本日は、また「ヨルの秘密編」ですー。
リリス・ヴァトーレに連れられて、霧深い集落の陰鬱な邸宅に連れてこられたヨル。おなかをすかせたヨルはそこで、リリスさんの不思議な弟……カレブ・ヴァトーレにも出会いました。そして……
それでは、本日もまいりましょう!
*
カレブ・ヴァトーレはヨルのために、見事な手際でお料理をしてくれました。テーブルには次々に湯気を上げるお皿が並び、カレブさんはまたキッチンに舞い戻ってお鍋を揺すります。
カレブ「さあ……、満腹になるまで食べるといい」
すばらしいご馳走を見ただけで、ヨルは目がくらむようでした。
リリス「……モノも言わずに食べている」
カレブ「よほど空腹だったんだろうね……。旨そうに食べる者を見るのは、良いものだ。それが子供なら、尚更」
ヨル「ご馳走様でした」
そんな丁寧で満ち足りた言葉を、ヨルは百万年ぶりに口にしたような気がしました。
リリス「……どうしたの」
珍しくヨルがもじもじしているので、リリスさんが保護者のように尋ねました。とは言えその口調は、やはり高飛車なのでしたが。
ヨル「ぼくは確かに、おなかいっぱいにさせてもらった。でもぼく、あなたたちにお礼できる物を持ってない。だから、こう思うんだ。あなたたちに、ぼくのブラッドを飲んでもらえばいいんじゃない?」
リリスさんとカレブさんはハッとして、互いに目を見かわしました。
リリス「……気づいていたのね。わたしたちがヴァンパイアだということに」
ヨル「まあね」
ヨルは自慢げに胸をそらしました。
リリス「いつ?」
ヨル「【いつ】?……いつ気づいたかっていうと、この集落に着いた時。ここは、昔話に出てくる吸血鬼の国にそっくりだ。それに、あなたたちはとっても暗い感じで、生きている人間(シム)っていうフンイキじゃないし。最後に、カレブさんはぼくのこと【十年たったらビシュになる】って言った。ビシュって、美味しいお酒のことだよね?それって、大人になったぼくのブラッドが美味しい、っていう意味だと思う」
リリス「見事よ」
リリスさんが、生気のない感じで称賛しました。
ヨル「大人になるまで待つ必要なんてないよ!ぼくは、ぼくをやっつけようとするヤツには仕返しするけど、親切にされたらお礼をしたいんだ。ぼくのブラッドを飲んでよ。今ここで!」
リリス「だめよ」
リリスさんがそっと、ヨルの頭に手を置きました。
リリス「確かに、おまえのブラッドの香りは魅惑的だわ。おまえはわたしにとって、永劫にも似た生涯のなかでただ一度めぐり合う、限りなく相性の良いブラッドなのだと思う。でも、子供のブラッドを飲む気はない。わたしは、誇り高いヴァトーレ家のヴァンパイア。けだものではない」
ヨル「カレブさんも、飲んでくれないの?」
申し出を拒絶されたヨルは、気を悪くしたようにいました。
カレブ「そうだね……。ぼくの場合、子供かどうかという以前に……姉上の【運命の相手】を横取りする気はないかな……」
ヨル「帰る」
プライドを傷つけられ、すっかり怒ってしまったヨルが、そっぽを向きました。
リリス「待ちなさい。外はもう暗い。おまえの足で、ここから下界までどうやって戻るというの。明日、わたしが送っていく」
ヨル「…………」
リリス「いいこと?下界へ戻っても、空腹になったらわたしを呼びなさい。心のなかで叫ぶの。【リリス、来て!】……そうすれば、わたしはあなたとの絆を辿り、地の果てからでも駆けつける。何度でもおまえを食べさせましょう。そして、おまえが大人になったなら……わたしは子供時代の礼として、この身が渇きを覚えるたびに、おまえのブラッドを飲みましょう。おまえは永劫、わたしの物となる。……そんな契約で、どうかしらね?」
ヨルは眉間にしわを寄せて、考え込みました。一分後、彼は重々しく言いました。
ヨル「いいよ、それで。それしかなさそうだし」
リリス「では、今夜はお休みなさい。大丈夫、おまえが眠っている間に押し入ったりしない」
その晩、ヨルはふかふかのベッドで、百万年ぶりにぐっすり眠りました……
つづきます!
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Thanks to all MOD/CC creators and all builders!
(ポーズは、自作です……)
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