本日は、また「ロイヤルと裸足の魔女編」ですー。
ユキちゃんを水底に突き落したリノ・ミナキ(フォレスティーナ)の真意は、ロイヤルにとって予想外のものでした。彼女は「敵対者になったフリをして、ロイヤルに彼女自身の魔力を吸収させようとしていた」……彼女は「ロイヤルを後継者に指名した」……。ロイヤルは、リノ・ミナキの生命を救うことに失敗したのです。そして……
*
リノ「ロイヤル、あなたとの友情も対立も、わたしにとっては一瞬の夢。心のどこかで分かっていたはずなのに、認められなかった。この平穏な世界に降り立って、出来ることなら再びここで生きたいと願っていた。あるいは、生きて再びあるじの許に戻り、戦場を駆けたいとも思った。でも、そうではない。……わたしは、生と死の狭間で束の間この世界に立ち寄った、放浪者にすぎません」
リノの声は穏やかで、ひとかけらの悲しみも含まれてはいませんでした。しかしその言葉は、ロイヤルの胸を深くえぐりました。
ロイヤル「夢じゃない……全然、夢なんかじゃない。きみは確かにここに居た。おれもユキも、そのことを知ってる」
胸がつぶれるような思いで伝えると、彼の肩をユキちゃんが掴みました。ユキちゃんは深く静かな目をして、首を横に振りました。
【……リノ!】
とつぜん、そう呼びかける声が、ロイヤルの頭のなかで響きました。いいえ、この声を聴いているのは、ロイヤル自身ではありません。リノにだけ聴こえる誰かの声が、彼女の魔力を通してロイヤルに響いてくるのです。
ロイヤル「ライオネル・トワイライト……」
まるでうわごとのように、ロイヤルはその人物の名を呟きました。
リノ「そう、彼の声です。四百五十年の向こうから、あるじがわたしを呼んでいる」
薄くほほえんだリノは、旅立つ者としてその姿を変え……
その背中にはもはや、彼女の魔力の証……【梟の紋章】は、ありませんでした。
ロイヤル「待って!行かないで……!きみに伝えなきゃいけないことがある。きみの息子のこと……!きみとライオネルの息子がどう生きたかっていうことを、おれ、本を読んで調べたんだ!」
一気呵成に話そうとするロイヤルの口許に、リノ・ミナキの手が伸ばされました。
リノ「それを言ってはなりません。わたしは、あの子の成長を見ることなく現世を離れた。あの子の人生を知ることは、決して出来ない。それがわたしの運命でした」
ロイヤル「でも、きみは時間を超えた!」
リノはむしろ優しくほほえんで、少年に言い聞かせました。
リノ「……息子がどんな人生を送ったか知ることは出来なくても、あの子が【生きた】ことはわかります。なぜなら、ロイヤル。あなたがここに居るから。あの子は成長して子供をもうけ、その子供がまた子供をもうけ……果てしない時の先に、ロイヤル、あなたがこの時代に産まれた。あなたが今生きていることこそが、わたしへの何よりの贈り物です」
ロイヤル「…………!」
言うべき言葉はついに消え、ロイヤルはただ懸命に、リノを見つめました。
リノはロイヤルの髪を撫で、ユキちゃんの手をキュッと握って頷きました。
リノ「時間です。ありがとう、わたしに平穏を教えた子供たち」
リノはしゅるりと身を翻し、その姿は空気に溶け込むように消えました。あっけないと言えば、あまりにあっけない出来事でした。
ロイヤル「…………。何も……何も、させてくれなかった。彼女のために……」
涙の混じった声で、ロイヤルはやっと絞り出しました。
ロイヤルのリュックサック……ここに到着した時、ロイヤル自身が無意識に投げ棄てたリュックサックのなかで、携帯電話がふるえています。グリフィンやポーラスター、シャーロッタを載せた長距離バスが、まもなくウィンデンブルグに着くという知らせです。
しかし、そうだとしても、何の意味もない。
すべてはもう、終わってしまっているのでした……。
つづきます……!
(次回は、エピローグです)
*
Thanks to all MOD/CC creators!
(今回のポーズは、すべて自作です)
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