本日は、また「ロイヤルと裸足の魔女編」ですー。
リノに奪われた魔力を奪い返すこともできず、徐々に身体が弱っていくロイヤル。元の世界(過去の世界)に還ることが出来ないリノ。停滞する黄昏のような日々のなか、ユキちゃんは状況を明るくしようと気遣ったのか、音楽をかけてくれます。すると、リノはダンスの相手にロイヤルを指名して……?
それでは、本日もまいりましょう!
*
慣れないダンスの相手に指名され、ロイヤルは心許なさそうに、目を彷徨わせていました。しかし、やがて心を決めてリノの手を取り、紳士的に口づけしました。ふたりは、そうっと踊りはじめます。
リノ「……あんなに尻込みするので、どんなに滅茶苦茶なステップを踏むかと思えば……ロイヤル、あなたはひと通り踊れるではありませんか」
ロイヤル「…………。悪いけど、話しかけないでくれ。錆びついた記憶をほじくり起こしながら足を動かすだけで、精いっぱいなんだ。……次は、右だっけ?」
リノ「そうです。あなたから、見て右前に一歩」
ロイヤル「……待って。おれも靴、脱ごうかな?きみの足を踏みそうでコワい」
リノ「あなたの一撃をかわせないほど、わたしはヤワな戦士ではありません」
ロイヤル「うん。まあ、それもそうかな……?」
あとは黙って身体を揺らしながら、ロイヤルは自分の考えに沈んでいきました。「リノは、彼女の夫……ライオネル・トワイライトとも、こうして踊ったのだろうか……?」と。
自分の先祖にまつわる雄々しい英雄譚を伝え聞いてはいても、先祖の本当の姿については何ひとつ知らないのだ、ということに、ロイヤルはこの時気がつきました。
穏やかに手を取り合うリノとロイヤルを、ユキちゃんは嬉しそうに見守っています。
やがて、音楽はゆるやかに盛りあがりを迎えて……そして、終わりました。
ロイヤルとリノは身体を離し……、
リノ「お相手をありがとう、ロイヤル」
ロイヤル「いや、こっちこそ。なんかごめん、最後のおれのステップ、変だった」
リノ「……ユキ、わたしの知る宮廷のダンスは、こんな感じです。ロイヤルもほぼ同じステップで踊れたということは……、四百五十年の時が流れても、踊り自体はあまり変化しなかったのかもしれませんね?」
ユキ「そうなんだね?ふたりとも、とても素敵だった!お庭で裸足でダンスをするなんて、なんだか本当に映画みたい!……ロイヤル、そういう映画、あったよね?」
ロイヤル「ああ、あの東の国の」
リノ「ユキも踊ってみたらどうです?わたしはステップを教えることができますし、相手役にはロイヤルが居る」
ユキ「わたし!?い、いいって!お姉ちゃんならともかく、わたしは踊り、全然ダメだもん!……あ、えと、おなかすいたね?わたし、ごはん作ってくるから……!」
【ロイヤルと踊れ】と言われた途端、なぜかユキちゃんは顔を赤くして……
猛然と、お夕飯を作り始めてしまいました。
ロイヤル「…………?」
リノ「無垢ですね、ユキは」
ロイヤル「うん。無垢で幼いけど、時々すごく大人だ」
その後、ロイヤルは黙って夕暮れの空を見上げ……
リノはそんな彼を、遠くのほうから眺めていました。
そして……
足音もなく近づいたリノが、ロイヤルの背中に手をかざし、魔法を行使しようとします……。
ロイヤル「…………!やめろ……!!」
異様な気配に気づいたロイヤルが、身体をねじってリノの手を払いのけました。
リノ「…………!!」
ロイヤル「きみは今、きみの魔力をおれに注ぎ込もうとした……!きみの身の裡(うち)にあるおれの魔力を、おれの手に返してくれようとしたんだろう?でも、そんなことする必要はない!きみのなかにあるおれの魔力は、もうきみの魔力と混ざり合って、切り離すことは出来ない。混ざり合ったふたつの魔力をおれに手渡せば、今度はきみ自身の魔力が枯渇するぞ!そしたら……!」
リノ「…………!」
だしぬけに、リノが動きました。
