こんにちはー。

今回は久しぶりに(?)「ロイヤルと裸足の魔女編」です!

自分で足を運んだ覚えもないのに、雪降る池で目を覚ましたロイヤル。飼い犬トゥインクルの導きで、ロイヤルを見つけ出したユキちゃん。ふたりは森の小屋を目指しましたが、空き家であるはずの小屋からは、不思議な女性が現れて……?

それでは、本日もまいりましょう!




山小屋から現れた女性は、ロイヤルとユキちゃんを見ると、驚いた様子もなくほほえみました。

その落ち着きに、ユキちゃんのほうが意表をつかれました。

夜中の零時すぎにドアを乱打されて、それで平然としていられる女性がいるとは思わなかったのです。

ユキ「あの、とつぜんごめんなさい。ロイヤルがずぶ濡れで凍えそうなの。暖房に当たらせてくださいませんか?」

女性はユキちゃんを見つめ、ロイヤルの顔を見つめました。夕陽のような赤い瞳です。

女性は頷くと、ドアを大きく開けて招き入れる様子を見せました。

ユキ「ありがとう!」


女性「…………。…………」

女性は一度ひっこむと、清潔なシーツを抱えてもどってきました。

無言のまま手を動かしているのは「これで身体を拭け」と伝えているようです。ガチガチと歯を鳴らして震えているロイヤルの前で、女性はなおも手を動かし、何か伝えようとしていました。

ロイヤル「助かります、ありがとう……。…………。なんだ。むこうの、部屋?が……どうしたって?きみはもしかして、しゃべれない、のか……」

低体温で頭の回転速度が落ちているロイヤルを、女性は隣の部屋にひっぱっていきます。

ユキ「向こうの部屋に火があるって言ってくださってるんだよ。ありがとう、暖房をお借りします。ロイヤル、来て!」


ユキちゃんはさっそうと隣の部屋にとびこんで、火がついていない暖炉を見つけました。赤い瞳の女性が、ジェスチャーで何か言いました。

ユキ「火?火が、ない……?えぇと、マッチ……?わたしがマッチを持っていないかって、そう訊いてるんですね?わたしは持ってないし、ランタンの火も消えてしまった。でも、そこの棚の上にあるのは、ライターじゃないですか?……そう、それです。貸してください。どうしたの。お姉さん、ライターを見たことがないの……?

ユキちゃんは古そうなライターを受け取って、つまみをカチリと言わせました。火はつきませんでした。

ユキ「オイル切れだ。お姉さん、その横にあるカートリッジを取ってください。ごめんなさい、わたしの身長じゃ届かない。ロイヤル、もうちょっと待ってね。これをライターに入れて、一番奥まで差し込んでから……えい!」


ボッという音がして、待ちわびた火がライターの先から噴き出しました。

ユキ「ついた!さぁロイヤル……!」


たっぷりとした炎に照らされたロイヤルの横顔は、ホッとして見えました。

ロイヤル「ありがとう。おれ、ユキがいなかったら本気で死んでたかもな?きみも、おれたちを拾ってくれてありがとうございます。ええと……」

ロイヤルは、赤い瞳の女性に手を差しのべ、【名前を教えてほしい】と促しました。女性はほほえんで、小鳥のように頭を振っただけでした。

ロイヤル「えぇと……名乗りたくない?……うん。人にはいろんな事情があるから、名乗りたくないってことはあるかもしれないけど。それとも、もしかして自分の名前を思い出せない、とか……?」

ユキ「えっ」

女性はまたほほえんで、小鳥のように頭を振りました。気分を害している様子はありません。戸惑っているロイヤルに【そのまま、火にあたっているように】と示したあと、女性はユキちゃんをひっぱって奥の部屋に行ってしまいました。

ユキ「え、どうしたんですか?……手?手伝いをしてほしいの?」

ロイヤル「なんだ……?」


ロイヤルはけげんな顔をしたまま、動物のように身体をまるめて、暖炉に手をかざしたり、両の手のひらををすり合わせたりしていました。

ややあって、ユキちゃんが勇ましく洋服を抱えてもどってきました。

ユキ「ロイヤル。お姉さんが着替えを用意してくれたよ!その濡れた服を脱いで。お姉さんはね、どこに何の服が入ってるかわからないみたいで、クロゼットをひっくり返してお部屋じゅうを服の山にしちゃってた。引き出しに、古い男物のセーターがあったの」

ロイヤル「え?……ぅん、あぁ、まぁ。ありがとう」


服を脱げ。

と言われて堂々としていられるほど、ロイヤルは人生経験豊富な男ではありません。もちろん、ユキちゃんは【そういう】意味で言っているのではないとわかっていましたが。

ロイヤルは動揺をかくすように、横を向いてシャツを脱ぎました。

目の前でいきなり着替えはじめると思っていなかったユキちゃんのほうも、動揺して視線をさまよわせました。あぁ、いいえ。たとえば、男の子は水着のときはシャツを着ていないワケですし、とくに問題はないのですが。

しかし。

ユキ「…………!ロイヤル、その背中は……

ロイヤル「えっ」


ロイヤル「ぅわ!!なんだ!?背中に模様が……!

ユキ「梟、だよね……」

ロイヤルは自分の背中を窓ガラスに映して、たこみたいに腕を背中にまわしながら、梟の模様をさわったり引っ掻いたりしていました。

ロイヤル「ペンキとかじゃないよな。刺青に見えるけど、転写魔法……?」

ユキ「魔法?ロイヤルは魔法使いなの?」

ロイヤル「うん、まぁ。それにしても、なんでこんな急に……いてて、ずっと首ねじって背中見てたら、スジがおかしくなった」


寄り目になるほど自分の背中を見つめたところで、謎が解けるワケではありません。

とりあえず、着替えを済ませます。ユキちゃんが持ってきてくれたこのセーターは、冬祭り用の一品でしょうか?


人心地つきました。


奥の物置部屋から、女性が顔を出しました。毛布を抱えていて、一枚をロイヤルに、一枚をユキちゃんに手渡します。もう遅いし休んでいくように、と言っているのです。

ユキ「え。毛布、わたしにも?」

ロイヤル「いや、そこまで世話になるワケには」


しきりと恐縮していたふたりですが、ソファーにすわっていたロイヤルの瞼はあっという間に重くなりました。坊っちゃんは、夢のなかに引きずり込まれていきました。

注意深く様子を見守っていたユキちゃんが、ロイヤルの頬に手の甲をあてました。

ユキ「やっぱり熱が上がってる。お姉さん、ロイヤルは池に落ちたみたいなんです。ご迷惑を承知でお願いします。熱が下がるまで、彼を動かさないほうがいい。あとすこしの間、彼をここに置いてください」


(トゥインクルも、鼻を鳴らして見守っています……)

つづきます!



今回も、たくさんのMOD・CC・ギャラリー作品のお世話になりました。
すべてのMOD・CCクリエイター様、ビルダー様に、心より感謝しております!
Thanks to all MODS creators and all builders!

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