こんにちはー。
お雑煮が美味しいです。お煮しめも美味しいです。お正月料理が大好きなので、ご馳走天国です!胃腸休めのための雑炊も美味しい!お変わりございませんか?
今回は、飛び飛びにお送りしております「ミナキ四姉妹の新しい隣人」こと、ガレくん編です!生き別れのお母さんを捜しているガレくんの努力はつづきます。
(これまでのストーリーは「★ガレ編」のラベルからどうぞ!)
それでは、本日もまいりましょう!
*
フェリシアナ・コンテスティ「ガレ……。わたしのドール、わたしの息子……。わたしはあなたに命を与えたけど、健康をあげることはできなかった。わたしがあなたのそばに居ない時でも、忘れないで?わたしはいつも、あなたを愛しているから……」
母の面影を夢に見ていたガレ・コンテスティが、目を覚まそうとしています……。
ガレ「……久しぶりに見たな、あの夢。母さんが姿を消した夜の……」
そう。フェリシアナは、体が弱かった息子のガレを病院に預けて、行方不明となったのです。
ガレくんがベッドにすわったまま息をつき、ぼんやりしていると、部屋のドアがノックされました。
ブルーノ「ガレ、居るんだろう?今、帰ったよ。食事を作るが、一緒に食べるかね?」
ガレ「小父さん?お帰りなさい。そうだった、明日は小父さんの仕事が休みだったね」
住み込みでミナキ四姉妹の監督をしているブルーノ・エインズワースが、珍しく自宅に戻っているようです。
ブルーノさんと義理の息子の食事風景です。
ガレ「ずっと、言おうと思ってたことがあるんだけど」
ブルーノ「うん?なんだね?」
ガレ「ごめんね。小父さんに相談もなく、母さんを捜しはじめて。おれを育ててくれたのも、おれを食べさせてくれたのも小父さんなのに、おれを捨てた母さんに会いたいなんて言うのは、恩知らずじゃないかと思ってた。でも、やっぱり会いたいんだ。いなくなったあとの母さんが、何をしてるのか知りたいんだ」
ブルーノ「当然のことだ。わたしがおまえだったとしても、おなじことをしたいと思うだろう」
養父を見つめるガレの目に、信頼と安堵の色が浮かびました。彼は口の中で「うん」というようなことを言って、フォークを口に運びました。
ブルーノ「……おまえがフェリシアナを捜していると知って、わたしも執事協会のツテを頼って彼女のことを尋ねてみた。フェリシアナ・コンテスティという名前がほとんど知られていないのは事実だが、その名前は一時期の芸術界で、特有の意味を持っていたからね。おまえが生まれる前、フェリシアナは絵画に興味を示していて、若い抽象画家たちの作品をモチーフに歌を作るという活動をしていた」
ガレ「え……?」
ブルーノ「このことをおまえに話すのは初めてだね。フェリシアナの独特の活動は注目され、ライブペインティングと共演する形の新作ソロコンサートが、倉庫街で企画された。だがその矢先、フェリシアナが歌っていたバーで、彼女のファンを名乗る男たちが喧嘩騒ぎを起こし、片方がもう片方にナイフで刺された。生来繊細なたちだったフェリシアナは激しいショックを受け、歌えるような状態ではなくなった。そして企画は中止になり、フェリシアナはコンサート費用を多額の借金として負うことになった。彼女の名は芸術界から消え、彼女の生活は荒れた。そして、おまえが生まれたんだ」
ガレ「…………」
ブルーノ「サンマイシューノに、絵画にのめり込んでいた頃のフェリシアナを知る女性が居る。偉大な画家だが、無礼を承知でメールを送り事情を話したら、返信をくださった。お会いしてみるかね?」
ガレ「…………。はい」
メールでのやり取りは着々と進み、約束の日になりました。
サンマイシューノのアップタウン。高層ビルの上のラウンジでその画家にお会いし、話を聴かせて頂くことに。
プールサイドのテーブル席で、落ち合いました。
ガレ「ガレ・コンテスティです。マダム、今日はありがとうございます。お会いできて光栄です」
なんと!