ロイヤルのアキレス腱に足をかけて、彼を草の上に突き転がします。その一撃を回避できなかったのは、やはりロイヤルの体調が優れなかったためでしょう。リノはロイヤルを押さえつけ、彼のあばら越し、心臓のうえに手を載せました。
彼女が問答無用で魔力を送り込み、すべてを手渡すつもりだと気がついて、ロイヤルは震え上がりました。
ロイヤル「離れろ!!」
動きの悪い身体を叱咤し、渾身の力で叫んだ瞬間……
「ばちんっ!」という音がして、痺れるような衝撃が走りました。ロイヤルの視界が真っ暗になり、同時に、身体がフッと自由を取り戻します。ロイヤルは咳きこみながら、見えないせいで何かに身体をぶつけ、手さぐりで身を起こします。
そのまま、頭を押さえて悪態をついているうちに、ロイヤルの目に光が戻ってきました。
……すこし離れたところに、リノが尻餅をついていて、厳しい顔でロイヤルを見つめています。
リノ「心の扉を閉ざしましたか、ロイヤル……。わたしがあなたに、魔力を送り込むことが出来ないようにするために」
ロイヤル「……なんだか、よくわからない。ただ、きみの魔力を受け取るわけにはいかない。おれに魔力を手渡せば、今度はきみが衰弱する。今度こそ、きみは死ぬんだぞ。なんだって、こんなこと……」
リノ「あなたを見ていると、我が一族の幼い者たちを思い出します。わたしの夫の手に掛かった、哀れなユビ・ミナキ。誰も触れることが出来ない、孤独な魂のシロイ・ミナキ。そして……わたしの息子、テイル・ミナキのことを」
【わたしの息子】
その言葉はロイヤルに、頭を殴られるような衝撃をあたえました。
考えてみれば、リノの子孫であるロイヤルが今ここに生きている以上、リノに子供が居たというのは、当然のことでした。しかし、ロイヤルはその可能性について、考えてみたことがありませんでした。戦場に生きることに喜びを覚える「至高の戦士」のようなこの女性に、母親としての顔があるなど、考えもしなかったのです。
リノ「わたしの息子は、まだ三歳です。ある日息子は、わたしの手をとって踊った。温かく小さな手は、わたしの心を慰めました。だがわたしは決して、良い母親ではなかった。……息子のために、わたしは何もしなかったのです。こめかみへの口づけひとつ、あるいは抱擁ひとつさえも」
ロイヤル「…………」
自分たち呪われた一族の不和……、親子の確執と相克は始祖の代から始まっていたのか、とロイヤルは、違った意味のめまいを感じ始めました……。
リノ「わたしは、いくさのため……夫のために生きようとして、それで息子を棄てたのです。そして今、わたしはこの未来の世界に居て、再び息子に会えるとは思えない。だからせめて……幼い者を生かしたい。ロイヤル、あなたを。……わたしは自分の人生を悔いてはいないし、あなたの魔力を奪ったことについて、謝罪もしません。わたしは信じるもののために生きた。それでも今は、あなただけ、せめて……」
無表情を装うリノの目から、ひとしずくの涙が流れ……
しかし、慰めになる言葉など、どこにも在りはしませんでした。ロイヤルは何か言おうとして……結局、言葉を発することなく、彼女を見つめていました……。
つづきます……!
*
今回のポーズ
SSの4枚目(嬉しそうなユキちゃん)
以上1枚のポーズは、
Akuiyumi 様
よりお借りしました。ありがとうございます。
SSの8枚目(倒れているロイヤルとリノ)
SSの10枚目(リノを慰めたいロイヤル)
以上2枚のポーズは、
新生まるきぶねスローライフ 様
よりお借りしました。ありがとうございます。
尚、
SSの6枚目(手をかざすリノ)
SSの7枚目(話すロイヤル)
以上2枚のポーズは、自作です。
今回も、たいへん多くのMOD・CC・ギャラリー作品のお世話になりました。
すべてのクリエイター様に、心より感謝しております!
Thanks to all MODS/CC creators and all buiders!
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