本日は、また「ロイヤルと裸足の魔女」編ですー。
ひょんなことから、その身体が「気体めいた半透明」になってしまったロイヤル。彼はリノ・ミナキ(フォレスティーナ)の身体に吸い込まれ、リノの目で世界を見ることになります。そしてリノは思いがけない言葉を、ユキちゃんに投げかけます……。
それでは、本日もまいりましょう!
*
リノ「愛しているのですか、ロイヤルを」
ユキ「…………!」
リノがユキちゃんに投げかけた言葉は、ロイヤルをも驚かせました。そんな不思議な言葉には初めて触れた、とでもいうように首を傾げ、目をみはります。
…………。
…………。
ユキ「……うん。ロイヤルのことは、好きだよ」
視線を宙に彷徨わせた後、ユキちゃんは俯いて、ポツリと言いました。
ユキ「ただ、愛が何なのか、わたしにはまだわからないから。亡くなったおばあちゃんは、わたしやお姉ちゃんを愛してくれたけど、フォレスティーナが訊いてるのはそういうことじゃないでしょ?わたしにとっては【愛】って、広場の壁画に描かれたハート型のケーキみたいなもの。歓声を上げたくなるほど綺麗で美味しそうだけど、そのかけらを口にすることは決して出来ないし、巨大すぎるの」
賢い少女は、非常に明確な説明をしました。
リノの内側に閉じ込められているロイヤルは、そわそわしています。この話題は、自分が聴くべきじゃないんじゃないか……?そう感じ取ったのです。しかし、ロイヤルがあーあー叫んだところで、手足をじたばたさせたところで、リノの身体から抜け出すことは出来ません。
ユキ「ロイヤルに対して思うのは……街のなかで子供のライオンに出会っちゃった、みたいな、ちょっと奇妙でくすぐったい気持ちだよ。あ、子供なんて言ったら、ロイヤルは怒るかな?ロイヤルはわたしより年上のお兄さんだもん。ふふ……」
リノ「ライオン」
ユキ「うん。本当なら、ウィンデンブルグの街なかにライオンが居るはずはないでしょ?でも、出会ってしまったの。子供のライオンは一見、ありふれたネコのようにも見えるけど、それでもほかの誰とも違ってて、目を惹かれた。……最初は、わたしのほうから声をかけたんだよ?ロイヤルがアルバイトをしているバーで。……もうずっと昔のことみたいに思える」
リノ「…………」
ユキ「はじめのうち、ロイヤルはただの友達のひとりだった。でもだんだん、子供のライオンは迷子になってるんだ……って気づいてきたの。サバンナに帰る道を探して、おなじところをグルグル回ってるみたいに。それを見たら……どうしてもロイヤルの力になりたいって思った」
ユキ「ロイヤルがとても心細そうにしてる時は、手を握りたくなった。ひとりで過ごす夜にはロイヤルのことで頭がいっぱいになって、ストレンジャービルに居る彼のところに飛んでいきたくなることもある。フォレスティーナ、これが……これが、愛なの?」
リノはほほえんで、まるで小さな子供にするように、ユキちゃんのこめかみに口づけしました。
ユキ「そして、フォレスティーナ。あなたはロイヤルが連れてきた天使のように、わたしには思える。強くて冷静で、熱い心の天使。……あの雪の夜、あなたがドアを開けた時から、わたしたちの間にはいろんなことがあったけど……わたし、天使はいつまでも、晴れた空を自由に飛んでいてほしい。健康な姿のままで。……そう思ってるよ」
リノ「気性の荒い天使が居たものですね」
チラリと笑いを洩らして、しかししみじみと、リノは言いました。
ユキ「フォレスティーナのことを考える時も、わたしは胸が締めつけられる。あなたの力になりたいと思う。涙が出ることもある。だから……だから、わたしがフォレスティーナに感じてる気持ちも、きっと愛だよ」
ユキちゃんのまっすぐな想いに、リノは少なからず心を動かされたようでした。ロイヤルも同じでした。リノのなかで彼は、どこか遠くに、光のようなものを見た気がしました。
リノ・ミナキがそっと、目もとを指で拭いました。
リノ「選ばなければならないこともあります」
ユキ「ふたつの愛の、どちらかを?わたしは、そんなことしない。どっちも手を離さないよ」
リノ「浮気者」
ふたりは笑い合い、ユキちゃんが立ち上がりました。
ユキ「さあ!お皿を片付けなきゃね!フォレスティーナはこんなに美味しいケーキを焼いてくれたんだから、洗い物はわたしの仕事。ちょっと待っててね?」
そんな訳で、食器はシンクに沈められ、ユキちゃんの手は泡だらけになりました。最後の【すすぎ】をしている時、ユキちゃんの手許から、フォークがすべり落ちました。
ユキ「おっ……と」
カン!と音を立てて、フォークが床を跳ねます。ユキちゃんはタオルで適当に手を拭いて、拾うためにしゃがみこみました。
ちょうどその時。
硬いものがこすれ合い、軋む音がして……
ユキちゃんの頭上に積み上げられていた食器(洗う必要のない、清潔なもの)が、傾いていきます。
ロイヤル「ユキ!」
ロイヤルの悲鳴は、リノの内側の暗闇に、むなしく霧散しました。
驚いた顔で見上げるユキちゃんに、陶器が雨のように降りそそいでいきます……!
つづきます!
*
今回のポーズ
SSの3枚目(ロイヤル・イメージ)
以上1枚のポーズは、
新生まるきぶねスローライフ 様
よりお借りしました。いつもありがとうございます!
SSの5枚目(ユキちゃん)6枚目(リノ)
以上2枚のポーズは、自作です。
今回も、たいへん多くのMOD・CC・ギャラリー作品のお世話になりました。
Thanks to all MOD/CC creators and all builders!
にほんブログ村
0 件のコメント:
コメントを投稿