今回は、また「ロイヤルと裸足の魔女編」ですー。
水路に落とされたユキちゃんを救うため、ロイヤルはついに「最後の切り札」魔力の薬を飲み干します。その結果、彼は一時的に魔力を取り戻しましたが、予想外のことが起こりました。薬には、服用者の攻撃衝動を高めるという謎の効果が含まれていたのです。ロイヤルの復讐心は掻き立てられ、彼は「ユキちゃんを傷つけた」リノ・ミナキに牙を剥きます……
それでは、本日もまいりましょう!
*
ロイヤルはリノに向かって、ゆらりと手を掲げました。魔力を解放する時の構えです。敵意を湛(たた)えるロイヤルを見据え、リノは酷薄に笑いました。
リノ「そう。それでいい」
…………。
…………。
魔力の薬に意識を呑み込まれ、リノに闘いを挑みながら……実際のところ、ロイヤルの心は暗闇のなかを彷徨っていました。
ロイヤル(ユキを助け出さなくちゃ……。そのために、おれの魔力をリノから取り戻さなくちゃ……。魔力を……)
リノ「ロ、イヤル……!!」
リノ・ミナキの苦しげな呪詛が、石畳を打ちます。
なかば意識を失ったロイヤルは、破壊衝動の命じるまま機械的に、容赦なくリノの魔力を吸い上げていました。薬の力を借りているとはいえ、彼の術の的確さは、目をみはるものがありました。リノは歯をギリギリと鳴らし、苦痛を振り払うように目を見開きました。意志を込めて手を掲げ、解放した魔力の渦によって、逆にロイヤルを絞め上げてゆきます。
そうして、彼女はむしろ雄々しく、歓喜の声を上げました。
リノ「素晴らしい。ここへ来て、あなたがこれほどの魔力を見せるとは!流石は、我があるじの血を引く子です。あなたは、わたしのもの!さあロイヤル。打ち込み、引き抜くのです。あなたの刃を、わたしに……!!」
ばちんっ!という嫌な音がして、リノは支えを失ったように、うしろ向きに倒れ込みました。
ロイヤルはまだ、彼女の正面に立っています。リノに向かって手を掲げ、暴虐な魔力の指先を伸ばしたまま……。
ロイヤルは頭を垂れ、眠っているかのように目を閉じていました。彼の耳には、何も聞こえません。しかし、その頬には血色が戻り、生気がみなぎってゆきました。
それに引き換え、横たわるリノの頬は蒼白です。リノ・ミナキの身体に閉じ込められていたロイヤルの魔力と、リノ自身の魔力……ひいてはリノの生命力そのものをも、ロイヤルは自分でも知らないうちに、喰い尽くそうとしているのでした……。
ロイヤルの心は、まだ闇のなかにあります。
ロイヤル(頭が痛い……。吐き気がする……。グリフィンはいつも、こんな魔力を身体に秘めてるっていうのか……?こんな気持ち悪さに耐えてたっていうのか……?魔力……。リノから魔力を奪い返さないと……。ユキ……)
【もちこたえろ!】
よく聞き知った声が、突然ロイヤルを揺さぶり起こしました。今度はハッキリと、グリフィンその人の声でした。
ロイヤルはハッとして、闇のなかで振り返りました。静寂に耳を澄まし、暗黒の匂いを嗅ぎ分け、自分を呑み込もうとしている魔力の正体を見極めようとしました。
ロイヤル「この攻撃衝動は……復讐したくてたまらなくなるようなこの昏(くら)い気持ちは……グリフィン自身のものではない……?」
今、意識の扉がノックされ、彼の瞼が上がります。
彼の紫色の瞳に、倒れているリノの姿が映りました。彼は訝しむようにまばたきして、自分の掌を見下ろしました。身体に不調はありません。今にも死にそうだと感じていたほどの、あの具合の悪さが消えています。途端に、彼は、自分がリノにしたことを理解しました。
ロイヤル「リノ……!」
涙と血の混じったような絶望的な声で、彼は現実を認めました。
しかし、悔いている時間は、今のロイヤルにはありませんでした。ユキちゃんを助け出さなければなりません。ロイヤルはぐちゃぐちゃに顔を歪めながら、冷たい指先で、リノの頬に触れました。彼女はまだ、かすかに息をしていました。
ロイヤル「きみの魔力は、必ずきみに返す。許してくれなんて言わない。ユキを助けるまでの間だけ、きみの力を貸してくれ……!」
つづきます……!
*
今回のポーズ
SSの5枚目(闇のなかで膝を抱えるロイヤル)
以上1枚のポーズは、
akuiyumi 様
よりお借りしました。いつもありがとうございます。
(その他のポーズは、自作です)
今回も、たくさんのMOD・CCのお世話になりました。
Thanks to all MOD/CC creators!
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