本日は、また「ロイヤルと裸足の魔女編」ですー。
フォレスティーナ(本名:リノ)の襲撃から一夜明け、ユキちゃんと合流したロイヤル。ユキちゃんは「フォレスティーナを捜し出して、真意を聞きたい」と訴えますが、烈しい気性を持つロイヤルは「フォレスティーナは敵だ」と断じます。そこに、都会の魔女マル・フォーンが現れて、新しい出会いの時が訪れました……!
それでは、本日もまいりましょう!
*
ロイヤル「…………?あ。もしかして、モーギンのことか……!?」
マル「あぁ、やっぱり!」
マル・フォーンは、そう言って溌剌と笑いました。
マル「さっき、あたしがこのお店の前を通ったらモーギン様の気配がしたので、何かと思って落ち着かなかったんです。だってモーギン先生は、ここ(ウィンデンバーグ)に居るはずがないシムだから。……不思議に思って気配を辿り、お店に入ってみたらロイヤル、あなたが居たの。きっと、あなた最近先生と会って、握手か何かなさったのね?先生の気配……先生の魔力は、あなたの右手から漂ってきています」
ロイヤル「え?えーと……、あぁ!そういえば魔法の国でモーギンと会った時、最初に握手した気がする……!」
記憶の糸をたぐって、ロイヤルはそのことを思い出しました。
率直であけっぴろげなマルの物腰に、ちょっと意表を突かれてもいます。
ロイヤル「……それで、マル。きみは?魔女だっていうのはわかったけど、モーギンの……ええと、生徒、なのか?彼のことを【先生】って呼んだよな?」
マル「そうです。あたしは、モーギン・エンバーの弟子。あるいは【モーギン様の手足】とでも言ったところでしょうか?先生は今、ご存知の通り【開店休業】の身の上です。だから、わたしが先生の代理として動いているんです。先生の書簡を届けたり、先生のご友人からお言付けを預かったり(※モーギン先生は「魔法を研究してはならない」という罰を、本部から受けています)」
ロイヤル「ええと、うん」
【モーギン先生の罰】というセンシティブな話題を明るく口にするマルは、なかなか迫力がありました。
マル「でも、今あたしがここに居るのは、先生とは何の関係もないんですけどね?今日は、ウィンデンバーグに住んでるあたしの弟に、本を届ける約束があって。……ええ、そんなことはいいの。……あたしがあなたに声をかけた理由は、先生の気配のほかにもあります。あたしはあなたに【先生の魔力】を感じたけど、もうひとつ奇妙なズレを感じた。あなた自身の魔力に、謎を感じたんです」
ロイヤル「また、謎か……!」
思わず、ロイヤルはそう呻いて、頭を押さえました。
ロイヤル「……ごめん、マル。会ったばかりなのに、当てつけみたいに声を出したりして。でも、ちょっと今、おれは自分に降りかかってる出来事で手一杯なんだ。きみの話を聞くのは、すぐじゃなくちゃダメか……?」
ロイヤル「それでも、聞いたほうがいいと思います。ロイヤル、あたしの話を」
マルは奇妙な確信を持って、真剣に言いました。
ロイヤル「…………。わかった」
マル「お店の二階で待ちます。あなたのアルバイトが終わったら、いらしてください。じゃあ、のちほど」
マルはそう言って、グラスを手に階段を上がっていきました。
三十分後、勤務を終えたロイヤルもまた階段を上がり、マルを訪ねました。すこし離れたところで、ユキちゃんが心配そうに見ています……。
ロイヤル「……すみません、遅くなって」
マル「いえ、ここは良いお店ですね。居心地が良くて、空想して過ごすのにぴったりだわ。あっというまに時間が経ってしまいます。……ええ、そんなことはいいの。では、あたしが今日、最初にあなたを見てからずっと気に掛かっていたことを、今から言います」
ロイヤル「ああ」
マル「ロイヤル、あなた体調は大丈夫ですか?」
マルは丁寧に、けれど切り込むように尋ねました。
ロイヤル「…………?ええと、ああ、うん。今は問題ないけど」
マル「あたし、魔力は弱くて【ダメな魔女】なんですけど、感知能力は高くて。……あたしの目には、あなたの魔力があなたの身から漏出しているのが見えます。魂の傷からほのかな魔力が漏れ出して、そのあたりを漂っているんです。魔力というのはシムに惹かれる性質を持ってるから、あなたの身を離れた微弱な魔力は、あたしのほうにも流れ込んできます。あなたの魔力は、鋭くて痛い。あなたの近くにいる方、たとえばご家族とかお友達が最近、あなたの身体に触った時に体調を崩して、倒れたりしませんでした?ま、モーギン先生クラスなら、あなたと握手してもなんともないでしょうけど……、あの方は特殊ですし」
ロイヤル「あ……」
ロイヤルは、今朝ユキちゃんがロイヤルの髪を拭こうとして倒れそうになったことを、思い出しました。
マル「その現象は、あなたの魂の破片を含んだ強い魔力が、近くの方に流れ込んだから起きたんです。この場合、他者の魔力を吸収して倒れるというよりも、他者の魂が流れ込んでくるのを拒絶しようとして、意識を失うんです。いいえ、魂がすこしばかり他者の身体にとびこんだからと言って、誰にとっても大した害はありません。魂はみな、在るべき場所に還るもの……。時がたてば、その魂の破片も本来の器……あなたの身体に戻ってくるから」
めまいがするほど不思議な話を、マルは当然のような顔で話し、ロイヤルは真剣な顔で聴いています。
マル「問題は、あなたの魔力が漏れ出している理由のほうです。魔力が漏れ出すほど鋭い傷がシムの魂につくなんて、あたりまえの生活を送っている分には、起こりえないことですから。誰か、悪意を持った魔法使いが、あなたに強力な魔法をかけたとしか考えられません。あなた最近、誰かと争ったり、ケンカしたり、対立したり、魔法の決闘をしたりとかしませんでしたか?」
ロイヤル「…………リノ」
ロイヤルは顔を緊張させ、ぽつりと呟きました。
言葉を話さなかった頃のリノの柔らかな笑顔、リノが彼に飲ませた魔法のハーブ、昨夜の戦闘の光景などが、頭を駆けめぐります。
マル「率直に言います。今、あなたは激しいダメージを受け、あなたの魔力は欠損してます。あなたに術をかけて害した魔法使いは、あなたの魂を切り分け、その魔力を根本(こんぽん)から奪い取ったのでしょう。あなたのなかの空洞を見た限り、失った魔力の量が多すぎる。魔力の枯渇は、魔法使いの生命に関わります。これは剥離と呼ばれる、死に至る外傷。奪い取られた魔力を奪い返すしか、道はありません」
つづきます……!
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今回お借りしたポーズ(SSの2枚目・モーギン先生のポーズ)
新生まるきぶねスローライフ 様
他、たくさんのMOD・CC・ギャラリー作品のお世話になりました。
すべてのクリエイター様に、心より感謝しております!
Thanks to all MODS creators and all builders!
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