本日は、また「ロイヤルと裸足の魔女編」ですー。
ベーア邸で急遽、開催された上映会。ロイヤル・ユキちゃん・リノ（フォレスティーナ）の映画鑑賞は大いに盛り上がりましたが、ロイヤルはかねてよりの衰弱で眠ってしまいます。そんなロイヤルに掛かってきた、兄グリフィンからの電話。電話を受けたユキちゃんはグリフィンに窮状を打ち明けますが、目を醒ましたロイヤルは救済を拒みます……。
それでは、本日もまいりましょう！
＊
グリフィン「…………」
ロイヤルが一方的に電話を切ったあと……
電話の相手であるグリフィンは、ひとりお屋敷の温室に立ち尽くし、考え込んでいました。
？？？「グリフィン？」
気がつくと、彼の妹ポーラスターが立っていました。
彼女も、グリフィンとおなじように「パジャマに近い恰好」です。物憂い夜半、あとは自室に引き上げるだけという時間帯です。彼女はおっとりとストレスのない顔をして、今の電話を聞いていた様子はありません。
ポーラスター「兄さんも温室に避難してたのね。ここ（ノーマン家のお屋敷）はホンットに息が詰まるもの。お互い、積極的に息抜きしないとね？……誰かと話してたの？」
グリフィン「……いや、なんでもない」
…………。
……………………。
ウィンデンバーグのベーア邸では、ロイヤルが携帯電話を握ったまま、苦しそうに顔を歪めていました。ユキちゃんもまた、何も言えずにロイヤルを見つめています。
それでも、やはり最初に動いたのは、彼女の……ユキちゃんのほうでした。目尻に残る涙をげんこつでグイッと拭って、ロイヤルの前に歩み出ます。
ユキ「ロイヤル、ごめん。ロイヤルの状態を、お兄さんに話した」
ロイヤル「……うん」
ロイヤルは肩を落とし、はっきりしない声で応じました。
ユキ「わたし、ロイヤルを助けたい。でもわたしには、その力がない。どうか、ロイヤル。ひとりで抱え込まないで、助けを求めて？ふさわしい力を持つシムの助力を得て？このままじゃ、ロイヤルは本当に死んでしまう！」
ロイヤル「……だけは」
ユキ「…………？」
ロイヤル「兄貴にだけは、助けてもらいたくないんだ」
とうとう、彼はそれを口にしました。
ロイヤル「……おれは本当は、落ちこぼれの魔法使いなんだ。子供の頃、兄貴の魔力を盗み取って、それで魔法を使えるようになった。天才児の真似をするだけの、卑怯者。……これ以上、兄貴に頼って、兄貴のチカラや時間を奪って生きるのはイヤだ。そうするくらいなら、いっそ……！」
ユキちゃんはいつになく強い眼差しで、ロイヤルを見定めています。
ユキ「わたしも」
いつもの無邪気さではなく、成熟した女性のような声で言うので、ロイヤルはちらと顔を上げました。
ユキ「わたしも、お姉ちゃんにはかなわないって、いつも思ってる。お姉ちゃんはキラキラの女の子で、パーティーに引っ張りだこの【みんなの真ん中】。わたしはそうじゃない。わたしはお姉ちゃんのカゲなんじゃないかって思って……絶望的な気持ちになることもある。でも……」
ユキちゃんはロイヤルの手を取り、ギュッと握りました。
ユキ「でも、ロイヤル。お兄さんの強い腕のなかから抜け出すだけのために命を懸けるのは間違ってると、わたしは思う……！それで命を落としたら、ロイヤルは本当にお兄さんに負けて死んだことになってしまう。わたしたちはいつだって【二番目の子】で、添え物みたいなシムだけど、それでもいつかはお姉ちゃんとは別のシムに……新しい自分になれるはずだよ」
ロイヤル「…………」
ロイヤルは足許に目を落としていましたが、その心が動いているのがわかります。彼はおもむろに身体を引き、ユキちゃんの手から離れました。
ロイヤル「……帰るよ。おれ、今日の最終のバスで、ストレンジャービルに」
ユキ「ロイヤル……」
ロイヤル「ちょっと、ひとりで考える。頭を冷やす時間が欲しいんだ。……ありがとう、ユキの言うことはよくわかる」
ユキ「うん」
ロイヤル「おれも、消滅したいと思ってる訳じゃない。何か手がないか……とにかく、頭を冷やすよ」
ユキ「うん」
ロイヤルとユキちゃんは、あとは言葉少なになり……彼は彼女に見送られて、ベーア邸を出ました。
ロイヤル「……おれ、本当に、ユキに心配な顔をさせてばかりだ」
ユキちゃんをひどく真摯に覗き込んで、ロイヤルはそう言いました。ユキちゃんは、今度は照れずに、まっすぐ見返しました。
ユキ「それは、持ちつ持たれつ……って言うんだっけ。……その【持ちつ持たれつ】だよ。前にも言ったじゃない。わたしとロイヤルは友達だ、って」
帰って行く少年と、見送る少女を……
彼女はじっと見守っていました……。
つづきます！
＊
今回のポーズ
SSの5枚目（グリフィン、イメージ）
以上1枚のポーズは、
新生まるきぶねスローライフ 様
よりお借りしました。
尚、
SSの1枚目（グリフィン、アップ）
SSの8枚目（俯きがちのロイヤル）
以上2枚のポーズは、自作です。
今回も、たいへん多くのMOD・CC・ギャラリー作品のお世話になりました。
すべてのクリエイター様に、心より感謝しております！
Thanks to all MODS/CC creators and all builders
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