本日は、また「ヨルの秘密」編ですー。
家賃を賄うため、リリス・ヴァトーレさんに自分のブラッドを買ってもらうことにした少年・ヨル。ヴァトーレ家の寝室で、彼はリリスさんの抱擁に身を委ねました。そして……
それでは、本日もまいりましょう!
*
リリス・ヴァトーレは、ヨルのブラッドを丁寧に飲み干しました。
ヨル「うわ……なんか、足許がフワフワする」
ヨルの声音は、足許以上にフワフワしていました。
リリス「貧血でしょう。すこし休みなさい。大丈夫、おまえが眠っている間に押し入ったりしない」
リリスさんの澄んだ声が、いつになく快く響きます。
ヨル「部屋を使ってもいいの?」
リリス「棺桶で眠りたいというのなら、そちらに案内するけど」
ヨル「……それは、やめとく」
リリスさんのぞっとしない冗談(?)に、ヨルは苦笑いしました。
リリス「おやすみなさい」
リリスさんが寝室を出て行ったあと、ヨルはそろりとベッドに上がりました。彼は居心地悪そうに寝返りを打ったり、リリスさんに噛まれた首筋を触ったりしていましたが……やがて、眠りのなかへと、さかさまに落ちてゆきました。
ヨル・ヘイデンは、夢を見ていました。彼は微睡みのなかで子供時代にタイムスリップしていて、いつものように路地裏で飢えているのです。
どれくらい時間が過ぎたでしょうか。
気がつくと、ヨルの目の前に女の人が立っていました。女の人は、冷たくも興味深そうな眼差しで、ヨルを見ています。
ヨル「……なんか用?」
ヨルはしゃがれた声で、横柄に訊きました。
???「今日、」
と、女の人が口を開きました。耳に心地よい、澄んだ声です。
???「今日、わたしは占い師に【重要な出会いが訪れる】と言われた。それほど信じていた訳ではない。こんな子供が、その出会いをもたらすとは思わなかった」
女の人は、感慨深そうに吐息を洩らしました。
ヨル「…………?」
彼女が何を言っているのかわからず、ヨルは目をせばめました。
???「おまえ、こんなところで何をしているの」
ヨル「……今日が過ぎてゆくのを待ってるだけ。やることもないし、行くところもないから」
そんな子供は、このスラムにはいくらでも居ます。
???「家族は?」
ヨル「いない。少なくとも、今は」
???「名前は」
ヨル「ヨル・ヘイデン」
女の人は、思案顔をしていました。そして、ヨルに向かって優雅に手を差しのべました。
???「おいで。おなかいっぱい食べさせてあげる」
訳の分からぬ大人に簡単について行くほど、ヨルは無邪気ではありませんでした。しかし、鳩尾(みぞおち)がえぐれるほどおなかがすいていて、目が回っているのも事実でした。
ヨル(どうにでもなれ。いざとなったら、逃げりゃいいんだ。ぼく、足は速いんだから)
ヨルは女の人の手を取りました。彼女の手は指が長く、ひんやりしていました。奇妙なふたりは黙って互いを感じながら、世界の終わりのようなスラムを歩いてゆきました……
つづきます!
*
今回のポーズ
SSの4枚目(ベッドに横たわるヨル)
以上1枚のポーズは、
よりお借りしました。いつもありがとうございました!
また、回想シーンのスラム区画は
ユキ豹 様(Twitter)
よりお借りしました。いつもありがとうございます。
Thanks to all MOD/CC creators!
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