本日は、また「ロイヤルと裸足の魔女編」ですー。
辿り着いた魔法の国で、モーギン・エンバーと出会ったロイヤル。モーギンの使い魔である妖精、フローズン・ヒースは坊っちゃんに自分のあるじの物語を聴かせたあと「梟の刺青」について語ります。坊っちゃんの背中に現れたその刺青は、魔法陣の一種だと。そして……?
それでは、本日もまいりましょう!
*
ロイヤルの背中に現れた「梟の刺青」が、魔法陣……つまり、魔法装置の起動キーであることはわかりました。それ以上のことはまだ不明ですが、これは大きな一歩です。
そしてもうひとつ、ロイヤルが知りたかったこと。
それは、フォレスティーナがロイヤルに飲ませていたという、謎のハーブの正体です。ロイヤルの瞳の色(紫色)が濃くなったのは、そのハーブを飲んだ後のこと。瞳が紫色に染まる魔法疾患は、飲食によって他者の魔力を取り込んだ時に発症するものなのです。調べてみる価値は、ありそうでした。
ロイヤルが魔法のハーブについて尋ねると、フローズン・ヒースは「じゃあ、きみを庭園に連れて行ってあげよう!」と、言ってくれました。
ロイヤル「この国、すごいな。どこへ行くにも、時空の門(※坊っちゃんはポータルのことを、勝手にこう呼びます)を通っていくなんて」
フローズン・ヒース「慣れれば便利だよ。ま、百万分の一の確率で、時空の狭間に飛ばされて帰ってこられなくなる、という噂もあるけどね。ははは!」
ロイヤル「え」
フローズン・ヒース「嘘、嘘。魔法使いの子供たちの間に伝わる、ただの怪談だよ!」
ロイヤル「ここか?魔法の庭園って」
フローズン・ヒース「そうさ。今きみの目の前に、綺麗なガラスの籠が見えてるだろう」
ロイヤル「籠?えーと、あの温室のことか?」
フローズン・ヒース「あの籠の中には、現代の世界では既に喪われた植物たちが、ひっそりと守り育てられているんだ。どれも魔力を供給されなければ芽吹くことすら出来ない、魅惑的で脆い生き物さ。この魔法の国に終末が訪れるまで、彼らはここで生き永らえる。あの中に、きみが探しているハーブもあるかもしれない。きみ、目当ての植物の標本かなにかは持っているのかい?」
ロイヤル「あ、うん。確かポケットに……」
坊っちゃんはポケットに手を差し込みましたが、すぐにチッと舌を鳴らしました。坊っちゃんの手には、ボロボロになったブルーベル(にそっくりですが、ブルーベルではないらしいです)の花びらの屑がくっついています。ウィンデンバーグでフォレスティーナのそばにこの花が落ちているのを見た時、坊っちゃんはひそかに拾ってポケットに忍ばせていたのですが……。
ロイヤル「これじゃ、花の元の形もわからないや。あの特徴的な匂いも……うん、感じなくなってるな。しおれて香りまで褪せてしまったみたいだ。でも、探してみるよ」
坊っちゃんはフローズン・ヒースと共に温室のなかに姿を消し、四時間と三十分後に再び出てきました。両手ですっぽりと小さな紫の花を包み、その顔には色濃い疲労の他に、隠しきれない達成感が覗いています。
彼は妖精と共に、本部の図書室に引き返しました。花を包んでいた両手をそっと離すと、花は魔法の国のエナジーから浮力を得て、ふわりと宙に浮かび上がりました。
(SSが見にくいですが、中央付近にお花が一輪浮いています)
フローズン・ヒース「籠(温室)の内部の【植物分類ラベル】が破損したままだったとは知らなかったよ。魔法の国を復元した際の、庭園の修復が不完全だったみたいだね。あとで本部のお偉いさんたちに伝えなきゃ。きみが見つけたこの花の名札も、欠損してて読めたもんじゃなかった。大丈夫なのかい、ロイヤル。きみは、本部の書庫からこの花の名を見つけだすと言った。でもきみ、ここに何万冊の蔵書があるか知らないんだろう?」
ロイヤル「う。言うなよ、おれ、もともと字を読むのは得意じゃないんだから。でも、やる前から諦める訳にはいかないんだ!」
フローズン・ヒース「いいね!その意気だよ!」
ロイヤルはニヤッと笑って、手近な本棚に歩み寄りました。手はじめに、魔法植物の図鑑に指を触れた途端……
ロイヤル「…………」
彼の動きがぴたりと止まりました。図鑑を引き抜こうと書架に手をかけたまま、何も言わなくなってしまいます。彼は一個の彫像のように、ろうそくの火に照らされていました。
フローズン・ヒース「……ロイヤル?どうしたの、ロイヤル、ロイヤル……。…………!!大変だ、返事をしなくなっちゃった。モーギン!来て、何かおかしいよ!モーギン!!」
フローズン・ヒースがひときわ大きな声で叫んだ時、ロイヤルがびくりと震えました。坊っちゃんは二度まばたきしたあと、けろっとした顔で振り向きました。
ロイヤル「え……?あ、ごめん。聞いてなかった。ヒース、何か言ったか?」
フローズン・ヒース「もーーー!脅かさないでよ!具合が悪いのかと思っちゃったじゃないか。きみがなんともないなら、それでいいけどさ……」
ロイヤル「ごめんごめん。…………?あれ、でも今おれを呼んだの、ほんとにヒースの声だったかな……。もっと別の、すごく巨大な……」
