本日は、また「ロイヤルと裸足の魔女編」ですー。
坊っちゃんを取り巻く、いくつかの謎が解けつつあります。一方で、まだ複数の未知の領域が残されてもいます。その最たるものは、謎の女性フォレスティーナがどこから来て、彼女が何者なのかということ。坊っちゃんはウィンデンバーグの孤島にわたり、フォレスティーナを訪ねます……。
それでは、本日もまいりましょう!
*
ロイヤル坊っちゃんは、森の小屋の玄関に立ってノックしました。
ロイヤル「彼女に……、フォレスティーナに訊きたいことがあるんだ」
そう言った坊っちゃんの横顔は、やや緊張しています。
ほどなくガラス越しに、ドアを開けにやってくるフォレスティーナの姿が見えました。しかし。
ロイヤル「…………?」
ガラス越しに見る彼女は、俯いて元気のない様子でした。
ロイヤル「やあ。こんにちは、フォレスティーナ……」
坊っちゃんが、戸惑いながらも作法通りに挨拶すると、フォレスティーナはにっこりとほほえみました。ロイヤルは失礼ではない程度に、けれど注意深く彼女の顔を見ました。そして、彼女の切れ長の目元やほっそりした鼻が、ほんのすこし赤らんでいることに気づきました。
ロイヤル「きみは……、もしかして泣いてた、のか?」
フォレスティーナ「…………」
彼女はまた裸足に戻っていて、
その整ったほほえみは、彼女の本心を伝えてはくれません。
ロイヤルは「フォレスティーナに訊きたいことがある」と言っていました。でも、彼女を様子を目にすると、それをここで口に出すことは躊躇われるようでした。シムの涙を見ながら自分の都合を押し通せるほど、坊っちゃんは不調法な男の子ではないのです。
ロイヤル「……いや、特に用事はないんだけど。フォレスティーナは元気かな、と思ってさ。これ、お土産。ハラ減ったら食べてくれ。日持ちはするから」
フォレスティーナの手に「マカロニを揚げたお菓子」の包みを押しつけて、坊っちゃんはそう言いました。
フォレスティーナは包みを覗き込み、きわめて幸福そうにほほえんでみせました。
その表情には、なんの憂いもないように見えます。
坊っちゃんは一度目を伏せてから、フォレスティーナの瞳をまっすぐに見つめました。
ロイヤル「……フォレスティーナ、きみが何を思って何に泣いてるのか、おれにはまだわからない。きみはおれに、何も教えてくれないから。誤解しないでくれよ。きみが言葉を話せないから気持ちがわからないとか、そういうことじゃないんだ。きみは何か、本当のことを隠してる。いや、隠してるということ自体にも、何か事情があるのかもしれない。話したくなったら、おれかユキに言ってくれ。少しは、きみの力になれると思う。……じゃあ、また来るよ」
坊っちゃんはそれだけ言って、くるりと身を翻しました。
その背中に……
ほそくあたたかな手が、引き止めるように伸ばされます。
ロイヤル「…………!どうしたんだ……?」
フォレスティーナ「…………」
振り返ってフォレスティーナの表情を確かめようとした時、ロイヤルの頭のなかで「ばちんっ!」と、スイッチが切られるような音がしました。いや、そんな気がしただけかもしれません。ともかく「真夜中、部屋の電気を一斉に消したかのように」ロイヤルの視界は真っ暗になり、痺れるような衝撃が走りました。
ロイヤル「…………!?」
前後不覚になり凍りつくロイヤルの耳に、いつかどこかで聞いたような、張りと威厳のある声が響きました。
???「なぜ、靴を履いていないのだ」
一瞬、そう問われているのはロイヤル自身なのかと思いました。どうしてなのかはわかりませんが、胸が押しつぶされたように、苦しい気持ちでいっぱいになります。なぜ自分は、靴を履いていないのだろう?しかしやがて、問いを投げかけられたのはロイヤルではなく、別のシムなのだと気づきます。
???「リノよ。おまえはなぜ、靴を履いていないのだ。まるで、これより入水し、あるいは首をくくろうとする者のようだ。生きて帰るつもりはないということか」
もうひとつの凛とした声が、感情を込めずに答えました。
リノ「我があるじよ。わたしの魔力で、あなたを敵陣の只中にお連れします。あなたはただ、そこで破滅の力を振り撒くだけでいい」
???「だが、それを実行すれば、おまえも死ぬのだ」
…………。
……………………。
ぱさり、と軽い音がして、ロイヤルの頭に何かが載せられました。
手で触れてみると、それは野の花で編んだ冠でした。いつのまにか視界の暗闇は消えていて、ロイヤルは森の小屋の前に立っています。自分は何をしていたのだろう?と、彼は考えました。……そうです。フォレスティーナがロイヤルの背中に触れて「すこし話をしたい」と、目で伝えたはず。それで、お庭で彼女が淹れてくれたお茶を飲みながら、彼女が花を摘んだり編んだりして戯れるのを、ぼんやり眺めていたのです。
ロイヤル「……フォレスティーナ、ひとつだけ教えてほしい」
ロイヤルがぽつりと言うと、水仙を摘んで花束にしていた彼女が振り返り、にっこりと小首を傾げました。
ロイヤル「あの雪の夜、熱を出して寝込んでいたおれに、きみは魔法のハーブを飲ませた。いつまでも見て見ない振りをしている訳にはいかない問題だと思う。おれ、あのハーブについて調べたんだ。ムラサキタグリバナ。飲んだ者の魔力を高め、また使役魔法の補助薬として、使い魔に与えることもあるって。……フォレスティーナ。きみはおれに、何をした?」
フォレスティーナはほほえみをたたえたまま、ガラス瓶に水仙の花束を挿しました。
そしてロイヤルの手を取り、その掌に指で文字を書きました。
【わたしは宿命のままに生きる。あなたはその一部である】
ロイヤル「…………?」
(フォレスティーナがすわっていたあたりには、再びあの魔法のハーブ……ブルーベルに似た【ムラサキタグリバナ】が散らばっています……)
つづきます……!
*
今回お借りしたCC
マグカップ
新生まるきぶねスローライフ 様
クッション
imadako 様
雑誌
SIMcredible!Designs 様
花冠
Plumbob Tea Society 様
また、今回のポーズは自作です。
今回も、たくさんのMOD・CC・ギャラリー作品のお世話になりました。
すべてのクリエイター様、ビルダー様に、心より感謝しております!
Thanks to all MODS creators and all builders!
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