私事ですが、二日半の旅から帰還し、現在PCの前におります。三回にわたった予約投稿にお付き合いくださった皆様、ありがとうございました。今日からまた、はりきって更新してまいりたいと思います!
さて、今回は「ロイヤルと裸足の魔女編」です。
一日の終わりに、ロイヤル坊っちゃんの身体がふいに光に包まれ、彼はウィンデンバーグのバーの前からストレンジャービルの自分のおうちに瞬間移動してしまいました。さらに、彼の瞳は色味を変え、深く輝く紫色に染まってしまいました……。
それでは、本日もまいりましょう!
*
ロイヤル坊っちゃんは、深い眠りのなかで夢を見ていました。
坊っちゃんの目の前に、城砦の奥のしつらえが浮かび上がります。
???「リノ……。リノ、目を覚ましているか……?」
どこかで聞いた、張りのあるその声が、扉の向こうから漏れ聞こえました。
凛としたもうひとつの声が、さしたる感慨もなく答えます。
リノ「我があるじよ。あなたが望まれるなら、わたしはいつでも目を覚まします」
???「……悪夢を見た。おれが殺した妹が、血に染まりながら闇のなかに立っているのだ。妹は言った。【兄上の首が敵に斬り落されるその日まで、わたしの恨みは消えない】と」
リノ「それは夢にすぎません。妹君を殺めたという罪悪の感覚が、あなたにありもしない地獄を見せているのです」
???「憎たらしい女だ。しかし、今はその言葉に慰められる。どうかそのまま。おまえの鼓動を感じていたい。……おれは昨夜、四百人のヴァンパイアを銀の槍で貫き殺した。しかし、いくさは終わらない。おれは世界に安寧をもたらすどころか、惨禍を広げ続けているだけなのかもしれぬ」
リノ「戦いを始めてしまった以上、退くことはできません。どちらかが滅ぶまで、惨禍は続く。我があるじよ。それでもあなたが勝たなければ、世界は永劫闇に呑まれることことになるのです」
???「氷の女よ、もっとおれを鼓舞してくれ。そうすればおれは、明日もヴァンパイアの屍たる灰の山を築くことが出来る」
リノ「あなたの望みのままに。……少々お待ちください。何かお飲み物を。小姓を呼んでまいりましょう」
…………。
……………………。
窓から早朝の光が差し込み、坊っちゃんが目を覚ましました……。
ロイヤル「これは……、この前の夢の続き、か……?」
坊っちゃんは億劫そうな動きで起き上がり、鏡の前に立ちました。
ロイヤル「瞳の色、昨夜のままだ。頭痛いのは収まったけど……」
坊っちゃんは瞼に手を触れたあと、冷蔵庫を開けてシリアルを食べ、洗濯をして、しばらく考え込んでいました。そして、やや躊躇いながら携帯電話を手に取りました。連絡先(アドレス帳)を呼び出し、発信します。
ロイヤル「もしもし、姉さん……?」
電話の向こうのポーラスター「もしもし、ロイヤル?あ、ごめん!こっちからかけ直すから、ちょっと待ってて!」
ロイヤル「え?あ、うん」
あわただしく通話が切れたあと、三十秒もしないうちに、ロイヤルの携帯電話が震えました。
ロイヤル「?……なんだ?一族の屋敷の番号からかかってきてる。でもこのタイミングだし、姉さんだよな。……もしもし?」
ポーラスター「もしもし、ロイヤル?ごめん、バタバタして!」
ロイヤル「姉さん?一体どうしたんだよ。屋敷の電話を使うなんて。でも、無事にそっちで過ごしてるみたいで安心した」
ポーラスター「ふふ。ロイヤルも、ちゃんとやってるみたいだね?こうやって屋敷の電話を使ってるのは、わたしの携帯電話のせい。バッテリーが急にダメになっちゃって、通話してるとすぐ電池切れになっちゃうんだ。ここ(屋敷)を出たら、すぐに修理してもらわなきゃ。で、わざわざ電話をくれるなんて、ご用は何?」
ロイヤル「あ、うん……。グリフィンは……その、忙しいのかな」