ロイヤル「……なんだ?急に眠くなってきた……」
フローズン・ヒース「ロイヤル、やっぱり大丈夫?すこし疲れた……?庭園でのハーブ探しを頑張りすぎてしまったかもしれないね。外の空気を吸いに行こうか」
ロイヤルとフローズン・ヒースがやってきたのは、魔法市場でした。
気晴らしがてらお店を覗くことを勧める妖精に、ロイヤルはトロンとした目で頷きますが……
耐えられないというように、噴水のそばのベンチで眠りこんでしまいました。
フローズン・ヒース「ロイヤル……」
心配そうにつぶやいて、フローズン・ヒースは坊っちゃんの頭上をふわふわしています。やがて、強力な魔力が近づいてくる気配があって……
彼が、やってきました。
モーギン「…………。眠ってしまったようだね」
フローズン・ヒース「モーギン、来てくれたのかい?ボクがきみを呼んだ声が、聴こえたんだね」
モーギン「遅れて悪かった。ぼくの妹弟子のペシミスティが、酔ってカウンターを破壊したとかで、グリマーブルックのバーに謝罪しに行っていたんだ」
フローズン・ヒース「きみも苦労するね。ところで、ロイヤルはどうしてしまったんだろう?本部の図書室で調べものをしていた時に、様子がおかしかった。そして、眠くてたまらないと言い出し、あとは見ての通りさ」
モーギン「そう心配する必要はないように見える。おそらく本部の書庫が、バーンウッドにアクセスしたんだろう」
フローズン・ヒース「アクセス?」
モーギン「きみも知っている通り、本部の書庫は生き物のように、ひとつの巨大な意志を持ってる。魔法によって生み出された疑似生命体……司書を兼ねた書庫管理システムだ。システムは必要とされないかぎり眠りについているけれど、バーンウッドが来訪したことに気づいて自動的に目を覚まし、彼の魂に焦がれて手を伸ばしたはず」
フローズン・ヒース「なぜ、そんなことを」
モーギン「遥かな過去の時代の話だ。書庫システムが創造された時代、その計画を率いていたのがノーマン家の者……バーンウッドの祖先だった。魔法界における、その者の輝かしい功績。そして今日、システムはバーンウッドの魂から、自分を生み出した者とおなじブラッドの匂いを嗅ぎ取った。システムに触れられたバーンウッドは、疑似生命体の指先から、書庫に蓄積された膨大な情報を流し込まれたんだ。疲れ果てるのは、あたりまえだよ。でも、身体に害はない。書庫システムは無邪気で優しいから、自分を生んだ者の子孫を害することは無いだろう」
フローズン・ヒース「……あやうい橋を渡るね、きみは」
モーギン「何が」
フローズン・ヒース「きみに与えられた罰のひとつ……【魔法について語ってはならない】。それを破ったとあっては、更なる罰として姿を蛙に変えられたとしても、石像に変えられたのちに粉々に砕かれたとしても、文句は言えなくなる」
モーギン「ヒース。きみがぼくの使い魔であることを、きみは忘れてはならない。ぼくがぼくの使い魔に何を話したところで、本部がうかがい知ることはできないのだからね。ぼくが自宅の壁に向かって魔法の話を聴かせたところで、罰を加えられることがないのと同じだ」
フローズン・ヒース「違うね。きみが言っていることには、意味がない。きみはただ、優しいんだ。書庫システムと同じさ。自分がどんなに泥をかぶったとしても、きみは、きみ以外のシムのために身を削ることをやめないだろう。あの死にかけた魔女を救った時のように、きみはここにいるロイヤルに対しても親身になってるじゃないか。わざわざボクを導き役に任じたりしてね。ボクだってロイヤルのことは好ましく思うけど、正直この少年よりも、きみのほうが何倍も大事だ」
モーギン「……もう行くよ。バーンウッドが目覚めたら、健康状態を確かめてグリマーブルックまで送り届けてやってくれ。グリマーブルックまで戻れば、バス停はそう遠くない。あとは彼が、自分の力で帰るだろう」
フローズン・ヒース「…………」
そうして、魔法の国の夜は更け、星空はまわり、ふたたび光の世界が訪れます。
朝。遠く離れた、ノーマン家のお屋敷では……?
暖炉の火に赤く照らされながら、ロイヤルの兄、グリフィン・トワイライトが電話をかけています。呼び出し音を聞きながら、応答を待っています。
グリフィン「…………。……………………。もしもし」
ハンナ「もしもしー?グリフィン、久しぶり!あんたが電話くれるなんて、すごく珍しいことだね?珍しいっていうか、よく考えなくても初めてだった!どう、元気にしてるー?」
グリフィン「元気だ。急にすまないが、訊きたいことがある」
つづきます!
*
今回のポーズは、自作(既出のもの)です。
今回も、多数のMOD・CC・ギャラリー作品のお世話になりました。
すべてのクリエイター様、ビルダー様に、心より感謝しております!
Thanks to all MODS creators and all builders!
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