
今回も、たくさんのMOD・CC・ギャラリー作品のお世話になりました。
すべてのクリエイター様に、心より感謝しております!
Thanks to all MODS/CC creators and all builders!
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