ポーラスター「グリフィン兄さん?話したいなら電話替わるけど……あ、ううん、違うの。グリフィンも元気にしてる。体調崩してるとかじゃない。ただ、グリフィンは今、ロイヤルの想像してる通り……一族の代表としての仕事に忙殺されてて。……うん。でも、ロイヤルと話したらグリフィンも気が晴れるかもね?じつは、引退した使用人がうちのお父様相手に訴訟を起こしてることがわかって、その対応を兄さんが。……さすがに疲れたらしくて、今はすこし寝てる」
ロイヤル「……そっか。なら、いいや」
ポーラスター「ロイヤル、もしかして何か問題が起きてる?グリフィンの代わりにはなれないけど、わたしでよかったら聞くよ?」
ロイヤル「ううん、いいんだ。それより姉さんのほうは、一族の儀式はもう終わったのか?ちゃんと成人を認めてもらえた?」
ポーラスター「うん、ばっちりだよ!【誓約の血族】の刺青も、おばば様に入れて頂いた。これでわたしは、正真正銘【ノーマン家に忠誠を誓う者】となったよ」
ロイヤル「はは……。その言葉を聞くのは、ちょっと複雑だけどな。刺青、何のマークを選んだんだ?」
ポーラスター「え?至って普通だよ。【腰の翼】を一対。でもそれだけじゃ背中が寂しいから、オリジナル感を出そうと思って、蝶のマークをプラスして頂いたの。おばば様に【おまえは、じつに変わり者だ】って言われた。あ、見たい?画像送ろうか?」
ロイヤル「い、要らないって。姉さんが背中出してる画像見てどうするんだよ。でも、なんだか安心した。梟のマークを背中に入れた、とか言われたらどうしようかと思ったから」
ポーラスター「は?」
(坊っちゃんの背中には、現在謎の「梟の模様」が浮かび上がっております……)
ポーラスター「……ロイヤル、やっぱり何か変だよ?心配なことでもある?声も元気がなくなってきたように聞こえる。悩みがあるならいつでも聞くから、言いたくなったら言うんだよ?」
ロイヤル「うん、ありがとう」
と、ロイヤルは平静を装って笑いました。
しかし、そのあと黙り込み……
彼は、思い直してこう言いました。
ロイヤル「いや、姉さん。やっぱり、お願いがあるんだ。今、思いついたこと。屋敷に滞在してる間に、すこし調べてほしいことがある。図書室の蔵書のなかに【梟の刺青】について書かれてるものがないか、見てほしいんだ。手がかりがないから、簡単な調べものではないと思うけど……。おれがこんな頼みごとをした理由については、今は訊かないでほしい。ごめん……」
ポーラスター「…………。わかった。やってみる。この調べもののこと、グリフィンにも話していい?」
ロイヤル「うん。グリフィンは一時期、森の家に一族の蔵書を運び込んでもらって暇つぶしに読み漁ってたことがあるから、何か知ってるかも。あと、一番重要なことを聞いてなかった。シャーロッタは回復したか?」
ポーラスター「まだ、おばば様の館で休んでる。じきに元気になると思うけど、今はシャーロッタの【精霊としての肉体】を構成する水のエレメントを洗浄してるところ。わたしたちはどっちにしろ、グリフィンの執務が片付くまではお屋敷から動けない。お父様もうるさいしさ!」
ロイヤル「あぁ、だろうな。父さんのことは、ほどほどに受け流せよ?じゃ、ありがとう。また連絡する」
ポーラスター「うん、じゃあまたね。話せてよかった。あ、誰か来るから、これでほんとに切るね?お父様に見られたらシャレになんないし」
ロイヤル「ん、わかった」
姉弟の電話が終わる頃、長兄グリフィンが重ったるく目を覚ましました……。
つづきます!
*
今回のポーズは
新生まるきぶねスローライフ 様
より、
また今回の「電話CC」は
Il clan di MO 様
より、それぞれお借りしました。
その他、シムの基礎の造形に複数のCCをお借りしております。
また、今回も複数のギャラリー作品のお世話になりました。
すべてのMOD・CCクリエイター様、ビルダー様に心より感謝しております!
Thanks to all MODS creators!
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