驚くべきことにくだんの画家とは、カー家のマダム・メルローズでした!
たしかにメルローズは、長いこと筆を置いていましたが、かつては才気あふれる画家であったのです。彼女の名は、画壇に轟き渡っていたとか。
メルローズ「こちらこそ、会えてよかったよ。フェリシアナに息子が生まれたことも、その子が入院してたことも噂には聞いてたが、こんなに大きい男の子になってるとはね。早いもんだ。それでは、面倒な挨拶は放り出して、あたしの知ってることを話そうか。あんたもそのほうがラクだろう」
メルローズ「あんたを産む前のフェリシアナは繊細で美しく、少々鋭敏すぎるところのある娘だった。歌い手として良い声をしていたし、優れた詞を書きもしたが、彼女自身は自分の才能を疑ってた。彼女はたびたび観客の野次に傷ついて、店がはねたあと浴びるほどお酒を飲んで倒れた。無垢だったんだよ。そんなところが目を惹きつけたんだろうね、彼女はなんというか、モテたんだ。男たちの間では、よくよく彼女をめぐるイザコザが起こってた」
マダム・メルローズはそこで言葉を切り……。
メルローズ「すまないね。あんたの望むような話ではないだろう。母親についてのこんな話を聞かされて」
ガレ「いえ……。ぼくの知る母も、やっぱりそういう女性でした。ぼくが生まれたあとも、ずっと」
ガレは淡々と答えました。
メルローズ「……そうかい。ああいうふうにしか生きられなかった彼女を批判的にとらえる気には、あたしもなれないね。彼女は若く、必死だったんだ。泥の中に落ちた、産毛の雛のようだった。彼女はやすらぎを求めて何人かの男と生活を共にしたが、いずれも長続きしなかった。やがて彼女は、借金を背負って去った。あたしは人づてに、彼女が困窮しているらしいこと、そして彼女が男の子を……あんたを産んだということを聞いた。だが、彼女は引越しを繰り返し、足取りはつかめなくなった」
ガレ「…………」
メルローズ「次にフェリシアナの噂を聞いたのは、彼女があんたを病院に預けたあとだ。息子から遠く離れて、田舎町の酒場で歌っているらしいと。それ以上のことはわからなかった。そして、三度目に消息がわかったのは……これについては、不確かな話で確信が持てないんだが……それで言うか言うまいか、今の今まで迷ってたんだが」
ガレ「どうぞ言ってください」
メルローズは尚も考えあぐねていましたが、ついに言葉を継ぎました。
メルローズ「数年前にあたし自身が、彼女に似た女を見たことがあった。場所はウィンデンバーグ。いや、似ているだけで、別人だったのかもしれない。冬の夜、通りのベンチに男とふたりですわっていた。通りかかった時、あたしはその女が誰かに似ていると思ったが、思い出せずに通り過ぎた。その女はあまりに顔色が悪く痩せていたから、誰に似ていると思ったのかわからなかったんだ。フェリシアナだと気づいてあわてて引き返し、ベンチのところに戻った時、ふたりはもう居なかった」
ガレ「…………!!」
ガレの顔に興奮で赤みが差し、何か言おうとして身を乗り出しましたが、急に顔をそむけると激しく咳きこみました。そう、退院したとは言え、彼の体調は万全ではありません。咳はなかなか収まらず、彼はテーブルに突っ伏して呼吸をコントロールしようと努めました。
メルローズ「気を鎮めるんだ。吸うのではなく、吐くほうに意識を向けて」
ガレ「……その時のこと、他に情報は」
ガレは水を飲み、喉元に手をやって気道を庇うようにしながら尋ねました。
メルローズ「声を聴くことができれば」
と、メルローズは言いました。
メルローズ「たった一言でも、声を聴くことさえできれば、その女がフェリシアナかどうかわかったはずだ。フェリシアナの声はとても魅力的だったから。だがあたしが通りかかった時、喋っていたのはその女ではなく、連れの男のほうだった。青白くて貴族的な紳士が、女の肩に手を置いて」
ガレ「なんと言っていたのですか?」
メルローズ「『きみは、ひとりで立てるようにならなければならない』と」
つづきます……!
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